奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その913)

2019-02-23 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「戦後日本の歴史認識(五百旗頭薫/小宮一夫/細谷雄一/宮城大蔵/東京財団政治外交検証研究会/共編・東京大学出版会2017刊)」を読んだ。五百旗頭薫(いおきべかおる1974生れ)氏は東大教授、小宮一夫(こみやかずお)氏は青山学院/駒澤/専修大学非常勤講師、細谷雄一(ほそやゆういち1971生れ)氏は慶應大学教授、宮城大蔵(みやぎたいぞう1968生れ)氏は上智大学教授である。-----
章立ては、“吉田茂の時代”、“佐藤栄作の時代”、“中曽根康弘の時代”、“沖縄と本土の溝”、“歴史和解は可能か~日中/日韓/日米の視座から”、“東アジアの歴史認識と国際関係”、“歴史認識問題を考える書籍紹介”、“戦後70年を考えるうえで有益な文献を探る”となっている。-----
東京財団の北岡伸一主任研究員(元東大教授)を取り巻く研究者たちが、集って交わした議論を本に仕立てたものであり、全体に雑駁でそれ程大した中身はないと思われるが、東大にしても文系の学問を進めるにあたってのスポンサーに事欠く状況があるようで、お気の毒に思えるのだが、だからというのか、余り突っ込んだ話にはなっていない中途半端な本であると思った。----
五百旗頭薫氏は五百旗頭真氏の子息であり、鳶(トンビ)が鷹を生んだ事例のような塩梅で、真氏は京大卒だが、子の薫氏は東大卒である。気の所為か子息は線の細い研究者だなとこの本「戦後日本の歴史認識」を読んで感じさせられた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その912)

2019-02-22 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「第2次世界大戦/アメリカの敗北~米国を操ったソビエトスパイ(渡辺惣樹著・文春新書2018刊)」を読んだ。渡辺惣樹(わたなべそうき1954生まれ)氏は、東大(経済学部)卒で、カナダバンクーバーに在住し、日米近現代史研究家を名乗っている。-----
「第2次世界大戦/アメリカの敗北」は、米ソ冷戦の終結を受けて、外交文書など米ソ両国の政府の秘密文書の公開が始まって、それらを読み解いた研究論文が発表されるなど、これまで隠されてきた世界の近現代史が明らかにされる時代となって来ており、その白眉とも云える第2次大戦中のアメリカの政府中枢で活動したソ連のスパイの真実の一端を紹介してくれている本である。驚いてびっくりして嘘だと思う日本人もいるだろうが、本当の話であると、渡辺惣樹氏は書いている。-----
第2次大戦後の世界の様子が、この本を読めば、論理的に理解できるだろうとしている。但し、全ての文書が公開されている訳ではないので、読者は世界史の教科書的な知識は当然必要となるとも書いている。それさえ知らない人や歴史に興味の無い人には無駄なものとも思えるが、東大卒の知性で読み解いて紹介してくれている歴史的事実は週刊誌レベルをはるかに超えていると思った。----
これまで、日本の戦後のレッドパージがなぜ行われたのか疑問であったが、アメリカ国内におけるレッドパージの理由をこの本で明らかにしてくれているので、やっと腑に落ちた気がした。----
FDR(フランクリン/デラノ/ルーズベルト大統領)の人の良さにつけ込んで、ソ連のスターリンはスパイを使って、ソ連の陣営を大きく伸長させたと言うのが、アメリカの敗北というタイトルになっているのである。アメリカが得たのは世界の基軸通貨を英国のポンドからアメリカのドルにした程度である。ウィルソン大統領の国際連盟の失敗を国連軍を持つ国際連合の樹立で自分の世界政治の夢としたなんて、本当にルーズベルト大統領らしいなとも思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その911)

2019-02-21 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「21世紀の資本論の問題点(苫米地英人著・2015増補版)」を読んだ。苫米地英人(とまべちひでと1959生まれ)氏は、カーネギーメロン大学博士(PhD)で、認知科学者である。-----
アメリカでベストセラーとなった“21世紀の資本論(Thomas Piketty著・2014英語版)”について、その内容を紹介して、概要を示すと共に、間違っている処を指摘している。苫米地英人氏曰く、経済学は昨今、数理手法を使って研究する自然科学に近い学問となっているのだが、“21世紀の資本論”では、過去200年に亘る経済の歴史を対象にして、歴史学の手法で経済事象を読み説いている。これでは、折角経済学が理系の学問として近時、発展してきた道程を否定するようなものであり、宜しくない。しかしながら、トマピケティ氏が、提出した仮説を数理的に表して、理論化して提案するのであれば別だが、歴史学的手法による仮説の提示だけ、大多数の経済学からは受け入れられないし、確からしさの学問智としては、捉えられないだろうと厳しく評価している。-----
苫米地英人氏もトマピケティ氏も互いに飛び級するような天才肌のご両人だから、この薄っぺらい本の真意は掴み難いが、指摘が正しいのだろうとは思わせられた。要するにフランスではヒットしなかったが、アメリカでは経済格差が広がって、その資本主義の歪みを説明してくれる著作が求められていたのだろうと冷ややかに書いている。但し、悪い本ではないとも書いている。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その910)

2019-02-20 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「手帳と日本人~私たちはいつから予定を管理してきたか(舘神龍彦著・NHK出版新書2018刊)」を読んだ。舘神龍彦(たてがみたつひこ)氏は、大学卒業後、アスキー勤務を経て、現在はフリーで活動している。手帳評論家を名乗っている。-----
「手帳と日本人」は、著者曰く、類書はないと断言している。結構網羅的に手帳の歴史を洗い出してくれている。1995年以降パソコン、インターネットの時代となったが、紙ベースの手帳が無くなることはなくて、意外としぶとく生き残っていると述べている。バブル経済の頃からあったシステム手帳だけでなくあらゆるバリエーションの手帳があって、勤め人がいる限り、紙ベースの手帳は無くならないと言う説明を、豊富な事例から分かり易く解き明かしている。つまり、電子端末を使いこなす人は少数であり、大多数の人は、手帳も手放せないのだと読み説いている。-----
21世紀を生きる世代は、紙ベース手帳を使わないのかも知れないが、この本「手帳と日本人」では、明治以来の歴史の中で使われてきた軍人手帳などを取り上げていて、著者の年齢にも関わりがあると思うのだが、最も若い世代の動向はつかめていないのかも知れないとは思った。しかし、平成の終わる時にグッドタイミングな新書となっているのは確かだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その909)

2019-02-19 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「シベリア抑留最後の帰還者~家族をつないだ52通のハガキ(栗原俊雄著・角川新書2018刊)」を読んだ。栗原俊雄(くりはらとしお1967生まれ)氏は、早稲田大学(政治学科)卒、同大学院(日本政治史)修了で、毎日新聞に入社し、現在、東京本社/学芸部記者とのことである。------
「シベリア抑留最後の帰還者」は、満鉄調査部に務めていた“佐藤健雄(さとうたけお1899~1993)”氏が、シベリアに抑留されていた11年間(1945~1956)の間に日本の家族と交わされたハガキ(1952~1956)を元に、栗原俊雄氏が記者精神を発揮して、周辺を詳細に調べて、新書としたものである。-----
毎日新聞の記者らしく庶民目線で、日本政府や関東軍、満鉄の満州居留民へのあまりの等閑な処置を、赤裸々に書いている。終戦直前に日本政府はソ連に連合国との和平交渉を取りつけて貰おうとして、満州の使える居留民はソ連で使役しても良いとの条件を提示していたことを公文書から見付けている。----
シベリア抑留者は、旧軍の規律が戦後も存在したものだから、立場の弱い兵卒から、寝る処から食べるものまで、不自由して先に病気となり命を落としていったそうである。瀬島龍三氏など高級軍人は、悲惨な最下層の重労働をせずに済んでいることを、この「シベリア抑留最後の帰還者」では、書いている。この本の主人公の“佐藤健雄”は、満鉄調査部勤務だったために、戦時中はスパイ活動をしていたと認定されて、収容所に入れられたりして、重労働の現場には送られなかったことが逆に幸いして帰還できたのだろうと思われる。兎に角、シベリア抑留から生きて帰った人は、“生き残った者はね、加害者なんですよ”との発言があるように、これまでもこれからも真実を話す人はいないと言うことなのだが、このような状況の中で、少しづつ少しづつ零(こぼ)れ話を集めて、52通のハガキだけではなくて、紡がれているのである。シベリア抑留を知らない若い人には良い本だと思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする