劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

サントリー・ホールのN響定期

2022-06-23 11:00:21 | 音楽
6月22日(水)の夜に、サントリー・ホールでN響の定期公演を聴く。鈴木優人の指揮で、バッハの「パッサカリアとフーガ」、ブリテンの「ヴァイオリン協奏曲」、後半はモーツアルトの「ジュピター」。8割程度の入り。

バッハの「パッサカリアとフーガ」は、原曲はオルガンだが、オーケストラ編曲版になっている。その分音色は変化に富んでいるが、バッハらしい響きは少し欠けたような気もした。最近はピリオド楽器を使った演奏も多いので、現代楽器で演奏すると、どうしてもそうした感じを受けるのだろうと思った。

バッハの後に、突然現代的な響きのブリテンの作品。ヴァイオリンの独奏は郷古廉で、初めて聞いたが、多彩な音色でブリテンを弾き魅惑した。ヴァイオリンは今までにもいろいろと聞いてきたが、こんなにも多様な響きを聴かせることができるのかと改めて認識。郷古の演奏と、鈴木の指揮がよく合い、面白かった。郷古はアンコールで、二声の曲を弾いたが、重音が続く中で二つの旋律が見事に浮き上がって、すごいものだと感心した。

ブリテンの曲で少し緊張したが、後半のモーツアルトのジュピターは、心地よく聞けた。席が前の方だったこともあり、ヴァイオリンの響きがよく聞こえて、こんな風に弾いているのかと、曲を楽しんだ。

帰りがけに、いつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、砂肝のアヒージョ、鶏もも肉のアーモンドと卵ソースなど。

2022年のトニー賞

2022-06-14 17:40:09 | ミュージカル
6月13日(月)に衛星放送で放送されたトニー賞の授賞式を見る。トニー賞は2020年3月にコロナによりブロードウェイが閉鎖されたため、2020年6月に開催されず、1年半閉鎖された後、2021年秋にブロードウェイ再開を記念して開催されたが、かなり変則的な形だった。今回は、コロナ以前に幕を開けた作品も含めて、再開後の作品もあり、候補作品も多く並んで、すっかり以前の雰囲気に戻った印象。ブロードウェイの劇場では、5月から陰性証明やワクチン接種照明を求めなくなったが、まだマスクは必要だという。

ミュージカルの作品賞は、ミュージカルを書こうとしている同性愛で太った黒人がコンプレックスと闘いながら、自分の思考を擬人化して描く「不思議の環」がとった。これは、以前オフで上演しており、オフ作品としてピューリツァー賞をとったことを考えると妥当な受賞。「不思議の環」とは、「クレタ人は皆噓つきだとクレタ人が言った」式の、矛盾して元に戻ってしまうようなループのこと。本人の思考ループを比喩的に題名にしたのだろう。再演賞は「カンパニー」がとったが、偉大な貢献をしたソンドハイムが亡くなったことと、主役ボビーを男性から女性に代えて上演したのが秀逸だから、これも妥当だろう。ソンドハイムのトリビュートもあり、バーナデット・ピータースが歌った。

演劇部門は、リーマン・ブラザースの破綻までを描いた「リーマン三部作」が受賞したが、重厚で面白そうだった。

ミュージカルの台本は、「不思議の環」なので、これも妥当だが、楽曲賞が「シックス」なのは意外だった。どうもこうした現代的な作品は苦手だが、「シックス」は衣装デザイン賞も取ったのでびっくりした。もう一つ意外だったのは、ミュージカルの主演男優賞で、「MJ」がとった。これはマイケル・ジャクソンの伝記的な作品で、彼の歌や踊りの有名場面を再現した作品。単にマイケル・ジャクソンの物まねがうまいだけで、主演男優賞を出すのかと驚いた。

ちょっと残念だったのは、ボブ・ディランの曲を使った「北国の娘」が編曲賞しか取らなかったこと。台本が良くかけていて芝居が面白いだけに残念だった。

まあ、ブロードウェイも元気を取り戻しつつあるなあと実感した。

夕飯は和食。小松菜のお浸し、山芋の拍子切り、アジのたたき、アジの酢締め、新生姜の炊き込みご飯などを作る。お酒は大吟醸。

牧阿佐美バレエ団「ノートルダム・ド・パリ」

2022-06-13 17:17:38 | バレエ
6月12日(日)の昼に東京文化会館で牧阿佐美バレエ団の「ノートルダム・ド・パリ」を見る。2時開演で、20分の休憩を挟み、終演は4時10分ごろ。9割以上の入りで、ほとんど空席はなかった。以前からこの演目はレパートリーになっているようだが、見るのは初めて。ローラン・プティの振付で、モーリス・ジャール音楽、イヴ=サン・ローランの衣装というので、結構期待した。

今回の公演は2年前に予定していたが、コロナで中止になったというので、そのリベンジらしい。2回公演で、土曜日は日本人キャストだが、日曜日は外国からのゲストダンサーが踊った。主役のカジモドは、パリオペのエトワールであるステファン・ビュリオン、エスメラルダはローマ歌劇場のエトワールであるスザンナ・サルヴィ、フェビュスは、アスタナ・バレエのプリンシパルのアルマン・ウラーゾフ、フロロはモンゴル・バレエ出身で牧阿佐美バレエ団に入っているラグワスレン・オトゴンニャム。主役の4人はみな安定していて、見事な踊りだった。

ダンサーが揃っていたこともあり、見応えのある舞台で面白かった。この題材を扱った作品には「エスメラルダ」もあるが、ローラン・プティの方は原作により忠実な舞台で、エスメラルダと3人の男性の関係が良く描かれていた。1幕は約1時間で、道化の王を選ぶ民衆の群舞などがあり、フェビュスとエスメラルダのパ・ド・ドゥがある。2幕は30分の短いが、カジモドとエスメラルダ、フロロとエスメラルダのパ・ド・ドゥが入っていて、見どころが多い。プティの振付は、音楽に合わせて群舞の身振りで見せるなど、飽きさせない。

サンローランの衣装も印象的で、最初は原色を組み合わせたサンローランらしい大胆な衣装で始まり、最後は黒い沈んだ衣装で終わった。モーリス・ジャールの音楽は、打楽器が10人近くいるリズム感の強い音楽で、1幕でエスメラルダが踊るジプシーの踊りは、タンバリンが効果的に使われていた。オーケストラはMIRAIで、指揮はベテランのデイヴィッド・ガルフォース。

舞台も良かったが、色刷りの冊子が無料で配られて、立派なことだと感心した。素晴らしいことだが、背景黒で文字は白という、劇場内の照明ではえらく読みにくい編集の上、文字も小さく、横組みで1行が70文字ぐらいあるような読みにくいレイアウト。せめて、白地に黒文字で、2段組みにしたらすっと読みやすいのにと思った。

しかし、舞台の出来もよく、大満足して帰る。帰りに買い物して、家で食事。カプレーゼを前菜に、タイの頭をローストして、レモンとオリーブオイルでイタリア風に食べた。カヴァをごくごくと飲んだら開いてしまったので、シチリア産の白ワインを開けたら、これがえらくおいしくて、チーズを食べながら飲んだので、飲み過ぎて反省をした。

日生オペラ「セビリアの理髪師」

2022-06-12 10:46:28 | オペラ
6月11日(土)の昼に、日生劇場でロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」を見る。2時開演で、20分の休憩があり、終演は5時25分頃だった。オケは沼尻竜典指揮で、東京交響楽団。客席は8~9割の入りだった。

演出が粟國淳なので期待したが、今回は不調で意味不明の演出だった。最初から幕は上がっていて、昔の芝居小屋の舞台のような設定となっている。劇中劇として展開させるのかなと思っていたら、特にそうでもなく、回り舞台を回しながら舞台の前面と後ろに切り替えるが、それが家の中になったり、外になったりで、いったい今は何処の場面なのだかさっぱりわからない。何度も見た演目なので、話しや場面を覚えているからよいようなものの、初めて見る人には極めて不親切。また、こうした演出にしたからといって、面白くもなんともない。

歌手陣は、おおむね女性陣が良いが男性陣は弱い。アルマヴィーヴァ伯爵役の中井亮一は、声はきれいでゆっくとした曲ならばよいが、ロッシーニ得意の早いテンポで刻んだ歌になると、ボロボロになってしまう。フィガロ役の須藤慎吾も、やはり早口の歌はダメで、レチタティーヴォになるとディクションの悪さも気になった。やはり、こうしたロッシーニの曲は、アジリタをきちんと歌える歌手がいないと上演が難しい気がする。日本ではこうした分野が歌える歌手がどのくらいいるのか、ちょっと不安になった。

オペラとしては不作だったが、見ていてこの作品の登場人物は、イタリアの古い仮面劇コメディア・デッラルテのキャラクターをそのまま使っているような気がした。パンタローネ、ドットーレ、アレルッキーノ、コロンビーナが脇を固めて、インナモラーティの話が展開する。そうしたことを強調した演出があっても良いような気がした。

ソロ歌手は普通に歌うが、合唱団は全員マスク姿なのも、もうそろそろ止めてよいのではないか。合唱隊だけマスクすることに、いったいどんな意味があるのかわからない。

帰りがけに、スーパーに寄って買い物し、サルティンボッカを作って食べる。マルサラ酒が切れていたので、赤ワインと蜂蜜で代用したが、全く問題なかった。おいしい料理なのに、日本のレストランでは出すところが少ないのはもったいない気がする。飲み物はイタリアの赤。

日独楽友協会演奏会

2022-06-11 10:14:28 | 音楽
6月10日(金)の夜に、杉並公会堂で日独楽友協会のシンフォニッシェ・アカデミー演奏会を聴く。荻窪はあまり行かない場所だが、杉並公会堂はなかなかよいホールだという気がする。この手の公会堂は、音楽だけでなく、演劇でも映画でも、何でもできる多目的に設計されることが多いので、残響設計も中途半端で、何に使っても「帯に短したすきに長し」という感じとなるが、杉並公会堂は音楽ホールに特化しているので、すがすがしい気がする。難を言えば、ロビーが狭いことと、休憩時間中に飲み物のサービスもないことか。それに、「杉並公会堂」のロゴがしゃれている。1920~30年代に流行ったアール・デコ風のデザインの文字で、何となく懐かしさがこみあげてくるモダン感覚。

パンフレットによると、この日独楽友協会は、指揮を担当したすぎやまなおきの創設した団体で、シンフォニッシェ・アカデミーはドイツやオーストリアへの留学経験のある人を中心にしたオーケストラらしい。初めて聞くが、70人ぐらいで3管編成の立派な編成。今回は、これに10人ぐらいトランペット要員が追加されていた。ゲストはヴァイオリンの前田妃奈。

「忘れられた名曲たち」と題したシリーズの1回なので、曲目は初めて聞くものばかりだった。「ファム・ファタル」というテーマで標題音楽的な曲が多く、前半はフーゴー・ヴォルフの交響詩「ペンテジレア」(アマゾネスの話)とリヒャルト・シュトラウスの交響詩「マクベス」(有名な悪妻マクベス夫人の話)。どちらも金管が大きな音で吹きまくる騒々しいほどの曲。15分の休憩を挟んで、後半はスメタナの交響詩「シャールカ」(チェコ建国の強い女たちの話)、続いてヴァイオリンと共演してサラサーテの「カルメン幻想曲」(ビゼーのオペラの編曲版)、最後はヤナーチェクの「シンフォニエッタ」(これはファム・ファタルではなく、ヤナーチェク自身の純愛的な背景の曲らしい)。

前半の圧倒的な金管の音でちょっと疲れたが、後半はチェコのムードに溢れただけでなく、変化のある曲で面白かった。寄せ集めの団員らしく、練習不足が目立つ場面もあったが、ご愛敬。サービス精神旺盛で、アンコールもきっちりと演奏して、終了は9時30分近かった。

最近は、どの店も早く閉まるようになったので、いつものスペイン・バルで軽い食事。ほうれん草とひよこ豆の煮込み、クスクスのサラダ、カツオとパプリカの見込みなどを食べる。