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オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立バレエ団の良さが出た「くるみ割り人形」

2017-11-05 07:13:05 | バレエ
11月4日のマチネーで、新国立のバレエ「くるみ割り人形」を観る。今シーズンの幕開きで、新製作。普通はクリスマス・シーズンの上演が多いが、新国立20周年記念の新製作なので、少し早いクリスマス気分を味わった。振り付けはベテランのウェイン・イーグリング。イーグリングは、新国立の「眠れる森の美女」も振り付けている。「眠れる森の美女」がプティパに基づいていたので、「くるみ割り人形」も、プティパ・ベースかと思って、それほど期待せずに見に行ったのだが、新鮮な振付演出で良い意味で驚かされた。

特筆すべきは一幕の素晴らしさで、今までもいろいろな「くるみ割り人形」を観たが、その中でも一番良い出来だった。物語バレエとして大変わかりやすくなっている。クララの寝室から始まり、クリスマスのパーティーが午後九時から始まる。子供たちへのプレゼントを渡すときにはロシア正教の司教のような人物が現れるが、これは聖ニコラスでサンタクロースのモデルとなった聖人。子供たちのダンス、大人たちのダンスがあり、午後12時になり、クララは寝室に戻ってベッドに入る。

ここからが夢の場面になり、それまではずっと降りていた紗幕が上がり、夢の場面となる。夢の場面からはクララも大人になる。僕の観た回は新鋭の木村優里。細く、背が高く、小さな丸顔で、軽やかにチャーミング。ねずみたちとの戦いがあるが、これはねずみ軍団が勝つ。ねずみから逃げてクララとくるみ割り人形は森の中へ。森の中では雪の結晶たちがロマンチック・チュチュで踊る。ここがコールド・バレエの見せ場となっている。ドロッセルマイヤーに助けられて、くるみ割り人形とクララは気球に乗って逃げる。

二幕は夢の中の王宮のような場所、追ってきたねずみの王様をくるみ割り人形が撃退し、王子となる。そこからがディヴェルティスマンで、スペイン、アラブ、中国、ロシア、蝶、花などが続く。最後はクララと皇子のグラン・パ・ド・ドゥで締めくくる。最後は再び紗幕が下りてクララの寝室となり、夢であったことがわかる。二幕では葦笛の踊りもなく、他の踊りに転用。

二幕のディヴェルティスマンは、凝ってはいるが面白みのない箇所もあったが、最後のパ・ド・ドゥは中々素敵だった。「くるみ割り人形」を観ると、いつも二幕だけでよいかなと思うのだが、このプロダクションは一幕が断然よくて、退屈しない。新国立はプリンシパルやソロのダンサーも層が厚いが、何といってもコールド・バレエは揃っていて、素敵だ。その特徴を活かして、一幕にも二幕にもコールド・バレエの場面が入っているのが良い。

物語もすっきりしているし、装置や衣装も良い。これぞバレエの楽しさというプロダクションで堪能した。

オケは東京フィルで、指揮はアレクセイ・バクラン。7回公演で、小野絢子が2回、米沢唯が3回、池田理紗子と木村優里が1回づつ踊る。僕の観た木村優里の回は満席だった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
くるみ割り人形 (dezire)
2017-11-08 11:25:31
こんにちは、
私も新国立劇場でバレエ「くるみ割り人形」を鑑賞してきましたの、ブログを読ませていただき、大変共感しました。改めてバレエ「くるみ割り人形」の美しい舞台を再体験することができました、今回の舞台では、クララと金平糖の精をプリマ・バレリーナ小野絢子さんが一人で踊ったため、小野絢子さんのいろいろな表現を楽しむことができよかったと思いました。主役の二人はもちろんですが、スペインの踊り、アラビアの踊り、花のワルツの踊り、中国の踊り、ロシアの踊りなどのソリストの踊りよかったと思いました、それに加えて真白な衣装を女性バレリーナの踊る「雪片のワルツ」、「花のワルツ」の群舞はため息が出るほど美しく、新国立劇場バレエ団の全体的な水準の高さが生かされた舞台だと感じます。

私もバレエ「くるみ割り人形」を鑑賞した体験をチャイコフスキーの音楽のすばらしさも含めて、レポートしたてみました、読んでいただけると嬉しいです。ご感想・ご意見などをブログにコメントいただけると感謝します。

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re:くるみ割り人形 (dezire) (francescouno)
2017-11-08 16:37:53
コメントをありがとうございます。ブログも拝見しました。

イーリングについては好き嫌いが分かれるのかも知れませんが、今回の公演は大変わかりやすくて、良かったと思います。

新国立のコールド・バレエも大好きなので、群舞がふんだんに入っているのも良いと思いました。
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