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太陽劇団の「金夢島」

2023-10-25 15:18:08 | 演劇
10月24日(火)の夜に池袋の東京芸術劇場プレイハウスで、太陽劇団の「金夢島」を見る。午後6時開演で、15分の休憩を挟み、終演は9時半ごろ。ほぼ満席で、演劇関係者ばかりという印象。太陽劇団はフランスで1960年代から活躍する劇団で、世界的な注目を浴びているが、今回は22年ぶりの訪日公演。前回は新国立中劇場で「堤防の上の鼓手」を上演した。主宰しているムヌーシュキンがもう80歳を超えているので、今回の来日が最後ではないかと思い、見納めのつもりで見に行った。

太陽劇団の作劇法は、世界の各地を訪問してその地の芸能を取り入れた作品を作ることで知られており、前回の「堤防の上の鼓手」では文楽の技法を取り入れていた。今回も日本をテーマとして日本の仕舞などを取り入れた舞台となっている。

フランスの高齢の女性が、病を患い自分が日本にいると思い込んで日本の夢を見る。日本の金夢島では、女性市長が世界各国から劇団を招いて演劇祭を開催しようと準備しているが、予算の確保に苦労している。そこへフランス人やブラジル人の大金持ちが現れて、スポンサーになりたいと持ち掛けるが、実は彼らは港を埋め立ててリゾート付きのカジノを建設しようとしている開発業者の手先であり、自然を守ることや漁業者の生活には関心がない。

演劇祭のために、世界各国から一風変わった人々が集まり、アラブとイスラエル、香港や中国、コロナ、アフガニスタンの問題などが取り上げられるが、最も鋭い矛先は中国に向けられていた。いろいろと世界の課題が提示されるが、問題の根本はバベルの塔で世界の言語が多くに分かれたために意思疎通が難しくなったと暗示され、希望を失わずに、明日に希望を持とうという形で締めくくられる。最後の場面は、出演者全員が、ヴェラ・リンの歌う「いつかまたどこかで会いましょう」という歌に乗せて、仕舞を舞いながら終わる。

ヴェラ・リンの歌う「いつかまたどこかでお会いしましょう」という曲は、スタンリー・キューブリックの映画「博士の異常な愛情」の最後で、原爆が次々と爆発する場面の背景に流れた曲として有名。もともとは第二次世界中の1943年に作られた英国映画「また逢いましょう」の曲だが、1939年に大ヒットしたもの。第二次大戦に出征した兵士たちが愛唱したという。今回の舞台ではヴェラ・リンの歌の後に男性コーラスが流れたので、恐らくは映画のサウンドトラックからとられた録音ではないかという気がした。

日本をテーマにしたとの話だが、本当のテーマは世界の分断と、いつかまた逢いましょうと言う希望だったような気がした。演劇祭の劇団の演技がたくさん詰め込まれたので、全体的に整理が悪く、統一された物語がないので、面白みを欠くが、舞台の作りは60年代末から70年代の前衛劇の熱気を持ち続けており、いかにも太陽劇団らしい面白さがあった。

帰りにスパイス料理屋で軽い食事。スペインのテンプラニーニョを飲みながら、ニンニクポテトサラダ。チョリソーときのこの炒め物、鶏肉と野菜のガラムマサラ炒めなど。

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