劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立の「コッペリア」

2023-02-25 13:02:23 | バレエ
2月24日(金)の夜に新国立劇場でバレエ「コッペリア」を見る。ほぼ満席で、夜の回だが子供も多かった。23日から26日までで6回の公演。キャストは4組が交替で踊る。木村優里は怪我で休演だが、渡邊峻郁も理由は知らないが休演で福岡雄大が代わって踊ると発表されている。年末年始にあまりに多くの「くるみ」を上演しすぎてダンサーに疲れが出ていないかと心配になってしまう。バレエの公演も連続してやらずに、オペラのように日程をあけてやったらよいという気がする。

「コッペリア」は2年近く前の公演が中止となり、無観客での公演がネット配信された。その時に4人のプリマの踊りをPCで見たが、一番気に入った米沢唯の出る回を見に行った。相手役のフランツは井澤 駿、コッペリウスは山本隆之というキャスト。

ローラン・プティの振付はクラシック・バレエのテクニックを使いながらも、いろいろと工夫された動きがちりばめられていて面白い。物語も明確で、それぞれに見せ場も用意されているが、特にコールドの動きなどは、フランスらしい洒落たムードがあり、とてもおしゃれな作品になっている。

米沢、井澤、山本の踊りはみな素晴らしかったが、久しぶりに新国の舞台に立った山本は、結構な年齢だと思うが切れのある素晴らしい踊りを見せた。特に人形と一緒に踊る場面は、おかしさだけでなく、コッペリウスの感じている寂しさや哀れさがにじみ出ており、作品の味わいを深いものにしていた。

音楽は19世紀に書かれた、レオ・ドリーブのバレエ作品のものを使用しているが、単純ながらリズムがはっきりしていて、楽しく、こういう音楽がバレエ向きだと思わせるものがあった。オーケストラは東京交響楽団で、指揮はマルク・ルロワ=カラタユードという若い人。とても軽快な音楽で、作品を楽しいものにしてくれた。

ローラン・プティはやっぱり面白いなあと感じたので、この作品だけでなく、「こうもり」やほかの作品なども時々上演してほしいという気がする。

帰りにはいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、ポテトサラダ、イワシのエスカベッシェ、イカのプリットスなど。

若手音楽家の発表会

2023-02-24 13:20:53 | 音楽
2月23日(木)の昼に、東京文化会館小ホールで、「4館連携若手アーティスト支援 アフタヌーン・コンサート』を聴く。東京ネットワーク計画の主催で、4館というのは、東京芸術劇場アカデミー、トリトンの第一生命ホールのアウトリーチ修了生、サントリー・ホールのアカデミー、文化会館の東京音コン入賞者、ということらしい。オーケストラはよく聞くが、室内楽系をあまり聞いていない気がして、覗いてみた。9割程度の入りだった。

最初の芸術劇場組は、クラリネットの4重奏。指導者のアレッサンドロ(東京フィル首席)と指導生3人で、バッハから最近のジャズっぽい曲まで4曲を演奏した。アカデミー修了生の発表会というよりも、アレッサンドロ君の発表会みたいだったが、演奏は面白かった。

続いて第一生命ホールのアウトリーチ組、あまり知らなかったが、幼稚園などで生の演奏を聴かせる活動をしているらしい。そのプログラムをそのまま持ち込んだので違和感があったが、ドビッシーの弦楽四重奏曲そのものは美しい。

前半の最後はサントリー・ホールのオペラ・アカデミーのソプラノ二人が3曲を歌った。サントリー・ホールそのものは残響が長いので、オペラにも向かないと思うが、そこでオペラアカデミーがあることを初めて知った。モーツアルトの曲なので、それなりに心地よい。

15分間の休憩の後、サントリー・ホールの室内楽アカデミーのピアノ・トリオによるフォーレのピアノ三重奏曲。今回のプログラムの中では一番聞きごたえがあった。サントリー・ホールの館長である堤剛の指導を受けているためか、チェロがよく響いているように思えた。

最後は東京音楽コンクールの金管入賞5人による、金管5重唱曲。トランペット2本、ホルン、トロンボーン、チューバという構成で、全員男性のグループ。金管なので、音の迫力がある。終演は4時20分頃だった。

帰りにスーパーで買い物して、家で食事。マッシュルームのアヒージョ、ニンジンのスープ、カキフライのタルタルソースかけ、などを作って食べる。飲み物はヴァン・ムスー。

日生劇場の「バンズ・ヴィジット」

2023-02-22 16:01:15 | ミュージカル
2月21日(火)の昼に日生劇場でミュージカル「バンズ・ヴィジット」を見る。平日の昼間なので、入りは7~8割程度。ホリプロの製作で、トニー賞を10部門でとった評価の高い作品だが、アラブ音楽を演奏するハードルも高いので、日本では上演が難しいかなと思っていたが、立派に上演できていた。原題のBand’s Visitをそのままカタカナにしているが、「ズ」が、複数ではなく所有格であることがピンとこないので、何ともわかりにくい題名になった。カタカナ題名を見ると何となく、ハンバーガーの丸パンのことを思い起こしてしまう。原作映画の邦題「迷子の警察音楽隊」の方が、まだわかりやすいと思う。

中東戦争で、エジプトとイスラエルだけが和解した当時、エジプトの警察音楽隊が、イスラエルに行って演奏しようとするが、間違った町に着いてしまい、現地のカフェの女主人に助けられる話。4つぐらいのエピソードを通じて、それぞれの人生の愛のかたちが見えてくる。とても良い話だが、この警察音楽隊が奏でる音楽はアラブの伝統音楽なので、それを出演者が演奏するのがハードルが高い。キーとなるのはウード(アラブ版リュート)とダラブッカ(アラブ太鼓)だが、この楽器の演奏者はアラブ音楽の専門家を見つけてきたので、音楽はきちんとしていた。特にウードの常味氏は、この人しかいないだろうと思わせる専門家だ。

ベースとキーボードは、ブロードウェイではセットの上で演奏していたが、日本では舞台袖のようだった。これは、セットがブロードウェイとはちょっと異なったからだろう。概ねみなよく歌っており、キャラクターも演じていたが、カフェの女主人ディナ役を演じた濱田めぐみはちょっと崩れ過ぎた感じで、もうちょっと品格を保ってほしかった。

最後の恋人からの電話を待つ青年の歌は、この作品のクライマックスだが、オリジナルでは恋人の声を聴きたい気持ちを歌った後に電話がかかって来る設定だったが、日本の舞台ではなぜか、電話がかかってきた後で歌い始めた。これはやはりオリジナルの方が良いのではないかという気がする。

こうした上演の難しい作品が演じられるようになったことに感動した。それにしても、会話の中に出てくるエジプトの歌姫ウーム・クルスームなどの話題は、今の日本人にどれだけ理解されるのか、アラビア語のPの発音がないのでBと発音して、間違った町についてしまうなど、内容的には上演のハードルが高いと思った。


ヤクブ・フルシャ指揮のN響

2023-02-18 14:05:09 | 音楽
2月16日(木)の夜に、サントリーホールでヤクブ・フルシャ指揮のNHK交響楽団を聴く。ほぼ満席だった。曲目は最初にドヴォルザークの「フス教徒」序曲。続いて、ピョートル・アンデルシェフスキのピアノによるシマノフスキの「協奏交響曲」、20分の休憩後にブラームスの交響曲4番。

指揮者のフルシャはチェコの出身で、現在はドイツで活躍中。25年からはロイヤル・オペラの音楽監督になるという人物。まだ若くて精悍な印象で、指揮ぶりも熱がこもっていた。最初のドヴォルザークの「フス教徒」は上演されなかったメロドラマ用の序曲との解説があり、チェコの有名な話を劇的に描いた作品。フルシャの出身国の作品だけに力のこもった演奏。

続くシマノフスキーの「協奏交響曲」は実質的にはピアノ協奏曲。シマノフスキーはポーランドの作曲家で、1932年の作曲となっていたので、ヒットラーが政権奪取する直前で、ポーランドに侵攻7年前の作品。世界的な不況が始まっていたこともあり、何となく不安を抱かせるような曲調だった。ピアノのアンデルシャフスキはポーランド系らしいので、まさに的確な人選。独特のタッチで俊敏に弾くためか、透明感のある美しい音を聞かせたが、何となく不思議な和音に満ちていると感じさせた。

最後のブラームスの交響曲は、指揮者フルシャの得意な曲らしく、暗譜で大胆に指揮をしていた。定番の曲だが、シマノフスキーの後に聴くと何となくほっとして落ちつく。やはり、この時代の音楽は安心して聴ける。

寒い夜だったが、いつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、タコのガルシア風、イワシのエスカベッシェ、塩タラのローマ風フリッタなど。

読響+金川真弓

2023-02-18 11:13:10 | 音楽
2月17日(金)の夜に、サントリーホールで読響のコンサートを聴く。9割以上の入りでほぼ満席。セバスティアン・ヴァイグレの指揮で、ソリストはバイオリンの金川真弓。何となくコンサートが重なり、今週は3回もサントリーホールとなった。

最初にベートーヴェンの「コリオラン」序曲があり、続いて金川の弾くブラームスの「バイオリン協奏曲」、15分の休憩後にシューマンの「交響曲2番」という演目。

ヴァイグレの指揮は、力強く、表情も豊かで聞いていて実に気持ちが良い。指揮ぶりを見ていると、音楽の表情の付け方もよくわかり、音が目に浮かんでくるような気がした。金川のバイオリンは初めて聴いたが、実に説得力のある表現で、今まで聴いたブラームスの協奏曲の中でも最高の出来と感じさせるものがあった。音色も良いが、音の表現も的確で、ぞくぞくとするような感動を味わった。当面、金川の追いかけをしてみようか、という気にもなる。

後半のシューマンの交響曲は初めて聞いた。シューマンといえばピアノ曲というイメージで、どうも単調な気がしてあまり好きではなかったが、交響曲は音色の変化があって面白かった。最初から管楽器がフルに活躍する曲で、弦楽器は伴奏に回る感じ。やはり、オーケストラだとピアノでは表現しきれない音の多さがあり、音色も多様だから、うまく作られた曲はとても面白いと思った。

ヴァイグレは律義で、演奏が終わった後、四方の観客に丁寧にあいさつをしていた。読響のオーボエ奏者がこの演奏会を最後に引退するらしく、花束の贈呈があった。まだ若く見えたが、今後は社会貢献活動をしていくらしい。前日のN響コンサートでも、チェロ奏者の引退があり、花束と日本酒が贈られていた。ちょうど年度末で、楽団員も交代する時期なのだろう。

前日も外食だったので、家にまっすぐ帰って軽い食事。作っておいた餃子を焼いて食べた。飲み物はボルドーの白。