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横浜ボートシアターの「小栗判官・照手姫」

2023-11-24 10:14:25 | 演劇
11月23日(木)の昼に、シアター代官山で横浜ボートシアターの「小栗判官・照手姫」を見る。シアター代官山は劇団ひまわりの持つ120席ぐらいの小さな劇場だが、結構見やすかった。この「小栗判官」は、約40年前にボートシアターが設立された当時のヒット作品だが、作者の遠藤啄郎が2020年に亡くなったので、その追悼公演として行ったもの。1980年代の伝説の舞台が蘇った。場内はインテリ中高年という感じの人で満席だった。休憩15分間を入れて上演時間3時間なので、午後4時に始まり、終演は7時だった。

「新版」と銘打っているので、台本は同じだが、演出、美術、音楽などは少し変わっている印象。製作費が十分でなかったのか、初演当時よりも美術にはお金がかかっていない。豪華さが失われた印象。それでも遠藤氏が作った仮面はほぼそのまま使われたようで、仮面劇としての面白さは失われていない。音楽は打楽器を中心として素晴らしいもので、初演当時とは微妙に異なるが、初演時のムードを維持している。和太鼓だけでなく、インドやアラブなど各地の太鼓や鐘を使い、ガムラン音楽の鐘で不思議なムードを醸し出していた。初演では、衣装も東南アジアのテイストがあったが、今回の美術はそれが失われて、音楽だけに東南アジアのムードが残った印象。

物語は「説教節」で有名な話だが、初演時は歌舞伎的な演技だったが、今回の演技は文語調の台詞回しだけが残り、歌舞伎調は失われている。出演者8人が、演技だけでなく楽器演奏も行い、仮面を変えて複数の役を演じるので、役者も休む暇なく3時間動き回るハードな舞台。力強く、演じきった劇団員には大きな声援を送りたい気持ちだ。出演者の都合などもあったのだろうが、最後の方で小栗判官が「餓鬼」となって地上に戻り、車に乗せられて湯治に行くくだりは、初演時は人間が小さな車に乗って演じたが、今回は仮面と衣装だけとなり、車も省略された。ちょっと寂しい。その後に、仏陀か菩薩的な人物も登場するが、今回はそれも省略されて、舞台後ろの小さな仏像が光るだけだった。これは大いに残念。人数が足りなかったのだろうか。

それにしても、伝説的なこの舞台を見れたのは幸せ。1980年代の前衛的なエネルギーが、十分に残っていた。

家に帰って、豚肉と白菜の鍋を食べる。飲み物は吟醸酒。

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