風子ばあさんたちの世代は、家庭でも、職場でも、電話のマナーはやかましく、しつけられた。
だから、いまでも電話に出るときは、明るい声で、朗らかに名乗ることにしている。
先日、あるショップに、掃除機の付属品を取り寄せてもらうように頼んでいた。
中々連絡がないので、こちらから問い合わせの電話をかけた。
もちろん、明るく朗らかな声を出した。
受話器の向こうで、受けたひとが、別の店員さんにその件を尋ねるやり取りが聞こえた。
「ええ、一週間ほど前だそうなの……、××風子って。……、年寄りの声よ」
今の電話の感度は大変よろしい。全部聞こえている。
顔も見ないで、声だけで、年寄りってわかるんだよねえ、
明るく朗らかな声を出したつもりのばあさんは、ちょっとばかりショックではあった。