劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

映画「マネーモンスター」

2020-03-31 10:46:22 | 映画
衛星放送の録画で2016年のアメリカ映画「マネーモンスター」を観る。ジョディ・フォスターが監督をしているので、どんな映画かと思ってみたわけだ。ジョディ・フォスターは昔見た「タクシー・ドライバー」や「ダウンタウン物語」で達者な子役だなあと思っていたのだが、その後大人になって「羊たちの沈黙」のような面白い映画に出ていて、自分で台本を読み選んでいるという噂を聞いたので、監督をしても面白い作品を作るかも知れないと考えたわけだ。

結論から言うとつまらない映画だった。内容はテレビ局で株式の情報を開設する番組「マネーモンスター」をやっているキャスターが、以前推奨した銘柄が暴落したため、なけなしの財産を投資した貧乏青年の恨みを買い、その青年が武装してテレビ局に乗り込み番組をハイジャックするという展開になる。結局、銘柄が暴落したのは、当会社の社長が不正に株価を操作して、自分の私腹を肥やそうとしていたことが明らかとなるという話。

映画の作り方としては、未熟というか平凡だし、台本が全く面白くないと感じた。ジョディ・フォスターは、なんとなくインテリっぽくて、もっと知的な映画を作りそうな気がしていたのだが、まったくの期待外れだった。

秋山公良の「よくわかる音楽理論の教科書」

2020-03-29 10:43:55 | 読書
コロナ騒動でいろいろな公演が中止になってしまったので、この機会に普段は読まないような本を読む。和声理論が良くわからなかったので、何冊か読んでみたが、どれも帯に短したすきに長しという印象で、わかりにくかった。和声の本が沢山出ているの決定的にわかりやすい本がないからだと気が付いた。

もちろん、音楽大学で専門家が学ぶような本はあるのだが、専門家になるわけではないので、一通りの考え方や概念がわかればよいと思ったのだが、どれを読んでもわかりにくい。その中で、一番わかりやすいと思ったのがこの本だった。

もちろん専門家向けの本ではないが、一通りの考え方はよくわかる。しかし、楽典が一通りわかっていない人が読んでも、難しすぎるだろうし、本格的な勉強をしたい人にとっては物足りないだろうし、誰が読むかによって評価は大きく変わると思うが、まあ、少しはわかるという素人にはちょうどよかった。

この本では、音階の話から始まって、和音の表記方法、対位法での協和音の考え方、クラシック系の機能和声の話、ジャズでのコード進行、ブルースの影響を受けたロックの和音進行、そしてジャズでの即興演奏の必要性から生じたモード奏法などについても、なぜそれが発生したががわかりやすく書かれている。

和声学の本を読むと、原則よりも先に禁止事項ばかり出てきてうんざりするのだが、和声の話の前に対位法の説明があるので、その禁止事項の理由が腑に落ちてわかりやすい。僕は自分で作曲や編曲をするわけではないので、この程度分かればいいやという気がした。

和音というのは実際に聞いてみないとイメージが湧かないので、真剣に読もうと思ったら、ピアノの前に座って、譜例を弾きながら読む必要があるので時間がかかるが、この本にはCDがついているので、PCに落として再生しながら読んだら便利だった。簡単に全体像を把握したいという人には良い本だと思う。

今年のトニー賞は延期

2020-03-26 05:44:40 | ミュージカル
このところトニー賞は、6月の第1週の日曜日の夜に授賞式が開催されてきたので、今年も6月7日に予定されていたが、ブロードウェイの劇場街が3月12日から閉鎖されたことを踏まえて、延期されるという。いつまで延期されるかは、未定としている。候補作品が発表されるのは5月上旬なので、3月から4月にかけて新作の公開が多く予定されていたが、それらが皆、オープンできずにいるため、延期せざるを得ないようだ。

現在のところ、ブロードウェイの劇場街の閉鎖は1か月間で、4月の中旬には再開されるかも知れないが、ニューヨーク州が全米で一番感染者数が多いため、どうなるかわからない。クオモ州知事の話によると、増加の勢いは収まる傾向が見えたとしている。

休業中の出演者や劇場スタッフの生活を支えるために、製作者は休業中も賃金の一部を支払うことに同意したとも報道されている。一方、ブロードウェイには舞台衣装専門の洗濯屋というのもあり、毎日の公演終了後に回収して選択サービスを行っているが、売り上げが8割ぐらい落ち込んで大変だと報道されている。

日本でも、各種の公演を支えている音楽家や俳優、劇場スタッフの生活は大丈夫なのだろうか。企業に勤めている人は、政府の補助金を企業が受け取り、それを何らかの形で支払うからまだ何とかなるが、フリーランスの人や、個人事業主は誰が支援の手を差し伸べるのか、ちょっと心配になって来た。

N響メンバーによる室内楽「ベートーヴェン生誕250年によせて」

2020-03-25 15:27:16 | 音楽
3月24日(火)の夜に、東京文化会館小ホールでN響メンバーによる室内楽を聴く。東京・春・音楽祭のプログラム。このところ、予定していたコンサートがほとんどキャンセルになってしまったので、実施されるコンサートを探したらこれがあったので、聴きに行った。インターネットでチケットを購入した時には9割以上売れている感じだったが、コロナ騒動のために行かない人には返金をするとなっていたので、実際の聴衆は4~5割しかいなかった。19時開演で、20分間の休憩を挟み終演は20時50分過ぎだった。

インターネットで購入すると、二次元バーコードが送られてくるので、それをプリントアウトして持っていくと、入場窓口でバーコードの読み取り機があり、それにかざすと、感熱プリンタから「入場控え」という座席番号を記した紙が打ち出されるので、それが入場券替わり。いわゆる「入場券」というものはないようだ。コンビニ発券のように、手間暇とお金がかからないので良い方法だと思うが、二次元バーコード付きの記名済み入場券をPDFで送り、それを自宅でプリントし(あるいはスマホに入れて)、劇場の入り口でポータブルの読み取り機でスキャンすれば事足りるのではないかと思う。

紙のチケットを持ってきた人は、チケットを入場時に係員に見せてから、自分で半券を切り取って、箱の中に入れることを求められていた。係員はマスクだけでなく手袋も着用して、極力接触をなくそうとしていて、考え方はわかるが、それならば早く非接触の二次元バーコード読み取り機を入れたほうが良いのではと考える。

換気が大切ということで、ロビーの扉は開け放されていたので、昨日の夜の冷たい外気が入って来ていたが、それを上回る暖房がガンガンに入っていたので、演奏中は暑くて上着を脱ぐ羽目となった。

さて、肝心も演目だが、前半がピアノトリオの小品、そしてヴィオラとチェロの二重奏となっていたがこれはヴィオラとコントラバスが演奏した。前半の終わりはピアノと管楽器の5重奏曲で、ピアノのほかは、クラリネット、ファゴット、オーボエ、ホルンという珍しい構成。さすがにN響メンバーというだけあって、どのパートも安定した音を聞かせてくれた。ピアノ3重奏や5重奏は、聴いているとピアノの音が目立ちすぎるように感じなくもないが、現代のピアノはベートーヴェンの時代に比べるとずいぶんと進歩して、大きな音が出るようになったのかなあと思いながら聞く。

後半は7重奏曲ということで、ピアノはなしで、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネットという構成。同じ楽器はなくて全部違う音色なので、一人ひとりの演奏者の音がストレートによくわかり楽しめる。それぞれに見せ場があるし、ヴァイオリンも管の伴奏に回ったりして面白い。これだけ楽器が揃うとまるでオーケストラのように豊かな響きになるが、オケのような大音響の迫力ではなく、室内楽としての静かな響きが楽しめる。

コロナ騒動のように世の中が落ち着かない時には、こうした心落ち着く音楽も良いなあと、改めて感じた。家に帰って食事。作っておいたアラブ風の炊き込みご飯を温めて食べる。赤のボルドー。

東京バレエ団の「ラ・シルフィード」

2020-03-22 10:42:29 | バレエ
3月21日(土)の昼に、東京文化会館で東京バレエ団の「ラ・シルフィード」を観る。午後2時開演で、25分間の休憩を挟み、終演は4時35分頃。新型コロナウィルスの影響で、3月に行く予定だった12公演がキャンセルとなり、何も見れずにストレスがたまっていたが、ほぼ1か月ぶりにバレエを観ることができてありがたかった。やはり、来なかった人もいたのか、会場は7~8割の入りだった。

東京バレエ団からは、マスクをしてくるように連絡があり、入り口にサーモグラフィを設置して熱のある人がいないかどうかをチェックし、マスクをしていない人にはマスクを配っていた。今やマスクは貴重品なので、貰いたいと思ったが、配るのはマスクのない人だけだったようだ。そのほか、換気が大事だということで、ロビーの扉は開け放して、送風機で空気を入れ替えていた。昨日は暖かかったので問題なかったが、寒い日にはちょっと大変かも知れない。

「ラ・シルフィード」は21日と22日の二回公演で、21日は沖香菜子、22日は川島麻実子が踊る。開演前に鈴木晶の解説があり、この作品と「ジゼル」がロマンチック・バレエの発祥だというような解説をしていた。聞き役がおらずに一人で話すのだからちょっとやりにくそうだが、さすが元大学教授なので、よどみなく20分ほど解説していた。オーケストラは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団で、当初の予定では海外から指揮者が来る予定になっていたが、世界的パンデミックで来日できなくなり、代わって日本人の井田勝大が振った。どこかで見た顔だと思ったら、Kバレエなどで指揮しているようで、バレエの指揮に慣れていた感じがした。

さて、「レ・シルフィード」は妖精に恋してしまう話なので、1幕は現世を描き、2幕は森の中の妖精たちの世界でバレエ・ブランシュになるというジゼルと同じ構成だ。ジゼルよりも古いので、おそらくはロマンチック・バレエとして観ることができるものの中で一番古いものだろう。鈴木氏の解説によると、19世紀前半には盛んに上演されたが、1860年以降は上演されなくなったので、昔の振付は伝わっておらずに、今回の公演は昔の絵などを参考にしてピエール・ラコットが近年新たに再現したものだという。デンマークにはブルノンビル版も残っているが、これはオリジナルと音楽が違っているそうだ。

確かに、見ていると足さばきを見せるような踊りが中心で、ところどころに出てくるポーズなどは絵でよく見かける物だったので、うまく再現したなあと感心した。シルフィード役の沖香菜子は、重力を全く感じさせないように、ふんわりと踊って見せ、軽やかな踊りだった。シルフィードというのはもともと風の精シルフの女性形だから、フンワカしていることが大事なのだろう。

相手役のジェイムスを踊ったのは秋元庸臣で、ジャンプも高く、アントルシャの足さばきも見事で素晴らしかった。特に2幕でアントルシャを連続で見せるところは見事で、客席からも拍手が起こっていた。妖精たちは20人+3人のコールドバレエだが、複雑なフォーメーションを乱れずに踊り、このバレエ団は水準が高いなあと、いまさらながら感心した。

本当に久しぶりにバレエ公演を観ることができ、それも面白かったので、大満足した。帰りに上野公演の桜通りを通ったら、シートを広げた大宴会こそないものの、2~3人の花見は結構いて、通りは結構混雑していた。花はまだ3分咲きといった感じだが、公園の入り口のところにある大きな枝垂桜はほぼ満開で美しかった。

帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャや生ハム、魚介のトマト煮込みなどを食べる。