知的障害のある人たちが、バスや電車を使って自力で事業所などに通えるよう支援する県内各地の取り組みが、全国に先駆けて始まっている。現在、施設などによる送迎を利用している障害者の中には、数回の練習やちょっとした工夫で自力通所できる人が少なくない。支援ノウハウを確立し、知的障害者が公共交通機関の利用に自信を付けることで、地域社会に溶け込み生活の幅を広げることが期待されている。
県は本年度から2カ年の事業で、指定したモデル事業所による支援マニュアル作りをスタートさせた。大分市の社会福祉法人シンフォニーに取りまとめを委託し、県内20事業所の利用者計30人余りが公共交通機関での通所実験に挑戦する。
杵築市の樹の実園では2人が、生活するグループホームから二つ先の停留所近くにある事業所にバス通勤している。
「運転手さん、ありがとうございます」。乗車実験8日目の11月29日朝、車内は通学客らで混雑。だが、アナウンスを合図に降車ボタンを押し、スムーズに降りることができた。
初日こそ手間取ったものの、運賃は回数券を使う、手順は文字にしてチェックする―などの工夫で大きなトラブルはない。猫橋義一さん(18)は「もう慣れた。大丈夫」と笑顔でバスを見送った。
社会人1年目の2人は「公共の乗り物で自由に外出できるようになって、余暇を楽しみたい」と意欲が高い。小野落周園長は「最低限のサポートさえあれば可能性は無限大。自立への第一歩を踏み出している」と力を込める。
施設独自で長年、知的障害者の自力通所に力を入れてきたシンフォニーの村上和子理事長は「大半の知的障害者は自力で公共交通機関を利用できると実感している。社会との接点が増えることで(障害への)理解も広まる」と話している。
× × ×
送迎…地域との接点が制限
全国的に福祉事業所に通う知的障害者の多くは、各事業所や家族に送迎してもらっているのが現状だ。送迎は安全で安心というメリットはあるが、地域との接点が制限され、一般企業への就労や自立には妨げの一因となっているという課題もある。
県が昨年度実施したアンケートでは、7割が「現在自力通所はできない」と回答した。
職員が同行する今回の乗車実験では、1人当たり10回、バスなどで通所する。公共交通機関を利用しての通所経験がなく、徒歩であれば単身での移動が可能な知的障害者を対象に選び実施している。
作成する支援マニュアルは、工夫のポイントや失敗事例など実験から得られるデータを整理し、写真付きで2013年度内にまとめる。県は“大分方式”を他事業所や全国に広めたい考え。

バスで通勤する樹の実園の利用者。公共交通機関の利用は自信につながっている。運転手ら周囲の人たちも温かく見守る=杵築市の住吉浜
大分合同新聞-[2012年12月07日 09:27]
県は本年度から2カ年の事業で、指定したモデル事業所による支援マニュアル作りをスタートさせた。大分市の社会福祉法人シンフォニーに取りまとめを委託し、県内20事業所の利用者計30人余りが公共交通機関での通所実験に挑戦する。
杵築市の樹の実園では2人が、生活するグループホームから二つ先の停留所近くにある事業所にバス通勤している。
「運転手さん、ありがとうございます」。乗車実験8日目の11月29日朝、車内は通学客らで混雑。だが、アナウンスを合図に降車ボタンを押し、スムーズに降りることができた。
初日こそ手間取ったものの、運賃は回数券を使う、手順は文字にしてチェックする―などの工夫で大きなトラブルはない。猫橋義一さん(18)は「もう慣れた。大丈夫」と笑顔でバスを見送った。
社会人1年目の2人は「公共の乗り物で自由に外出できるようになって、余暇を楽しみたい」と意欲が高い。小野落周園長は「最低限のサポートさえあれば可能性は無限大。自立への第一歩を踏み出している」と力を込める。
施設独自で長年、知的障害者の自力通所に力を入れてきたシンフォニーの村上和子理事長は「大半の知的障害者は自力で公共交通機関を利用できると実感している。社会との接点が増えることで(障害への)理解も広まる」と話している。
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送迎…地域との接点が制限
全国的に福祉事業所に通う知的障害者の多くは、各事業所や家族に送迎してもらっているのが現状だ。送迎は安全で安心というメリットはあるが、地域との接点が制限され、一般企業への就労や自立には妨げの一因となっているという課題もある。
県が昨年度実施したアンケートでは、7割が「現在自力通所はできない」と回答した。
職員が同行する今回の乗車実験では、1人当たり10回、バスなどで通所する。公共交通機関を利用しての通所経験がなく、徒歩であれば単身での移動が可能な知的障害者を対象に選び実施している。
作成する支援マニュアルは、工夫のポイントや失敗事例など実験から得られるデータを整理し、写真付きで2013年度内にまとめる。県は“大分方式”を他事業所や全国に広めたい考え。

バスで通勤する樹の実園の利用者。公共交通機関の利用は自信につながっている。運転手ら周囲の人たちも温かく見守る=杵築市の住吉浜
大分合同新聞-[2012年12月07日 09:27]