風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

英語教育

2011-05-27 11:06:46 | 思い出
    
   60年前の中学校、英語授業のことである。

   新一年生の教室では、線のある帳面で、
  大文字、小文字、筆記体のアルファベットの練習をしていた。

    今の中学生なら、
 「なんだよう、今ごろ、ABCなんて、冗談じゃねえや」
  というところだろう。

   なにしろ終戦直後のことである。
  英語教師本人が、外国なんか一度も行ったことがないのが当たり前。
  今なら子供でも、もう少しましな発音の イット イズ ペン がやっとのレベルである。

   中に、トッポイ生徒が一人いて、手を上げた。

  「先生、キッス オブ ファイヤーってどんな意味ですか」

   先生は顔を真っ赤にして、家に帰ってご両親にお聞きなさい、と言った。

   ふうん、と思って帰宅した風子は、
  母ではわからないだろうからと、父の帰宅を待って、
  「ねえ、キッス オブ ファイヤーってなんて意味?」
   と真顔で聞いた。

  父は真っ赤になって、そんなことは学校で聞け! と怒鳴った。

   若い人には、作り話のように聞こえるだろうが、
  キッスって何をするのか? 知らないのがふつうの子供たちだった。
  昭和20年代の実話である。

  嘘と思うなら、ジイサン、バアサンに聞いてみなさい。
  ジイサン、バアサンは、今でもきっと顔を赤くするよ。
コメント (2)
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