4月21日(土)、『けーし風』74号の定例「読者の集い」があった。
集まるのはおおかた同じようなメンバーで、それに一人二人はじめての人や不定期に参加する人が加わる。
この日も定時に現れたのは4人だけで、どうなることかと思ったが、終了後の懇親会までには6人になった。
まあ、いつもこんなものである。
本号の特集は「八重山から〈国境〉を見る」と題して、八重山諸島与那国島への自衛隊配備を取り上げている。
八重山は台湾、中国との国境に接する自治体である。奇しくも石原都知事が「尖閣諸島を東京都で買い上げる」ととんでもない発言をした「尖閣(釣魚)諸島」の領有問題とまさにリンクする。
八重山問題とは、国境最前線の問題なのである。
特集冒頭では八重山歴史研究家の大田静男氏のインタビューがあり、聞き手が教科書問題から問いかけるが、そのことについてはあまり具体的に触れられていない。(説明不足なのはこの雑誌の欠点である。沖縄の事情に疎い人が読んでもチンプンカンプンだろう)
八重山の教科書問題とは、昨年(2011年)八重山地区の中学校公民教科書を「つくる会」主導の育鵬社版が採択された問題である。これについて大田氏は「教科書問題だけを見ていたら唐突に感じるかもしれないけれども、権力の側からすると自分たちがもっとも重要視している沖縄・宮古・八重山でどうやって自分たちの意思を貫徹するかというのは、重要で不可欠なことなんだろう」と語る。
つまり、自衛隊の配備を正当化しスムーズに行うには、住民の右傾教育が不可欠であるということなのだ。
八重山への自衛隊配備の理由として、「尖閣問題」は国民に対して説得力がある。領有権を主張する日本(共産党も含め)は、先頃起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船衝突事件をきっかけに、中国の横暴をマスコミ総動員で宣伝した。
中国が領有権を主張し始めたのはここ数年、つまり、海底資源の存在がわかってからだともいう。しかし、中国が日本に対し「尖閣(釣魚)諸島」の領有権を主張したのは、新中国が誕生して間もなくのことである。
この地域の歴史を詳細には調べていないので、「尖閣(釣魚)諸島」の領有権がどこにあるのかについては何ともいえない。ただ、日本政府がいう「無主地」でもなければ日本の領土でもなかったことは事実らしい。
これについては、またあらためて述べる。
八重山に自衛隊を配備する政治的な理由は、上記の「尖閣」領有にかかわる軍事防衛もその一つだ。そして、攻めて来るわけもない北朝鮮や中国への牽制もある。
しかし、安里英子氏の記事では自衛隊誘致は「経済問題」だとする。
「政府、防衛庁(省)は地方交付金を削減し、脆弱な僻地(離島)を経済的に追いつめ、「基地周辺整備法」による補助金をちらつかせ、地元による誘致をし向けている」
これは、原発誘致と構造的に一致する毒まんじゅうである。
読書会で、八重山の教科書問題について「日本会議」が関与しているという報告があった。先の選挙で宜野湾市長佐喜真淳(さきま・あつし)も「日本会議」の会員であったが選挙中は隠していたそうだ。
ついでに最高裁長官で退官後に「日本会議」に入会したものもいて、「新しい歴史教科書」を進めるメンバーが多数政治に介入しているし、またそのほとんどがその事実を隠していることに注意したい。隠しているくらいだから、本人もいいこととは思っていないのだろう。
読者会でわかったことは、八重山への自衛隊誘致が、それ一つの問題だけではなく、多くの思惑が絡み合っていることだ。
政治的には「防衛」だが地元は「経済」の活性化をもくろんでいる。たとえば100人の自衛隊員が配備されるとして、その家族を含めれば300人ぐらいになる。1000人やそこらの島にそれだけの人口がいきなり増加すれば、商業が活性化すると単純に思い込んでいるのだ。もちろん、「防衛」しなければならない非常事態が来るなど想像もしていないから、カネが舞い込むことにしか意識が行っていない。
軍需産業は、自衛隊配備にかかわる予算にハイエナのように飛びつく。ちなみに昨年度の防衛予算は約47兆円、(そのうち在日米軍関係費、約3700億円)である。
「日本会議」などの右翼は、これを機会にと教科書採択を持ちかけて八重山の右傾化をはかる。自衛隊を理解するにはこの教科書だ、みんなで軍国日本を復活させよう、というわけである。
この日、いささか風邪気味で体調が悪く、懇親会は中座させてもらった。しかし、『けーし風』の74号は久しぶりに内容がしぼられたいい特集だったので、充実した読書会になった。
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