急に休日が出来たので、近場の温泉行きのバスに乗った。
先に乗りこんでいたパワー満点の女性グループを避けて、
まだ空いている席を探した。
きょろきょろしていると、
「あなた、お一人?」と声がかかった。
「私も一人なの、どうぞ、どうぞ、ここへいらっしゃいませ、よかったわあ」
愛想、良すぎるなあ。
ほかに余席がないなら、喜んでご一緒させてもらうが、
ハナからあまりご親切なのも、どうかなあ。
にこやかに、失礼のないように気をつけて、ご遠慮した。
後方の座席に一人で座っていたら、発車間際に、
「失礼します」と若い男の声がした。
シメシメ。
彼は、座るとすぐにイヤホンをはめ、アイマスクをして、
とうとう下りるまで顔を見せなかった。
隣に、大男が来たのだから、窮屈には違いなかったが、
風子ばあさんは、まんざらでもなく、ウフフなのだった。