劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立劇場の「ホフマン物語」

2024-02-26 15:06:53 | バレエ
2月25日(日)の昼に新国立劇場でバレエ「ホフマン物語」を見る。夜の回があるわけではないのに、なぜか13時開演。25分の休憩が2回入って、終演は16時ちょっと前だった。13時開演だと、昼食もゆっくり取れないし、16時に終わると夕食にも早すぎるので、中途半端すぎる。14時開演にして、終演を17時としてほしい。場内はほぼ満席。ダブルキャストで4回公演だった。

バレエはオペラと同様に、プロローグ、オリンピア(自動人形)、アントニア(早死にする娘)、ジュリエッタ(ヴェネチアの娼婦)、エピローグという構成。複雑な説明は難しいため、バレエの物語はオペラと比べるとかなり簡略化されている。

最初のオリンピアは奥田花純がそつなく踊った。物語の説明も適切だが、屋外で物語が進むのが、何となく違和感がある。2幕目のアントニアは小野絢子が踊ったが、素晴らしい切れがあり、情感のこもった踊り。さすが新国立のプリマと思わせた。オペラでは母に誘われるように禁じられた歌をうたうが、バレエでは医師に操られて踊ってしまう。ここは母との踊りのデュエットが欲しい気がした。

3幕はヴェネチアの娼婦との恋だが、これも悪魔に操られていて、最後はにわか作りの十字架で追い払うという展開。何となく吸血鬼映画を思わせるような話になっていて、「ホフマン物語」らしくない。米沢唯が立派に踊ったが、もう少し妖艶さが欲しい。

最後はエピローグで、ステラを失ったホフマンはバラの花一輪に絶望する。何となく、1950年代のMGM映画「巴里のアメリカ人」のラストシーンを思い出した。

音楽はオペラからの借用が多いが、オッフェンバックのオペレッタからの借用もあり、うまくバレエに合わせた構成となっていた。

家に帰って、食事。ポテトのポタージュスープ、スペイン産サラミ、豚ロースのミルフィーユカツなどを作る。飲み物は白の泡。

チョン・ミョンフン指揮の東京フィルハーモニー

2024-02-23 11:03:16 | 音楽
2月22日(木)の夜にサントリーホールで東京フィルハーモニーを聴く。9割程度の入り。7時開演で、15分の休憩を挟み、終演は8時50分頃。東フィルは留学生の招待をやっているためか、若い外国人の姿も多く見かけた。

演目は前半がベートーヴェンの「田園」で、休憩の後はストラヴィンスキーの「春の祭典」。指揮のチョン・ミョンフンは70歳ぐらいだから、まだ元気そうに見えた。どちらの曲も暗譜していて、譜面を見ないで指揮しているのはすごいと思う。特に春の祭典などは、複雑な曲なのに、頭に入っているのだと感心する。

「田園」は、手慣れた感じでそつなく指揮したが、「春の祭典」は気迫のこもった指揮。オーケストラの編成も大きい。コントラバス8本で、弦だけで60人。木管が20人いて、金管も20人。そのほかに打楽器が6人ぐらいいたので、ゆうに100人を超える大編成。ホルンが9本というのもすごいが、チューバも2本入っていた。

「春の祭典」は、リズムも複雑で面白いが、不協和音もガンガン出てくるので、昔は変な曲だと感じたが、今聞いてみると面白い。リズムの刻み方や、楽器の使い方などは、聴いているとレナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド物語」にそっくりだという気がした。「ウエスト・サイド」の方が50年後に誕生しているので、バーンスタインがストラヴィンスキーを研究したのだろうという気がする。

「春の祭典」は結構長い曲だが、あっという間に終わった感じで、面白かった。霧雨のような冷たい雨が降っていたが、帰りがけに和風にアレンジしたスペイン料理店で軽い食事。
ブリと大根の低温調理、エビのテリーヌ、万願寺唐辛子のようなもののフリット、イワシの酢漬けなど。飲み物はスペイン産の白でガルナッチャ種。

沼尻竜典+N響

2024-02-22 10:55:46 | 音楽
2月21日(水)の夜に東京芸術劇場でN響のコンサートを聴く。都民芸術フェスティバルの一環なので、定期演奏会よりもチケットが安い。そのためか、ほぼ満席だった。7時開演で、途中で20分の休憩があり、終演は9時。観客は、年金生活者が主体。

演目はドヴォルザークとシューマンで、指揮は沼尻竜典。チョロノのソリストはカミーユ・トマだった。最初にドヴォルザークのスラブ舞曲の1番があり、続いてカミーユ・トマのチェロで、ドヴォルザークのチェロ協奏曲。チェロ協奏曲の中では1番人気の曲だが、今回の演奏は重厚というよりも軽快な響きで若々しく元気の良い演奏だった。トマは大柄の女性で、チェロが小さく見える。演奏中は完全に自己陶酔して弾いていた。沼尻の指揮はチェロにうまく合わせてオケをコントロールし、チェロの音色を存分に楽しませた。

休憩の後は、シューマンの交響曲1番「春」。シューマンにしては珍しく力強く、春らしい若々しさを持つ曲で、面白く聞いた。この演奏でも沼尻の指揮は見事で、軽快な響きを聴かせた。チェロのソリストがアンコールを演奏しなかったためか、珍しくオケがアンコールを演奏。ドヴォルザークのスラブ舞曲を聴かせた。

雨がやんでいたので、帰りがけにヴェトナム料理店で軽い食事。生春巻き、イカのフライ、海鮮フォーを食べる。飲み物はボルドーの白。

文京シビックホールの「椿姫」

2024-02-19 14:50:53 | オペラ
2月18日(日)の昼に文京シビックホールでヴェルディのオペラ「椿姫」を見る。いわゆる「市民オペラ」で、1回公演だが人気があるようで満席だった。東京都の各区は、規模の違いはあるが、区民オペラを上演しているところが多いようだが、文京区の区民オペラは比較的水準が高いらしいと聞き、見に行った。2時の開演で、15分おt20分の休憩を入れて、終演は5時ごろだった。

主催は文京シビックホールで、製作はNPO法人のCittadinoオペラ振興会となっており、形式的にはCittadino歌劇団公演に、文京区民が参加するという形式のようだ。今回が22回となっているので、それなりに続いてきた企画だ。過去の上演作品を見ると「カルメン」を2回、グノーの「ロメオとジュリエット」を1回上演した意外は、すべてイタリアオペラで、ドニゼッティ、ベッリーニ、プッチーニ、ヴェルディが中心。

結構本格的な公演で、オケは寄せ集めだがプロの2管編成、6人のバレエダンサーも入り、豪華ではないがきちんとした装置が作られ、衣装もきちんとしていた。問題の歌唱は及第点で、若いヴィオレッタとヴェテランのアルフレードが、見事に歌ったほか、ジェルモンが堂々とした歌声で聴衆を魅了した。このホールでオペラを聴いたのは初めてだが、コンサートホール用に合わせたのか、残響が長めなので、オペラでは少し気になる。感覚的には2秒近い残響がありそうだ。オペラの上演では1.5秒以下が望ましいと言われているので、可変できると良いのだが、そう簡単なことではないのかも知れない。

演出はオーソドックスなもので、台本に忠実。ひねりがないので実に見やすい舞台だった。ある意味、村上敏明がボロボロの歌を聴かせた「ファウスト」などよりも、よっぽどまともな上演だった。これで、価格が安いので人気が出るのも当然だと思った。

区民の参加は合唱団で、総勢100人ぐらいの大合唱で、区民コーラスとはいえ、すごい迫力だった。特に2幕最後の大合唱など、規模の大きさだけで圧倒するような舞台で大いに楽しんだ。

出演者はすべてオーディションで選んで、半年ぐらい練習するようだが、これだけの作品に仕立て上げた、スタッフに敬意を表したい。

家に帰って、簡単な食事。スペイン産サラミ、イタリア産ボッタルガのスライス、サラダ、ホタルイカのパスタなど。飲み物はカヴァ。

東京芸術劇場の「美しきエレーヌ」

2024-02-18 10:56:19 | オペラ
2月17日(土)の昼に東京劇術劇場でオッフェンバックの「美しきエレーヌ」を聴く。演奏会形式の上演で、7割程度の入り。客層は何となく年齢層が高め。オペレッタといえば、ウィーンの物の上演が多いが、この作品はフランスで初演されたオッフェンバックの作品。

歌手陣が充実していた。主役には砂川涼子、工藤和真、そのほか濱松孝行、藤木大地などが出演。オーケストラはオペラ・バンドという寄せ集めの楽団だったが、きちんと演奏していた。物語は、美女ヘレンがトロイの王子パリスに誘拐される話の喜劇版で、ギリシャ神話では有名な話。この物語の前段には「パリスの審判」があり、後日談には「トロイ戦争」がある。

砂川涼子は、先日の「ファウスト」でも安定した歌唱だったが、今回も充実した歌いぶり。相手役の工藤和真も美しい歌声を聴かせた。日本ではちゃんとしたテノールが貴重だが、この作品では工藤のほか、4人もテノールが出ていて、贅沢な構成。脇を固めた出演者もきちんと歌っていた。

音楽的には充実していたが、「オペレッタ」としての面白さは欠いていた。オペレッタはオペラのレチタティーヴォ部分を台詞として会話するので、ミュージカルのような構成だが、今回の公演では、多少の演技は行うものの、台詞をすべてカットしてナレーターの語りで説明するという上演方法だった。恐らくは上演時間の問題や、当時の台本をそのまま上演しても現代の観客にはわかりにくいなどの問題があろうが、これでは作品の面白さが伝わらない。

いわゆる演奏会形式のオペラも増えているが、オペラとして上演するからにはレチタティーヴォも含めて全曲上演されるのが前提だろう。オペレッタで台詞をカットして良い理由などない。アメリカなどでもよくミュージカルを演奏会形式で上演したりするが、その時にもきちんと台詞部分は入っており、大半の場合は、ダンスも入る。練習時間の都合で台詞を覚えきれないならば、台本を持って演じても良いのではないか。今回は譜面台を置き楽譜を見ながら歌ったのだから、ついでに台本を見ながら演じればよいと思う。妙につまらないギャグを入れるよりも、原作をそのまま伝えるほうが大事だろう。

衣装は簡単だが、それらしく作ってあり、簡単な演出も付いていた。歌は楽しんだが、何となくもやもやした気持ちで見終わった。

帰りがけに買い物して、家に帰って食事を作る。菜の花の辛し和え、きんぴらごぼう、蕪の煮物、親子丼を食べる。飲み物はビールと日本酒。