日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 現地では「パニック」というほどの騒ぎにはなっていないのでしょうけど、最大手紙『蘋果日報』はじめ今朝の香港紙(2008/01/05)の多くがそういうノリで報じているため、またタイトルは少々扇情的にということで
「パン恐慌」としました。

 でも実際、庶民レベルではシャレにならない事態のようです。

 発端は中国政府による物価抑制策のひとつです。1月1日から小麦、トウモロコシ、コメ、大豆など穀物の輸出関税引き上げに踏み切りました。対象は小麦粉など穀物製品にも及んでいます。これは前回既報した通りです。



 ちなみに物価関連でいうと、1月1日から穀物類(小麦、トウモロコシ、コメ、大豆など)やその加工製品に対する輸出関税を引き上げると12月30日に中国財政部が発表しています。引き上げ率は様々ですが、これは国内への供給量を増加させて穀物価格上昇を防ぐための緊急措置的な色彩が強く、いわば
「もはや恥も外聞もなく」といったところです。日本でも報じられていますね。

 ●「人民網」(2007/12/30/18:35)
 http://politics.people.com.cn/GB/6719976.html

 ●中国からの穀物輸出ストップ? 緊急「輸出」関税(MSN産経ニュース 2007/12/30/23:43)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/071230/chn0712302343004-n1.htm




 ところがこの
「恥も外聞もない」措置、実は輸出関税の引き上げだけではないことが判明しました。中国の専門紙『経済参考報』の関連記事を読んでいて発見したのですが、輸出関税引き上げと同時に、小麦粉、コーンスターチなど穀物製品については輸出許可制及び数量割当制が発動されていたのです。

 ●『経済参考報』電子版(2007/01/03)
 http://jjckb.xinhuanet.com/gnyw/2008-01/03/content_80034.htm

 要するに
総量規制。そこまでやらなきゃいかんのか、そんなに切羽詰まっているのか中国は!……といったところですが、たとえ現実にはそこまで逼迫していなくても、どうやら切羽詰まりそうなので先手を打った、ということなのでしょう。これは日本にも多少影響する措置になるかと思います。

 で、中国国内の物価抑制のために実施されたこの輸出関税引き上げ&輸出総量規制が、意外なことに中国の一部で「恐慌」を発生させることになってしまいました。いや、中国の一部といっても先っぽのほんの一部なんですけど、生活用水から食品などの多くを中国に頼っている上に、言論の自由や報道の自由が保障されている場所であるため派手に騒がれることになってしまいました。

 ええ、香港のことです。確かに「特別行政区」(植民地)ということで中国の一部なんですけど、物価抑制策がここへ飛び火してしまいました。上述した通り、今朝の香港紙の多くがこれを報じています。

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 香港各紙の報道を総合すると、
中国本土からの小麦粉輸入価格が今回の措置を受けて25~30%高へとハネ上がったそうです。香港政府統計署によると、昨2007年の1~11月の統計では、香港の小麦粉輸入元は中国本土が60%、日本からが26%、カナダが5%、とのこと。

 まずはこの「60%」が2~3割高となったのですからたまったものではないでしょう。日本の小麦粉について私は無知ですが、もし原料の一部を中国からの輸入に頼っているとすれば、そのうち値上げという形で影響が出るでしょう。

 現時点においては、小麦粉そのものを売るスーパーなども困っているのですが、それ以上に頭を抱えているのがパン屋さん。コスト急増分は販売価格に上乗せするしかありません。種類にもよりますが、概ね
1個あたり0.5~1香港ドル値上がりしている模様です。定番のメロンパンは20%の値上げ。香港ではパン食が定着していますから、これは痛いことでしょう。

 廉価で親にとってもありがたい学校給食(朝食)もパン値上げの影響が出ており、いまは料金を据え置いているものの、この状況が続くようなら値上げも考えなければならない、とは学校側の声。

 消費者も痛いのですが、パン屋さんも
「SARS(中国肺炎)のときよりひどい」とこぼす有様。特に大手メーカーとなると、原料の高騰が続くようであれば販売価格にそれを転嫁する一方、人員削減などの思い切った措置を講じる必要に迫られる可能性もあるようです。

 また、これからが季節となる
湯圓も約20%値上がりしているそうで、旧正月の定番である年�(中国風お餅)や蘿蔔�(大根餅)も値上がりは避けられそうにないそうです。

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 業界筋によると、香港の小麦粉の在庫は約1~2週間分しかないとのこと。現在中国本土からの輸入は、「価格急騰」とも「輸入自体がストップ」したともされて情報が錯綜しているのですが、中国政府が救済措置を講じない限り、香港人にとっては厳しい旧正月となりそうです。

 かつて鳥インフルエンザで御馳走の並ぶ正月の食卓から鶏料理が消えたことがありますが、それによる「淋しいね」よりも定番メニューの「値上がり」の方が痛いことは言わずもがな。

 小麦粉系だと影響は相当広く、旧正月前後にこれまた香港人の朝食としてはお馴染みの
インスタントラーメンが値上げされるという見方も出ています。むろんケーキも範疇内。ホテルの「下午茶」(アフタヌーン・ティー)も料金値上げになるのでしょうか。

 この「恐慌」、考えてみれば
中国本土で起こり得るであろう事態の予告編のようなものであることを思うと、なかなか深刻なものがあります。特に小麦粉系を主食とする中国北部、旧正月に水餃子といった習慣の地区では痛いことでしょう。

 あ、上海あたりのように麺を食べるところでも似たようなものですね。コメ高騰も不可避でしょう。香港はコメ輸入を中国本土にそれほど依存していないので、そのあたりの影響がないのは不幸中の幸いです。

 という訳で、
「予告編」であることを念頭に置きつつ続報を待つことにします。




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