レスリー・オーリーの「世界オペラ史」を読む。原題は「コンサイス・ヒストリー・オブ・オペラ」で、「世界」とは書いてないが、読んでみるとイタリア、ドイツに偏らず、フランス、その他の国もバランスよく書いてあり、「世界」としたくなる気持ちも分かった。原著は1972年の出版で、1987年に改訂増補版が出ているので、若干古いと言えば古いが、オペラのメインの作品は20世紀初頭で終わっているので、今でもまったく問題がない。
オペラの発展は、時代と国、言語、使われた音楽、形式、演出、美術、社会との関係など、多くの切り口を持つので、一冊に歴史をまとめようとしてもなかなか一本線で書けずに、判りにくいし、バランスを欠く記述となることが多いが、この本はまことに「簡潔」に大事なところを押さえて書かれている。
有難いのは、大作曲家のいわゆる芸術的と言われているオペラだけでなく、民衆に支持された歌入り芝居のようなヴォードヴィルやバラッド・オペラ、スペインのサルスエラのような作品も対象に含めており、簡単ながらアメリカのミュージカルについても述べられている点だ。これは、一般的なオペラの歴史書では少数派だろう。
レスリー・オーリーはイギリス人なので、イギリスのオペラについても詳しい。イギリスはオペラ不毛地帯かと思っていたが、本書を読んでみるとイギリス人の作者が少なかっただけで、上演は結構盛んだったことがわかる。
約500ページある大部で図版も多く、判りやすいが、問題がないわけではない。編集が良くないのだ。目次が最初と巻末の両方にあり、それぞれ25ページと30ページという、目次としてはあまりにも長大なものがついている。また、題名の誤植なども散見されるし、ミュージカルの題名については誤訳(ソンドハイムの「カンパニー」は「仲間たち」という意味だが「会社」となっているなど)もある。それでも、原題がちゃんと併記されているので、読むのに支障はない。
翻訳は加納泰で、出版社は東京音楽社。せっかくの名著なので、洗練された編集で出し直してくれるとありがたい。
オペラの発展は、時代と国、言語、使われた音楽、形式、演出、美術、社会との関係など、多くの切り口を持つので、一冊に歴史をまとめようとしてもなかなか一本線で書けずに、判りにくいし、バランスを欠く記述となることが多いが、この本はまことに「簡潔」に大事なところを押さえて書かれている。
有難いのは、大作曲家のいわゆる芸術的と言われているオペラだけでなく、民衆に支持された歌入り芝居のようなヴォードヴィルやバラッド・オペラ、スペインのサルスエラのような作品も対象に含めており、簡単ながらアメリカのミュージカルについても述べられている点だ。これは、一般的なオペラの歴史書では少数派だろう。
レスリー・オーリーはイギリス人なので、イギリスのオペラについても詳しい。イギリスはオペラ不毛地帯かと思っていたが、本書を読んでみるとイギリス人の作者が少なかっただけで、上演は結構盛んだったことがわかる。
約500ページある大部で図版も多く、判りやすいが、問題がないわけではない。編集が良くないのだ。目次が最初と巻末の両方にあり、それぞれ25ページと30ページという、目次としてはあまりにも長大なものがついている。また、題名の誤植なども散見されるし、ミュージカルの題名については誤訳(ソンドハイムの「カンパニー」は「仲間たち」という意味だが「会社」となっているなど)もある。それでも、原題がちゃんと併記されているので、読むのに支障はない。
翻訳は加納泰で、出版社は東京音楽社。せっかくの名著なので、洗練された編集で出し直してくれるとありがたい。