風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

スルガーハンシ

2011-02-11 11:22:18 | 思い出
 もし、父が生きていれば、103歳になる。
速記者であった父の筆記用具は、役所から支給された黒いシャープペンシルと、ベージュ色の二つ折りにした用紙であった。

父はこの紙のことを、スルガアーハンシと、ンガーのところにアクセントをつけて呼んだ。
これに横書きで速記文字を記した。

 父が役所の文書を家に持ちかえることはなかったが、内職と称して、雑誌の座談会の仕事などは家でこなしていた。 
 もう時効だからよかろうが、風子ばあさんが覚えているのは戦後すぐのことである。

 子供だった風子ばあさんは、スルガーハンシというのは、てっきり速記の専用用紙と思いこんでいた。
ごく最近になって、駿河半紙という紙の存在を知った。

 そうか、あれは駿河半紙というものだったのか、と懐かしい。
 今は、もうほとんど入手困難な和紙らしい。
一枚くらい、父の書いたそれを取っておけばよかったと、今ごろになって残念に思う。

 物不足の時代で、あの紙が手に入りやすかったからなのか、シャープペンの滑りが良かったから使用したのかは、わからない。
 

 内職につかったあとの、速記文字のあるスルガーハンシは、天ぷらの敷き紙にしたりして、中々重宝だったものである。

 今日は父の18年目の命日である。
 

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