風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

お役所

2011-05-19 11:01:47 | 仕事
 
 昔から、融通のきかない仕事のことをお役所仕事という。

 市役所から届いた「介護予防の基本チェックリスト」を見ながら、
 つくづくお役所仕事だなあと思う。

 このリストを発送、返送受付、集計、結果による対応にどれだけの予算が費やされるのかとあきれる。

 認知症、老人性鬱病を未然に防ごう、
 あるいは、軽微なうちに何らかの手助けをしようという主旨だろうとは察しがつく。

 しかし、この結果から、本人、あるいは家族に連絡して、
 公民館や保健所に呼んで、講習会や相談会をしたとして、どれほどの効果があるだろうか。

 老後の健康は、それまでの生活の結果の自己責任。

 まったく無駄とまでは言わぬが、予算に見合った効果など上がるはずもない。

 そんな暇があるなら、まだ問題の山積している東北へ応援に行きなさい!

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介護予防

2011-05-18 13:13:13 | 健康

 市役所から、介護予防の基本チェックリスト、なる書類が送付されてきた。

    バスや電車で一人で外出していますか
    預貯金の出し入れをしていますか
    この一年間に転んだことがありますか
    お茶や汁物でむせることがありますか
    身長体重は何センチ何キロですか

 などなど、29項目に及ぶ。

 風子ばあさんもつれづれなるままに、チェックを入れて見た。

 ただ一点をのぞいて、ほぼ完璧なデキだったと思う。
 不合格だろうと思う一点とは、
 今日は何月何日ですか、という質問だった。18日かなあ、19日かなあ、と迷った。

 何月何日ですかという質問は、
 認知症の判定に欠かせない設問らしく、どこにでも出てくる。

 90歳になる友だちに、この質問に敏感な人がいる。
 これさえ出来れば安心とばかりに、朝起きたら、まず今日が何月何日かをカレンダーで確認する。
 そして、忘れないように、今日は×月×日、×月×日と、何度も、何度も呟くそうである。

 だから、風子ばあさんと話していて、
 今日は何日でしたっけ? などと訊こうものなら、打てば響くように、
 ×月×日、×曜日です、と得意そうに答える。

 正解を出せず、口惜しくて言うわけではないが、この質問はあまり意味がないように思うがどうだろうか。

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アマチュア作家

2011-05-17 15:56:12 | 読書
 アマチュア作家という言葉が正しいかどうかわからない。
日曜作家とか同人誌作家とか、つまりは、作品に原稿料が支払われないでも、書きたいから書いている人達がいる。

 この手の人たちはかなりの人数いるが、作品はまさに玉石混淆である。

 あるグループに、入会したばかりの新人が、
「ここは、玉石混淆と言われて来ましたが」と口走り、
「え? 誰が、玉? 誰が石なの……」
居合わせた面々が顔を見合わせたという笑い話がある。
しかし、玉石混淆は 事実である。

 掘り出し物には、プロをしのぐ作品が珍しくない。

 アマチュア作家かどうかはわからないが、
おすすめのひとりに難波田節子さんがいる。

 知る人ぞ知るから、無名とは言えないが、よほどの小説好きでないと書店で探しても読めない。

 文学界昨年11月号に彼女の「雨のオクターブサンデー」がある。

 風子ばあさんは、別に知り合いでも何でもない、
ただの愛読者だが、こういう作品がもっと多くの読者の目にふれてほしいと願う。

「雨のオクターブ」が文学界に掲載されたときは、
風子ばあさんは頼まれもしないのに、これを五冊も買って、友だちの誰彼に読ませた。

 図書館で読める。
鳥影社刊行の「晩秋の客」もある。
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プロ作家

2011-05-16 21:51:18 | 読書

 芥川賞作家の小説を、2作続けて読んだ。
近年の芥川賞作品は、素人の読者を寄せ付けない難しい小説が多いが、
私が読んだこの女流作家は、身近なテーマをテンポ良く仕上げていて読みやすい。
好きな作家のひとりに数えていた。

 ところが、最近書かれたこの2作は、評判のわりに、どちらも、たいしたことはなかった。

 素人のばあさんが、生意気なことを言っても失礼にあたるので、著者、著書名は省く。

 概して、作家は初期の作品が面白いが、この作家も、はじめはこんなつまらんものは書かなかったよね、と思う。

 思うに、売れるまでの作家は、呻吟しつつ魂をよじるようにして作品を書く。
売れるあてもないのだから、時間もテーマも制約を受けない。
書きたい衝動は読む方の心にふれる。

 売れるようになると、忙しい。
呻吟している暇もない。
出版社からは、先生、まだでしょうか、お早くお願いします……
(などと言われるかどうかわからないが)
いずれにしても、著名作家だから、何を書いてもそこそこ売れる。

 そのせいかどうか、売れっ子作家になると、
どうも、書き飛ばしているような気がして仕方がない。

本を手にした時の、こちらの期待が大きすぎるせいかもしれない。
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土下座

2011-05-15 21:07:50 | 時事
土下座ばやりである。

世が世なら、社長室でふんぞり返っていて、庶民には、
拝みもできない人たちが、罵声を浴びながら土下座をしている。
申し訳ない……と跪づく胸のうちはどんなであろうか。

 多分、俺だけが悪いわけじゃないんだけどなあ……
と思っているに違いない。

 先代の社長、いや、先々代、
いや、もっとずっと前の社長のしたことなんだけどなあ、

 あの時の首相だって、いいよ、いいよ、と
言ったはずなのになあ、と思っているかもしれない。

 実際、そうなのである。
たまたまこの時期に社長となった巡り合わせの悪さを、
彼はきっと心の底から嘆いているに違いない。

 下げた頭を、いつ上げようか……、
あまり早く上げすぎないように、
ひい、ふう、みい、と数えているかもしれない。

 土下座をさせている方も、
そんなことは百も承知なのだ。
承知はしていても、そうさせねば胸が張りさけそうに、
切迫しているのである。

 十数年前、風子ばあさんは、
訴えれば勝てる無責任医療で母を亡くした。

 しかし、争ったところで、母は生き返らないので、
土下座して謝罪してくださいと、院長に頼んだ。

 母は戻ってこないが、そうでもしないと、
気のすむ方法を思いつかなかったのである。

 あの姿を見るのは、土下座をされても、
少しも収まらなかった胸の内をを思いだして、今もつらい。
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温泉センター大広間

2011-05-15 08:34:39 | 旅行
 温泉センターの続きである。

 広間では、食事を運んでもらえるが、
持ち込みは禁止されている。でかでかと貼り紙がしてある。

 しかし、つわものがいて、持参した袋から、出るわ出るわ。
自家製の漬物が出て、周りにすすめる。

 大きなザボンの皮をむくためのナイフも用意してある。
それをパカッと二つ三つに分けて、風子ばあさんにもすすめてくれる。

 勇ましいなあ、と見ていたら、
やがて、バアサマは夫の肩をつかみ、
えいやっとうつ伏せに寝かせた。

 それから、スカートのままの格好で、
両足広げてジイサマにまたがり、
背中や腰のマッサージをはじめた。

 押したり、引いたり、さすったりの手つきはプロ並みである。

 バアサマは、なかなかの夫思いなんだなあ、
やさしくて良い人なんだなあと、
うるわしき夫婦像を見ながら、
すすめられたザボンの房を風子ばあさんもいただいた。

 ザボンは、ちょっとすっぱくて甘く、中々の美味であった。
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温泉センター

2011-05-14 12:31:19 | 旅行
 平日の温泉センター大広間は、
当然のことながら、ジジババばかりごろごろしている。

 比喩ではない。
文字通り座布団を枕にして、ごろごろ寝そべっているのである。

 温泉に入って、昼食がすみ、やがて、カラオケタイムとなる。
 
 それまで、寝そべっていた背中の曲がったバアサマが、
よっこらしょと、起きあがり、
唄ウかなあ……とよたよたと舞台に上がった。

 お辞儀をして、マイクを握ったとたん、
それまで曲がっていたバアサマの背中が、
ぱっ と伸びたのには、驚いた。

 いやあ、温泉センターには、
こんなリハビリ効果も含まれていたとは知らなかった。

 唄声の方は、まあまあだったが、
連れのジイサマが盛んに拍手を送っていた。

 仲良きことは美しきかなである。
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縮図

2011-05-13 16:04:11 | 旅行
 温泉に向かう途中、山間の町の家並みはいちようにくすみ、
瓦がずり落ちかけた家が多いのを、バスの中から見ていた。

 崩れかかった壁や、すでに蔦の這う廃屋などは、
かつて住んだ人間の営みが想われ、郷愁を覚える風景ではある。

 ようやく、行く手に、明るい色の瀟洒な建物が見えてきて、
あれ、こんなところに……と目をこらすと、
決まって、デイケアであったり、整形外科病院だったりした。

 ああ、繁盛しているのは、老人相手の介護施設ばかりかと嘆かわしい。

 少子高齢化社会と言われるけど、こうしてまざまざとその縮図を見せられると、
なんとかせんといかんなあ……、と、
非力なばあさんは、思っても仕方がないことを思い、うなだれてしまうのであった。
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観光バス

2011-05-12 09:58:15 | 旅行

 博多からの直行バスで平山温泉に行った。

 風子ばあさんは、人と会うのも喋るのも好きである。
好きだからこそ、喋りくたぶれて、
たまにはひとりで旅に出たくなる。
 
 バスの車窓に流れる景色を、ぼうっと見ていると、
連れのあるときとはまた一味違う、楽しいひとときとなる。

 こんなときは、
出来れば前後の座席があまり騒々しくないほうが望ましい。

 観察していると、一番静かなのが夫婦連れである。
奥さんの方が、ひとことふたこと話しかけても、
たいがいのダンナは、ウムッ くらいですます。
 
 次に静かなのが母娘である。
齢を取った母親が、温泉行きに浮かれていても、
娘の方は、フーン、フーンと 
あまり気がのらない返事をするくらいのことである。

 なんといっても、賑やかなのが言わずと知れた、ばあさん仲間。
耳が遠くなったのを差し引いても、
でかい声でひっきりなしで喋り、かつ笑う。

 うるさいなあ、と思うが、
なんのことはない、風子だって
連れがあるときは負けず劣らずだから、ここは我慢するしかない。
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プロ 医師

2011-05-11 12:50:29 | 仕事

 目下のところまずまず健康である。

 かかりつけの医師のところには、ごくたまに、消化薬を貰ったり、血圧を測ってもらいに行く。

「どうですか?」
「おかげさまで、なんともないんですが、たまには先生の顔を拝見したくて」

 風子ばあさんは正直者だから、具合が悪くないのに、悪いとは言えない。
「せっかくそこまで来たんで、ついでに消化薬でも頂いていこうかと思いまして」

 先生は、とたんに嫌な顔をなさる。

あわてて、
「いえ、ちょっと食べ過ぎて胃がもたれるんです」
などと言い訳を言う。

 先日、珍しく風邪をひいた。 鼻水が出て喉が痛んだ。
しょぼくれた顔で先生の前に座ったら、
「口をあ~んして……」

先生はひどく機嫌がよくて、
「あ、腫れてる腫れてる……」
 と、やけに嬉しそうだった。

 もっと重症なら、もっと嬉しそうな顔をするのかもしれない、
それがプロというものかもしれないと、ちょっとひがんで帰ってきた。
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