風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

偉いなあ

2011-05-07 14:14:17 | 友情
 近くのショッパーズはバリアフリー対応で、
通路は、車椅子が3、4台並んでも平気なくらい広い。

 ところどころにはベンチもある。

 空調完備だから、
夏でも冬でもこの中を歩き回るばあさん連中は多い。
お店には悪いが、ショッピングではなく、はじめから、散歩、ウオーキングが目的である。

 いつしか顔馴染みができた。

 今日会った彼女は、難しい眼病で、視力が徐々に衰え、
まもなく失明するのだという。

「まあ、そうなったら、どこか施設にでも入所するの?」
「いやあ、順番待ちで、とても入れないでしょうね」

 彼女は、生涯独身で兄妹もない、天涯孤独のひとり暮らしである。

「どうするの?」
「生まれて育った家があるんだから、大丈夫。手探りでだって、這ってだって暮らせますよ」
彼女はにこにこ笑っている。

「だって、悔やんだってしょうがないでしょう。
はじめからまったく見えなかったわけじゃない、
これまで見てきたことがあるんだから、
ま、いろいろ楽しかったことでも思いだして暮らしますよ。
私の目が見えなくなっても、お会いしたときは、
ぜひ声をかけてくださいね」

 偉いなあ。こういう人をほんとに偉いっていうんだろうなあ。