80ばあちゃんの戯言

聞いてほしくて

保育科 (15)

2010-04-05 01:16:56 | 学校
 其の日の試験は心理学に英語だった。心理学は保育科の学生

にとっては大事な科目だと思って、前から一生懸命力を入れて

いたし、いろいろ本を読んで、自分なりの研究もしていたので、

何とかなるだろうとは思ったが、前の晩は殆ど寝られなかった

のでどうなるかと思ったが、まあ、案ずるより産むが安しで、

何とかなった。

英語は、もともと英文科志望だったのだから、保育科での英語

は簡単なものだったので、書き終わったら出ていいと先生が

仰ったので、さっさと提出して、父の入院したという警友病院

へ飛んでいった。

担当の医師に言われたのは

”お父さんは,99%肺癌で年内はもたないかもしれません”

ということだった。

本人は唯ふーふー言って眠りこけているばかりだったので、

当面一人で病院へ行かれるのは私だけだから、何とか一人で、

父の世話を毎日やることに決めたが、さしづめ、母のことが

一番大変な問題であった。

新聞社に勤めていた夫の弟が母のような人を受け入れてくれ

るという国立湯河原病院の院長先生宛の紹介状をくれたので

ある。

妹のだんなが車で送ってくれるというので、仕事の日に悪いと

思って断ったのだが、どうしてもいってくれるというの

で、体のきかない母を乗り降りさせるのには助かるのでお願い

した。

結局湯河原の病院はこれから改築に入るので受け入れられない

と断られてしまったが、何とかしなくては思い、先生に必死で

どこかご紹介いただけませんかとお願いしたが、最初はなかな

か”うん”と言われなかったのだが、私が事情を話して、再三

お願いしたら、何とか熱海の病院を当たってみましょうと言っ

てくださった。

熱海の病院が引き受けてくださるというので、母を連れて、

すぐ飛んでいった。

国立の真新しい病院で、お部屋は日が当たって気持ちよく、

4人部屋だったが、周りの方が、とてもよさそうな方々で

 ”大丈夫ですよ。私たちも何とかします”といってくださ

ったが、其の病院は完全看護という話であったが、母は一切

自分のことが出来ないので付きっ切りの家政婦さんをつける

ことで、何とか入れていただけることになった。

すぐに家政婦さんを派遣してくれるところを病院から聞き出

して、電話してから、頼みに行った。

早速、家政婦さんが来てくれたので、ほっとした反面、こん

な遠くに一人残される何も出来ない母に、ついていてあげら

れないので申し訳なく、後ろ髪を引かれる気持ちで辛くなっ

たのである。
 
(つづく)