風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

ヘアースタイル

2011-02-18 11:06:26 | 俳句、川柳、エッセイ
行きつけの美容院が、改修のために10日ばかり休業している。
そんなときに限って髪が気になる。
そういえば、明日は、久しぶりの人たちとの会合がある。

通りがかった街角に、美容院を見つけた。
店の入り口に、受付係らしい女性が二人立っている。
 
 馴染みでない店でのカットには、ためらいがある。
切れば、いつもの美容師さんに、今度行ったときに気がねがある。
とっさの数秒に、それらのことが頭の中をよぎった。

迷いながら口をついて出た言葉は、
「この髪、おかしくないでしょうか?」だった。

 突然現れて、おかしくないでしょうか、というへんなばあさんに、店員さんは、声をそろえて、おかしくありませんよ、と言う。

 じゃあ、やめとこうかなあ、と極めて優柔不断に頭を下げて引きさがった。

 だけど、どう考えても、ぼさぼさに伸びきっていて見苦しかったはずである。

 あの人たちは、お客様に対して、どんなにおかしくても「おかしいです」などとは言わないように訓練されているのだろう。
心にもないことを言わせて、気の毒なことをした。ごめんなさい。

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フィギュアスケート

2011-02-17 22:37:11 | ギター、映画など他
 風子ばあさんは、テレビでフィギュアスケートを見るのが好きである。
どの選手にも手に汗握るように応援する。
ジャンプの失敗などを見ると、思わず、ぎゃっと叫ぶ。

 ことに好きなのが、小塚崇彦選手がリンクに出る直前である。
佐藤コーチに背中を撫でてもらい、ポンと軽く叩いて押し出してもらう。
あの瞬間を見るのがたまらなく好きである。

 佐藤コーチも、小塚も、あの行為にはちょっぴりのテレを内包している。
しかし、真剣勝負の気迫の最後の確認である。
テレてる場合ではないのである。

 いつものおまじないをしないと勝てないのである。
ここに師弟の厚い信頼関係を見る。

 頑張れよ、のコーチの手のぬくもりを背に、小塚選手は不安な心を静め、滑りだす。

 あの美男の、はにかんだような表情を見るのがたまらない。

 おりしも、4大陸選手権大会がはじまる。
ああ、わくわくする。
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アタミ

2011-02-16 10:53:15 | 俳句、川柳、エッセイ
 居酒屋のお姉ちゃんが、
「私って、まだ太宰府に行ってないんです」 という。
 私って……ねえ、と思うが、
「ふうん、太宰府くらい行ってごらんよ、梅もいい頃でしょ」
「え? 梅があるんですか」 ときた。

「もういいから、早く串焼き持っといで」 と言った。

 焼き鳥の皿を届けにきて、来週は、新潟へ行くんですという。

 直行便がなくて、アタミで乗り換えですと言うから、ほう、珍しいところで乗り換えるんだなあと思ったら、
たまたま通りかかった店長が、いや、伊丹空港ですと言葉を添えた。

 まったく、今どきの若いもんは……と思いかけたが、ま、仕方ない。
相手は、はたち、そこそこで、こちらは70半ばである。
70年も生きてきたのだから、こちらに多少の記憶の蓄積があるのは当たり前である。

 そのかわり、たったいま聞いたことはすぐに忘れるではないか。
若者の知っているバーコードとQRコードの違いもわからない。
だから、これで、オアイコなのである。

 はい、もう一杯、ビール持ってきて! 
 ハーフアンドハーフ!

 酒は楽しく飲むべし。
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90歳

2011-02-15 13:36:57 | 健康
 サークルの仲間に90歳の女性がいる。
一人暮らしだが、元気である。
関東、関西までの旅行を苦もなくこなす。

 デジカメなどを操り、みんなの集合写真なども撮ってくれる。 
つい先ごろまでは、一日1万歩以上を早朝の5時から歩いていたそうである。

 今日、風子ばあさんが、今も歩いていますか? と訊いたら、
「いえ、もうやめました。今は8時間たっぷり眠ることが身体にいいと聞いたので、それを心がけています」とのこと。

 このやり取りを聞いていた一人が、ああ、よかった! と、ほっとした声をあげた。
「××さんが1万歩あるいていると聞くと、自分の怠惰が責められているようで苦しかったんです。
これで安心しました。私も8時間たっぷりの朝寝を真似します」という。

 そういう彼女はまだ50代で、いささか肥満体である。
「あなたが××さんの真似をするのはまだ早いよ」

 風子ばあさんはついお節介なことを口走ったが、
90歳の模範生を手本にするのもこれで中々大変なのである。
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停車場

2011-02-13 14:41:18 | 俳句、川柳、エッセイ
  ふるさとの訛りなつかし停車場の
       人ごみの中にそを聞きにゆく

   啄木の有名な歌である。

 今日、風子ばあさんは、新装オープンも近い博多駅へ行った。
隣接しているバスターミナルにも行った。

 駅の周辺は、いつ行っても活気があり、見知らぬ人たちが忙しげに行きかう。

 列車やバスを見ると、風子ばあさんも、またどこかへ行きたいなあと旅心が疼く。
用がなくても駅という場所が好きである。

 しかし、今日は、啄木を気取って停車場へ行ったわけではない。
駅の近くのカバンメーカーのバーゲンに行くはずだったのである。
いや、行ったのである……が、残念なことに昨日で終わっていた。
 つまり、一日勘違いしたのである。

 でも、めったに出かけない駅に寄って、人ごみの中に「そ」は聞かずとも、どこかなつかしい場所に佇んだのは悪くなかった。

 そうでも言わないと恥ずかしい! つまりは負け惜しみである。

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速記者

2011-02-12 12:30:30 | 思い出
 昨日に続いて父のことである。

 速記者だった父は、ときどき内職と称して雑誌の座談会の仕事をしていた。
ミミズの這ったような横文字は、他人には判読できない
それを原稿用紙に書き起こして依頼者に渡すのである。
 
 風子がまだ高校生のころ、これをアルバイトとして手伝ったことがある。
原稿は、字の上手下手より、とにかく正確で読みやすくないといけない。
父が速記を解読した文字を、書き起こし、それを風子が原稿用紙に清書した。

 二度手間になるから、父にとってそれほど有難い手伝いだったとは思えない。
小遣いをくれる口実だったのかもしれない。

 しかし、役人だった父は芸能ニュースにうとく、女優、俳優の名前も知らない。流行の唄も知らない。
大衆雑誌の座談会の記事には若い風子のミーハー知識が案外役にたっていたのかもしれない。

 風子も、一度は速記者を夢みて、父に速記文字のテキストを見せてもらったが、一人前になるにはそれなりの努力がいる。
 努力の苦手な風子は、手に負えなくて、すぐにあきらめた。
 
 テープレコーダーが普及しはじめると、父は、速記も、もう終わりだなと言っていた。
しかし、パソコンも進化して、発言したら即文字化できる装置もあるはずだが、今もテレビで見る国会中継には、速記者の姿がある。

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スルガーハンシ

2011-02-11 11:22:18 | 思い出
 もし、父が生きていれば、103歳になる。
速記者であった父の筆記用具は、役所から支給された黒いシャープペンシルと、ベージュ色の二つ折りにした用紙であった。

父はこの紙のことを、スルガアーハンシと、ンガーのところにアクセントをつけて呼んだ。
これに横書きで速記文字を記した。

 父が役所の文書を家に持ちかえることはなかったが、内職と称して、雑誌の座談会の仕事などは家でこなしていた。 
 もう時効だからよかろうが、風子ばあさんが覚えているのは戦後すぐのことである。

 子供だった風子ばあさんは、スルガーハンシというのは、てっきり速記の専用用紙と思いこんでいた。
ごく最近になって、駿河半紙という紙の存在を知った。

 そうか、あれは駿河半紙というものだったのか、と懐かしい。
 今は、もうほとんど入手困難な和紙らしい。
一枚くらい、父の書いたそれを取っておけばよかったと、今ごろになって残念に思う。

 物不足の時代で、あの紙が手に入りやすかったからなのか、シャープペンの滑りが良かったから使用したのかは、わからない。
 

 内職につかったあとの、速記文字のあるスルガーハンシは、天ぷらの敷き紙にしたりして、中々重宝だったものである。

 今日は父の18年目の命日である。
 
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マッサージマシン

2011-02-10 22:46:26 | ショッピング
ウインドーショッピング、通販、ネットショッピング、どれも好きである。
もう物は処分しないといけない年齢と分かっていても、風子ばあさんは、物欲を捨てきれない。

 つい最近も、ネットで見て、肩に置くマッサージマシンを注文した。
読書やパソコンに疲れたとき、肩の上でトントンと叩いてくれたら気持ち良いだろうと、品物が到着するまで楽しみにしていた。

 届いて、やれ嬉しやと、持ち上げると、なんと3.5キロの重量である。
 使用説明書を読んだら、悪性腫瘍のある人は使用しないで下さいとある。フムフム……。

 次ぎ……、妊娠初期の人、これはばあさんには関係ない。
次ぎ、心臓に障害のある人、糖尿病の人、皮膚疾患、骨祖しょう症、ここまでは、まあまあである。
その次ぎ、背骨が左右に曲がっている人というのもある。

年寄りで曲がっていない人間はまずいない。この辺りまで読んできて憮然とする。

しかし、もう買ってしまったのである。おそるおそる肩の上で始動させた。
痛い! でも、せっかくだから、歯を食いしばって我慢する。

翌日、起きたら背中全体が痛くて、まいった。
あれから数日たつが、まだ痛い。

数え上げればきりのない愚かな買い物のひとつである。

いくつになっても懲りないばあさんで、我ながら愛想が尽きる。

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鶴瓶に乾杯

2011-02-09 22:36:47 | 家族
遠方にいても、妹とはよく話すが、弟となると、ぐっとその回数が減る。

元来、女はお喋りなものと決まっているが、男は寡黙である。
弟とは電話で話すのも年に一度、あるかないかである。

 この間、ひょっと気が向いて、辛子明太子を送った。
そのときは、たまたま晩酌中だったという弟が、大変機嫌よくお礼の電話をくれた。

明太子のお返しのつもりだろう、先日、かりん糖のつめ合わせが送られてきた。
また晩酌のころがよかろうかと、時間を見計らって8時ちょうどにお礼の電話をした。

「かりん糖、ありがとう」
「あ、そう、わざわざ……」

なんだか、そっけない。

「あのね、お姉ちゃん、今から鶴瓶に乾杯を見るんだよ、お姉ちゃんも見なよ、これ、面白いよ」

受話器の向こうから   ♪~しあわせを~ありがとう~♪

 大きな音でテーマソングが流れてくる。

 これが妹なら、テレビより、こちらに付き合ってくれるのだがなあ、と思いながら、
 はいはい、鶴瓶、見ますよ、じゃあね、と電話を切った。
 
 お互いに無事を確認できたから、まあ、これでいいのである。

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警視庁

2011-02-08 14:20:02 | 時事
 電話セールスだ、おれおれ詐欺だのと、近頃は電話が鳴ると、ろくな事はない。

 昨日も夕方の忙しい時間に電話が鳴った。
風子は、ばあさんだから、電話に出るときは、気取った声で、はい、と名乗る。

 いきなり、男の声がして、「警視庁に協力している被害者救済機関です」……という。
  警視庁! と聞いただけで、ドキッとする。

 しかし、昨今のばあさんは、疑り深い。
警視庁に関わる機関がうちあたりに電話をしてくるわけがないよね、と、すぐ思う。

「べつになにも被害はありませんから」と言ってガチャンと受話器を置いた。
切ったあとで、まだ少しドキドキしている。

 何かこちらを騙す手口だったのかもしれない。
それにしても、警視庁をかたって、いったいどんな儲け話と結びつけるつもりだったのだろうか。

 もう少し騙されたふりをしてみても面白かったかもしれないと野次馬根性が疼いたが、
 
やっぱり、ヤバイ! だろう、たぶん。
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