◇高額医療費、社会保険料など負担なら
所得税の確定申告の受け付けが来月16日から始まる。年金から源泉徴収された税金は、高額な医療費や社会保険料、生命保険料を負担している場合は戻るケースが多い。払いすぎた税金を取り戻す還付申告の方法を調べてみた。
還付申告のためには08年分の「公的年金等の源泉徴収票」が必要だ。今月14日に社会保険庁から発送されている。届いていない場合や紛失した場合は「ねんきんダイヤル」(0570・05・1165)に問い合わせれば再交付してもらえる。障害年金や遺族年金は元々非課税なので送付されない。
源泉徴収票は図のようになっている。(あ)が08年中に受け取った年金額。65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上なら、「源泉徴収税額」(い)に記載がある。なければ源泉徴収されていないので確定申告は必要ない。
「扶養親族等申告書の提出」(う)で「妻を扶養しているのに『無』に*印が付いている」とか、「息子が失業して同居、扶養家族が増えた」などのケースでは税金が戻る可能性が高い。
東京税理士会広報室の田中博副室長に還付額の計算方法を例示してもらった。
東京都世田谷区で妻(73)と2人暮らしのAさん(78)は年金以外に収入がなく、年金額は295万6394円、源泉徴収は4万7316円。08年1月1日~12月31日に世帯合計で▽社会保険料15万円▽生命保険料11万円--を支払った
まず、(あ)から、公的年金等控除額を引き、所得を計算する。公的年金等控除額は年齢と収入で決まる=表参照。Aさんの場合、控除は120万円で、所得は175万6394円。そこから、生命保険料と社会保険料(健康保険や介護保険の保険料)の控除額計20万円、本人の基礎控除38万円と、妻の老人控除の48万円を引いた69万6000円(1000円未満切り捨て)が課税対象になる。この場合、税率5%で、3万4800円が税額。源泉徴収との差額1万2516円が還付される。
生命保険料の控除は原則として▽支払額2万5000円以下=全額▽2万5000円超~5万円以下=支払額の50%+1万2500円▽5万円超~10万円以下=支払額の25%+2万5000円▽10万円超=5万円だ。社会保険料控除は健康保険や介護保険料などの合計額だ。配偶者や子どもの国民年金保険料を負担している場合はさらに控除額が増える。
支払った医療費が10万円以上か、所得合計額200万円までの場合はその5%より多ければ控除対象になる。
Aさん夫妻が2人で年間30万円の医療費を支払った場合は……
Aさんは所得175万6394円なので5%の8万7819円を支払額から引いた21万2181円がさらに控除される。この場合は課税対象所得が48万4000円となり、税額は2万4200円。還付は2万3116円になる。
Aさんの妻が要介護4の場合は……
世田谷区で障害者控除認定書を発行してもらえば源泉徴収の全額4万7316円が還付される。同区では65歳以上の場合、要介護3以上で、食事・排せつ・入浴のいずれかで6カ月以上の介護を受けていれば特別障害者と認定される。この場合、配偶者控除に35万円が加算され、特別障害者控除40万円を含め控除額合計が202万2000円余りに膨らむ。所得を超えるため課税はされず、源泉徴収額がそっくり戻ってくる。
障害者控除の対象となる特別障害者、障害者(控除額27万円)の認定は市区町村ごとに行われる。基準もそれぞれ異なり、要介護1で障害者と認定されるケースもある。控除額が大きく変わるので、住んでいる市区町村に問い合わせてみよう。
◇各種証明書、領収書が必要
確定申告に必要な書類は源泉徴収票のほか、社会保険料控除証明書、生命保険の支払証明書など。医療費は領収書や明細書、医薬品の領収書など。通院交通費は歩けない状態で使ったタクシー代や、公共交通機関のメモ書きなどをとっておくとよい。各地の税務署で無料相談会などが開かれるので、事前に確認しよう。
◇増え続ける確定申告者数
国税庁によると、07年分所得税の確定申告を行った人は2361万6000人(前年比0.5%増)で、9年連続で過去最高を更新した。このうち所得税の還付申告をした人は過去最高の1269万2000人(同3.6%増)に及び、これが全体を押し上げる要因になっている。
国税庁は還付申告が増えたのは高齢化の進展で、還付対象になる年金受給者や高額の医療費を支出した人が増えているためと見ている。07年分の申告ではインターネットを使って申告・納税する「e-Tax」の利用も前年の7.4倍の363万4000人に急増している。
◇詐欺に注意
還付金は、自分で申告しない限り発生しない。振り込め詐欺の手口のように、役所から電話がかかることはないので注意が必要だ。
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■年金受給者の所得の計算方法(国税庁の資料から作成)
65歳未満の場合 公的年金等の収入金額 所得の金額
70万円超130万円未満 収入金額-70万円
130万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5000円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5000円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5000円
65歳以上の場合 120万円超330万円未満 収入金額-120万円
330万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5000円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5000円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5000円
所得税の確定申告の受け付けが来月16日から始まる。年金から源泉徴収された税金は、高額な医療費や社会保険料、生命保険料を負担している場合は戻るケースが多い。払いすぎた税金を取り戻す還付申告の方法を調べてみた。
還付申告のためには08年分の「公的年金等の源泉徴収票」が必要だ。今月14日に社会保険庁から発送されている。届いていない場合や紛失した場合は「ねんきんダイヤル」(0570・05・1165)に問い合わせれば再交付してもらえる。障害年金や遺族年金は元々非課税なので送付されない。
源泉徴収票は図のようになっている。(あ)が08年中に受け取った年金額。65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上なら、「源泉徴収税額」(い)に記載がある。なければ源泉徴収されていないので確定申告は必要ない。
「扶養親族等申告書の提出」(う)で「妻を扶養しているのに『無』に*印が付いている」とか、「息子が失業して同居、扶養家族が増えた」などのケースでは税金が戻る可能性が高い。
東京税理士会広報室の田中博副室長に還付額の計算方法を例示してもらった。
東京都世田谷区で妻(73)と2人暮らしのAさん(78)は年金以外に収入がなく、年金額は295万6394円、源泉徴収は4万7316円。08年1月1日~12月31日に世帯合計で▽社会保険料15万円▽生命保険料11万円--を支払った
まず、(あ)から、公的年金等控除額を引き、所得を計算する。公的年金等控除額は年齢と収入で決まる=表参照。Aさんの場合、控除は120万円で、所得は175万6394円。そこから、生命保険料と社会保険料(健康保険や介護保険の保険料)の控除額計20万円、本人の基礎控除38万円と、妻の老人控除の48万円を引いた69万6000円(1000円未満切り捨て)が課税対象になる。この場合、税率5%で、3万4800円が税額。源泉徴収との差額1万2516円が還付される。
生命保険料の控除は原則として▽支払額2万5000円以下=全額▽2万5000円超~5万円以下=支払額の50%+1万2500円▽5万円超~10万円以下=支払額の25%+2万5000円▽10万円超=5万円だ。社会保険料控除は健康保険や介護保険料などの合計額だ。配偶者や子どもの国民年金保険料を負担している場合はさらに控除額が増える。
支払った医療費が10万円以上か、所得合計額200万円までの場合はその5%より多ければ控除対象になる。
Aさん夫妻が2人で年間30万円の医療費を支払った場合は……
Aさんは所得175万6394円なので5%の8万7819円を支払額から引いた21万2181円がさらに控除される。この場合は課税対象所得が48万4000円となり、税額は2万4200円。還付は2万3116円になる。
Aさんの妻が要介護4の場合は……
世田谷区で障害者控除認定書を発行してもらえば源泉徴収の全額4万7316円が還付される。同区では65歳以上の場合、要介護3以上で、食事・排せつ・入浴のいずれかで6カ月以上の介護を受けていれば特別障害者と認定される。この場合、配偶者控除に35万円が加算され、特別障害者控除40万円を含め控除額合計が202万2000円余りに膨らむ。所得を超えるため課税はされず、源泉徴収額がそっくり戻ってくる。
障害者控除の対象となる特別障害者、障害者(控除額27万円)の認定は市区町村ごとに行われる。基準もそれぞれ異なり、要介護1で障害者と認定されるケースもある。控除額が大きく変わるので、住んでいる市区町村に問い合わせてみよう。
◇各種証明書、領収書が必要
確定申告に必要な書類は源泉徴収票のほか、社会保険料控除証明書、生命保険の支払証明書など。医療費は領収書や明細書、医薬品の領収書など。通院交通費は歩けない状態で使ったタクシー代や、公共交通機関のメモ書きなどをとっておくとよい。各地の税務署で無料相談会などが開かれるので、事前に確認しよう。
◇増え続ける確定申告者数
国税庁によると、07年分所得税の確定申告を行った人は2361万6000人(前年比0.5%増)で、9年連続で過去最高を更新した。このうち所得税の還付申告をした人は過去最高の1269万2000人(同3.6%増)に及び、これが全体を押し上げる要因になっている。
国税庁は還付申告が増えたのは高齢化の進展で、還付対象になる年金受給者や高額の医療費を支出した人が増えているためと見ている。07年分の申告ではインターネットを使って申告・納税する「e-Tax」の利用も前年の7.4倍の363万4000人に急増している。
◇詐欺に注意
還付金は、自分で申告しない限り発生しない。振り込め詐欺の手口のように、役所から電話がかかることはないので注意が必要だ。
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■年金受給者の所得の計算方法(国税庁の資料から作成)
65歳未満の場合 公的年金等の収入金額 所得の金額
70万円超130万円未満 収入金額-70万円
130万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5000円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5000円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5000円
65歳以上の場合 120万円超330万円未満 収入金額-120万円
330万円以上410万円未満 収入金額×0.75-37万5000円
410万円以上770万円未満 収入金額×0.85-78万5000円
770万円以上 収入金額×0.95-155万5000円