自転車は私たちにとって最も身近な乗り物の一つです。受験生のみなさんも通学に自転車を利用している人が少なくないでしょう。自転車は、慣れれば基本的には誰にでも運転できますし、利用するのに免許は要りません。燃料も必要ないので経済的です。排気ガス(二酸化炭素)を出さない自転車は環境にもやさしく、健康志向の今日では自転車愛好者は増加の傾向にあるという話も聞きます。
しかし、それに伴い、自転車が引き起こす問題も目立つようになってきました。例えば、テレビで有名なお笑いタレントがブレーキのついていないピストと呼ばれる自転車で公道を走り、警察に摘発されたというニュースは私たちの記憶に新しいところです。イヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗るなど、自転車の正しい利用ルールやマナーを守らない人も多く、その結果、自転車と歩行者との事故も増えてきているという報告もあります。
そこで、警察庁は自転車に車道走行を促すことを柱とした自転車交通総合対策をまとめ、公表しました。これによって、今後は自転車で歩道を走ると警察官に呼び止められ、注意される可能性が出てきました。既に各地で自転車の取り締まりが実施されはじめています。しかし、これに対して「今までは歩道を走ることが認められていたのに、なぜ急にそれが禁止になるのか」「車道は怖くて走れない」など、自転車利用者から戸惑いや不安、反発の声が出ています。
そこで、今回はこの自転車対策について考えてみたいと思います。それでは、さっそく次の問題文に目を通してください。
問題
次の文章を読んで、あなたの考えを句読点とも1000字以内で述べなさい。
自転車は車道徹底 警察庁 呼び止め注意、摘発も
歩道を走る自転車の危険運転や歩行者との事故が目立つとして、警察庁は25日、自転車の利用者に車道走行を徹底指導すると発表した。歩道走行が即座に摘発されるわけではないが、警察官が呼び止めて指導する。また自転車通行が可能な全国の歩道を減らしていき、車道通行へと促すことも各都道府県警に指示した。これと並行して、自転車専用レーンを設けるなど自転車が安全に走れる環境を整えることも急ぐ方針だ。
2008年6月施行の改正道交法で、自転車で歩道を走ってもいいのは13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体障害者と、道路が工事中などやむを得ない場合と規定した。これ以外は原則、車道の左側を走ることが義務付けられている。子どもを乗せた母親の自転車も車道走行が原則だ。
この例外を除き、各都道府県警は近く自転車の車道走行を促し始める。警察官が歩道走行を見つけても、これまで注意することは少なかったが、今後は呼び止めて注意する。速いスピードで歩道を走っている自転車については、再度発覚すれば摘発を検討する。
また車と対面する形で車道の右側を走る自転車は、ドライバーが予期していないことがあり、事故を招きやすい。こうした危険な自転車や、ブレーキのついていない競技用自転車、一時不停止や信号無視をする暴走自転車の取り締まりも強化する方針。
さらに、自転車が通行してもいい歩道にするかどうかは、これまで道幅2メートル以上を対象にしてきたが、これを3メートル以上に見直す。これによって、全国で約7万6000キロに及ぶ自転車通行可能な歩道を減らしていく考えだ。
都市部では自転車で通勤する人も多く、歩道を走る自転車は後を絶たない。時速40~50キロのスピードが出るスポーツタイプの自転車で歩道と車道を縫うように走る危険な利用者も増えており、歩行者やドライバーからの苦情も多い。
これに伴って歩行者との事故も増えており、同庁によると、昨年までの10年間で自転車の事故全体は約1割減ったが、歩行者との事故は5割増の2760件、うち4割は歩道上で起きた。
ただ現状では、トラックが多い幹線道路など危険な場所も多く、車との事故につながる恐れもある。このため同庁では、危険な場所では車道走行を無理強いせず、安全な場所に限って指導するという。
◇
山中英生・徳島大教授(都市交通計画)の話「歩道のバリアフリー化が進み、自転車のスピードも出やすくなっているため、歩行者と接触すれば重大事故につながりやすい。歩行者を守るためにも、自転車は車道を走行すべきだ」
◆歩行者を保護(解説)
多くの帰宅難民を生んだ東日本大震災後、都市圏を中心に自転車の利用者は増えている。「もう一度、歩行者優先の原則を徹底したい」。警察庁幹部の言葉には、歩行者を守る決意がにじむ。
自転車に絡む事故の死者は全国で昨年658人。東京都内では特に通勤時間帯に事故が多い。3~8月、前年同期比96件増の2129件がこの時間帯だった。
同庁が今月6日までの1週間、全国の運転免許試験場の来場者約1300人に緊急調査したところ、車道通行の原則を知っているものの、「あまり守らない」「守らないこともある」は46%を占め、規範意識の低さがあらわになった。
今回の取り組みを自転車に限った話と受け止めてはならない。車のドライバーも車道を走る自転車への注意と理解が必要だ。社会全体でもう一度、交通安全を考え直す契機にしたい。
(読売新聞2011年10月26日(水))
しかし、それに伴い、自転車が引き起こす問題も目立つようになってきました。例えば、テレビで有名なお笑いタレントがブレーキのついていないピストと呼ばれる自転車で公道を走り、警察に摘発されたというニュースは私たちの記憶に新しいところです。イヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗るなど、自転車の正しい利用ルールやマナーを守らない人も多く、その結果、自転車と歩行者との事故も増えてきているという報告もあります。
そこで、警察庁は自転車に車道走行を促すことを柱とした自転車交通総合対策をまとめ、公表しました。これによって、今後は自転車で歩道を走ると警察官に呼び止められ、注意される可能性が出てきました。既に各地で自転車の取り締まりが実施されはじめています。しかし、これに対して「今までは歩道を走ることが認められていたのに、なぜ急にそれが禁止になるのか」「車道は怖くて走れない」など、自転車利用者から戸惑いや不安、反発の声が出ています。
そこで、今回はこの自転車対策について考えてみたいと思います。それでは、さっそく次の問題文に目を通してください。
問題
次の文章を読んで、あなたの考えを句読点とも1000字以内で述べなさい。
自転車は車道徹底 警察庁 呼び止め注意、摘発も
歩道を走る自転車の危険運転や歩行者との事故が目立つとして、警察庁は25日、自転車の利用者に車道走行を徹底指導すると発表した。歩道走行が即座に摘発されるわけではないが、警察官が呼び止めて指導する。また自転車通行が可能な全国の歩道を減らしていき、車道通行へと促すことも各都道府県警に指示した。これと並行して、自転車専用レーンを設けるなど自転車が安全に走れる環境を整えることも急ぐ方針だ。
2008年6月施行の改正道交法で、自転車で歩道を走ってもいいのは13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体障害者と、道路が工事中などやむを得ない場合と規定した。これ以外は原則、車道の左側を走ることが義務付けられている。子どもを乗せた母親の自転車も車道走行が原則だ。
この例外を除き、各都道府県警は近く自転車の車道走行を促し始める。警察官が歩道走行を見つけても、これまで注意することは少なかったが、今後は呼び止めて注意する。速いスピードで歩道を走っている自転車については、再度発覚すれば摘発を検討する。
また車と対面する形で車道の右側を走る自転車は、ドライバーが予期していないことがあり、事故を招きやすい。こうした危険な自転車や、ブレーキのついていない競技用自転車、一時不停止や信号無視をする暴走自転車の取り締まりも強化する方針。
さらに、自転車が通行してもいい歩道にするかどうかは、これまで道幅2メートル以上を対象にしてきたが、これを3メートル以上に見直す。これによって、全国で約7万6000キロに及ぶ自転車通行可能な歩道を減らしていく考えだ。
都市部では自転車で通勤する人も多く、歩道を走る自転車は後を絶たない。時速40~50キロのスピードが出るスポーツタイプの自転車で歩道と車道を縫うように走る危険な利用者も増えており、歩行者やドライバーからの苦情も多い。
これに伴って歩行者との事故も増えており、同庁によると、昨年までの10年間で自転車の事故全体は約1割減ったが、歩行者との事故は5割増の2760件、うち4割は歩道上で起きた。
ただ現状では、トラックが多い幹線道路など危険な場所も多く、車との事故につながる恐れもある。このため同庁では、危険な場所では車道走行を無理強いせず、安全な場所に限って指導するという。
◇
山中英生・徳島大教授(都市交通計画)の話「歩道のバリアフリー化が進み、自転車のスピードも出やすくなっているため、歩行者と接触すれば重大事故につながりやすい。歩行者を守るためにも、自転車は車道を走行すべきだ」
◆歩行者を保護(解説)
多くの帰宅難民を生んだ東日本大震災後、都市圏を中心に自転車の利用者は増えている。「もう一度、歩行者優先の原則を徹底したい」。警察庁幹部の言葉には、歩行者を守る決意がにじむ。
自転車に絡む事故の死者は全国で昨年658人。東京都内では特に通勤時間帯に事故が多い。3~8月、前年同期比96件増の2129件がこの時間帯だった。
同庁が今月6日までの1週間、全国の運転免許試験場の来場者約1300人に緊急調査したところ、車道通行の原則を知っているものの、「あまり守らない」「守らないこともある」は46%を占め、規範意識の低さがあらわになった。
今回の取り組みを自転車に限った話と受け止めてはならない。車のドライバーも車道を走る自転車への注意と理解が必要だ。社会全体でもう一度、交通安全を考え直す契機にしたい。
(読売新聞2011年10月26日(水))