今年もテレビ界の夏の風物詩ともいえる日本テレビの「24時間テレビ 愛は地球を救う」(8月27〜28日)が放送される。39回目となる今回のテーマは「愛〜これが私の生きる道〜」とのこと。
その「24時間テレビ」がクライマックスを迎える8月28日19時から、NHK教育テレビジョン(Eテレ)の「バリバラ〜障害者情報バラエティー〜」が<笑いは地球を救う>をキャッチコピーに「検証! 『障害者×感動』の方程式」というテーマで生番組を放送する。
「なぜ世の中には感動・頑張る障害者像があふれるのか?」「チャリティー以外の番組に障害者が出演する方法は?」などをテーマに討論を行うという。
これまで「24時間テレビ」に対しては、「チャリティー番組なのに出演者にギャランティが発生するのは偽善だ」「感動の押し売りのような内容に疑問を感じる」「マラソンの意味がわからない」といった批判の声も聞かれる。
真偽のほどは確かではないが、明石家さんまやビートたけしも、そのような理由から出演オファーを断っているらしい。
とはいっても、募金を集めるパワーはあなどれない。昨年(2015年)は8億5672万8209円、一昨年(2014年)は9億3695万5640円、そして2011年の第34回は東日本大震災緊急募金が含まれているものの、過去最高の19億8641万4252円もの募金が集まっている。
使い道は主に「地球環境保護支援」「福祉車両贈呈」「災害援助」「障害者情報保障支援・身体障害者補助犬普及支援」「東日本大震災被災地復興支援」。今年は熊本地震の復興支援も加わるのではないだろうか。
福祉車両贈呈は第1回放送より継続して行なわれ、これまで1万台を超えたという。
『障害者×感動』の方程式を検証する
フェスティバルと称し「楽しくなければテレビじゃない」と27時間もぶっ通しでどうでもいい内容の番組を垂れ流す局とは、比較にならない社会貢献をしているといえるだろう。ネット上には「やらない善よりやる偽善」という声もある。
しかし、障害者を「美談」として取り上げる番組の作り方に違和感を感じている当事者=障害者も多い。障害者は努力しなくてはいけないのか、普通に生きているだけじゃダメなのか、と。
そんな「美談」としてしか取り上げられない障害者像に挑戦状を叩き付けたのが、NHK教育テレビジョン(Eテレ)の「バリバラ〜障害者情報バラエティー〜」だ。
感動を与えない障害者はダメですか?
この番組を見たことがない人のため簡単に紹介しよう。「バリバラ」は「バリアフリー・バラエティー」の略。1999年に始まった福祉番組「きらっといきる」の中で、かつて月1回のバラエティーとして放送されていた。
「障害者を笑ってはいけない」という暗黙の了解のあるなか、障害者の運動会や自らの障害をネタにしたお笑いなどは、当時大きな反響を呼んだ。
そして2012年4月より「バリバラ」は独立した番組として「感動するな! 笑ってくれ!」というコンセプトでスタート。毎週金曜日21時から放映されていたが、2015年からは日曜日のゴールデンタイム19時放映になった。
24時間テレビと違うリアルな障害者の声
これまでに、障害者のお笑いNo.1を決める「SHOW-1グランプリ」、笑える障害者カップルが競う「バリバカップル」、障害者の婚活をルポする「密着! 婚活パーティー」、タレントのはるな愛が企画した障害者のためのファッションショー「バリコレ」などなど幅広いテーマが放映されている。
レギュラー出演者には、ラジオDJの山本シュウさんはじめ、脳性麻痺の玉木幸則さん(自立生活センター職員)、多発性硬化症の大橋グレースさん(ボランティア団体運営)、義足の大西瞳さん(陸上競技選手)、先天性四肢欠損症の岡本真希さん(会社員)。
また、ナレーターには脳性麻痺の神戸浩さん(俳優)、知的障害の伊藤愛子さん、前出のはるな愛さん(性同一性障害)など、当事者である障害者が起用されている。
同番組は、障害者はもちろん、セクシャルマイノリティーも含めすべての人がバリアを感じないで生きてゆける社会を目指している。合い言葉は「みんなちがってみんないい」。
28日の生放送では、出演者が激論を戦わせるのはもちろん、Twitterで視聴者も参加できる仕組み。以前このページで紹介した「寝たきり芸人・あそどっぐ」も登場する(障害をネタに笑いを誘う“寝たきり芸人”「あそどっぐ」、究極の個性が爆発!)。
本人のFaceBook(8/12付け)には「昨日はバリバラロケでした! 28日の生放送中に流れます!」と書かれている。いろんな衣装をとっかえひっかえしたらしい。どのような形で登場するのか興味津々だ。
さて、28日、バリバラでは24時間テレビの描く「感動を呼ぶ障害者像」と、どのように違ったリアルな障害者の声が聞けるだろうか。
2016.08.23 ヘルスプレス