風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

昭和の思春期

2011-05-25 11:24:15 | 思い出
 
  今から50年前は、ふつうの家には電話がなかった。

   ある日の夕方、
 風子が通う高校の教師が、突然、家に来た。

  あの頃は、どの家も、
 今のように留守にはしなかったのであろうか。

  連絡手段がなかったので、緊急時にはこうして、
 いきなり人が訪ねてくることは珍しいことではなかった。

  雑誌社から学校に連絡があり、
 高校生が作家のお宅を訪問するという企画へ
 参加せよということである。

  明日、田園調布の石坂洋次郎の家に行くように……
 玄関先でおっしゃると、先生は、お茶も飲まずに、
 そのままお帰りになった。

  翌日、田園調布まで、どうやって行ったのか、
 付き添いがあったのか、なかったのかは、覚えていない。

  そのくせ、もう一人、別の高校から来た男子生徒のことは、
 境くんと、名前まではっきり覚えていて、
 その後しばらく文通までしたのだから、
 思春期というのはなかなかに抜け目のない年頃なのであった。

  ちなみに、このころの青少年は、およそ、にきび面と決まっていたのに、
 境くんはつるんつるんの美しいお肌の美少年であった。

 続きはまた明日。
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