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トニー・クシュナーの「エンジェルス・イン・アメリカ」

2023-05-12 15:26:09 | 演劇
5月11日(木)の昼夜と、新国立小劇場で「エンジェルス・イン・アメリカ」を見る。昼、夜とも9割程度の入り。長い芝居で、昼の1部は3時間半、夜の2部は4時間で、合計7時間半という丸本歌舞伎の通し上演並みの長さ。30役以上あるが、すべて8人で演じているので、ほとんどの俳優が出ずっぱりに近く、演じるほうも体力勝負だが、見るほうも体力勝負。別の日に分けて見ようか、連続してみようかと迷ったが、頑張って連続して昼夜と見た。昼の12時から始まり、途中の休憩などもあるので、終演は21時30分だった。

長い芝居なので、退屈する箇所もあるかと思ったが、そんなことはなく、面白くて引き込まれるように見た。1990年代初頭の演劇で、当時ニューヨークでの関心事である、エイズの話が主題。男性の登場人物はほとんどがゲイで、エイズに対して恐怖を抱き、病気にかかっても受け入れられずに苦しんだりする。そうした中で、「アメリカの天使」が登場して、人々の苦しみを終わらせるために、「死」を受け入れるように説くが、自分として生きる道を選ぼうとする若者は、天使の申し出を拒否して、生き延びる。それに加えて、黒人やユダヤ人への人種差別問題、共産党や共和党に対する嫌悪、モルモン教徒の生き方や千年王国への期待、ソ連の終焉などの話が入り、かなり複雑な物語展開で、それぞれの人の見る幻想や現実が入り混じるが、重たくなりがちなテーマを見事に整理して見せてくれる。

さすがに、トニー賞だけでなくピューリッツァー賞も受賞した芝居だけのことはあると感心したが、これを見事に翻訳、上演したスタッフや出演者に感謝したい。プログラムには詳細な説明も付いていたが、90年当時だけでなく、第二次世界大戦後の米国が抱えていたテーマや、当時の流行した芝居、有名人などの話が容赦なく台詞で出てくるので、まったく予備知識なしだと、面白さが十分に伝わらないかもという気もした。

以前にテレビで短縮版がドラマ化されて放映されたが、やはり生の演劇で見て面白かった。トニー・クシュナーは、最近再映画化された「ウエスト・サイド・ストーリー」の脚本でも、うまく書くと感心したが、やはり、力量のある脚本家だと思った。

疲れ果てて、家に帰り、白ワインとチーズで軽い夕食代わりにして寝た。

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