風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

色白

2011-05-03 10:20:59 | 俳句、川柳、エッセイ
 子供のころから、お前は、ブスだ、豚だ……と、言われて育った。
別に虐待父でもなく、ごく普通の父親だった。
思春期に向かう娘に対して、父親のある種のテレだったのかもしれない。

 それでひねくれることもなかった。
ふ~ん、私はブスなんだ~、とは思った。
ひねくれはしなかったが、たださえ自意識過剰な娘時代だったから、劣等感は持った。
自分の容姿には取り柄がないんだと思った。

 五十歳を過ぎて、温泉に行ったとき、友だち(残念ながら女です)が
「風子さんの身体って、色白なんだねえ、綺麗な体だねえ」
 と言ってくれた。

 へえ、と思って、浴場の周囲を見ると、確かに! と我が身は際立って白かった。

 もうちょっと若いころに気がついていたら、顔では勝負出来ないでも、
身体で男どもを悩殺できたかもしれない……と、思っても、時、すでに遅かった。

 あれからすでに十数年、七十過ぎた無残な裸体は、たとえ女友だちの前にもさらせず、
温泉もこっそりひとりで入浴する始末である。

 あと十年もしたら、白骨になります。
コメント (2)
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