「黒笑小説」東野圭吾著、読んでみました。
「東野圭吾」17作目です。 読み始めてすぐ「筒井康隆」を読んでいる錯覚に陥りました。ある程度、年がいっている人は多分そう感じるんじゃないだろうか。
「もう一つの助走」「線香花火「過去の人」「選考会」の4編は文壇ものですが、東野さん自身の「直木賞」をなかなか取れなかった「実体験」や新人賞を取ったときの「高揚感」などを客観的にブラックな視点で見事にそしてコミカルに描いている。
「選考会」は東野さんらしいオチがあり楽しめました。「寒川心五郎」「熱海圭介」で彼がよくやるさりげない遊びも入っていました。
しかし彼らのモデルってもしかしたら居るのかなぁ、それとも自分自身がそうならない様にするための反面教師のキャラクターなのだろうか。
「巨乳妄想症候群」「インポグラ」「みえすぎ」「モテモテ・スプレー」などのいい意味でのくだらなさ、ばかばかしさなどは冒頭で書いた通り「筒井康隆」ワールド炸裂のような気がした。
それにしても東野さんっていろいろなタイプの小説を書くんですね。引き出しの多さにビックリとその作品のレベルの高さに敬服です。
「臨界家族」は身につまされて居る人が多いように感じるし、最後のオチは秀逸だった。
「シンデレラ百夜行」はシンデレラのしたたかさとラストの「その唇に浮かべられた笑みの意味」、「笑わない男」はラストでボーイが「かすかに笑った」あたりがシュールさ全開でとても面白かった。