劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

原美術館の「光 - 呼吸」展

2020-11-13 10:14:58 | 美術
11月12日(木)の午後に、高輪台にある原美術館へ行く。来年1月で閉館するというので、閉館の前に見ておこうと考えた。閉館の理由は建物の老朽化で、戦前に建てられた、原氏の私邸を美術館にしたものなので、そろそろ限界だという。現代美術の美術館なので、これまで行かなかったのだが、閉館となると一度は見ておこうという気になった。

高輪台の上にあるので、品川、大崎、五反田のどの駅からも15分ぐらいあるし、おまけに上り坂なので、決心しないと行きにくい場所だ。行きは品川から歩き、帰りは大崎へ抜けた。

現在の展示は、「時をすくう5人」ということで、城戸保の日常のキッチュな風景を撮った写真、佐藤雅晴の自動演奏ピアノと東京の風景をビデオ撮影してその一部だけをアニメ化したビデオ作品。佐藤時啓の光をテーマとした写真、などが展示されていた。

やはり現代アートなので、まあ面白さはあるが、物語が感じられにくいので、ちょっと苦手だ。1時間ほど見て回り、中庭にあるカフェで休憩する。すぐ隣に御殿山ヒルズの高層ビルが建ったので、昔とはちょっと風景が違うような気がした。

久々に大崎駅へ出ると、駅前が再開発されて、昔の大崎駅のイメージとは全く違っていて驚いた。最近は東京中でいろいろと工事が進み、乗換駅なども風景が変わって結構戸惑うことが多い気がする。歳をとったということか。

プラハの市民会館のミュッシャ

2018-06-10 09:44:48 | 美術
プラハの中心部にある、市民会館の中に素晴らしいアルフォンス・ミュッシャの絵が残っているというので、ガイド・ツアーに参加して観てきた。絵だけ見られればそれでよかったのだが、1日に何回かあるガイド・ツアーでないとその部屋に入れないというので、市民会館の中をぐるりと回るツアーに参加したわけだ。最初はコンサート会場となる「スメタナ・ホール」の見学で、それに続いて、いろいろな部屋を案内してくれる。内装はいずれもアール・デコが基調で、たまにアール・ヌーヴォー的な雰囲気も混じるというもの。

第二次世界大戦によるナチスドイツの占拠や、その後の共産党独裁時代の破壊により、オリジナルの物はシャンデリアぐらいしか残らなかったようだが、その後、正確に復元したとのこと。ガイドは英語しかなかったが、日本語の説明書を貸してくれた。

最後の見学が市長室で、そこにアルフォンス・ミュッシャの絵が残されている。ミュッシャの絵というと、サラ・ベルナールの演劇ポスターやたばこ会社やイヴェントのポスターに描かれた可愛い娘が思い浮かぶが、市長室に描かれていたのは、スラブ系の民族を思い起こさせる力強い人物像が多かった。ミュッシャ特有の淡い色調で描かれているが、どの人物の眼にも力強い意志の強さが現れていて、とても印象的で、見にいく価値が十分に感じられた。

描かれた人物を見ていると、なぜか宮崎駿の「風の谷のナウシカ」が思い出された。なんとなく似ているかも知れない。

市民会館の1階には美しいアール・デコ調のインテリアのフレンチ・レストランが入っていたが、プラハでフレンチを食べる必要もないので、地下のアメリカン・バールの隣にある、チェコ風のビール・パブで食事。昼からビールをがんがん飲んでも全く違和感のない街というのはとても良い。ソーセージのビール煮込みなどを食べる。

説明では、女性が男性の同伴なしで行けるバーとして作られたのが、アメリカン・バールの始まりとのこと。元祖、女子飲みか。

草間彌生美術館

2018-04-13 20:23:39 | 美術
4月12日に、新たにオープンした草間彌生美術館を見にいく。週末しかやっていない完全予約制の美術館で、インターネットで予約、決済して、予約時間に行った。二次元バーコードを読み取り、腕にシールを張られて見学となる。

あまり大きくない美術館なので、階段で登りながらみて、エレベーターで降りてくる設計になっている。ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館は、最初にエレベーターで上へ昇って、ぐるぐると回りながら降りる式だったが、どうして、降りる式ではなく登る式なのだろうと思う。

まあ、とにかく昇っていくと2階は1950年代の作品の展示で、草間彌生の初期の作品が展示されている。草間彌生といえば、かぼちゃと水玉みたいなイメージだが、50年代の作品では、それほどそうした形にはなっていない。3階に昇ると、今度は突然に21世紀の最近書かれた作品が展示してあり、水玉というよりも目玉が沢山描かれている。50年代と、21世紀の間の展示はない。

4階は絵画ではなく、光るかぼちゃの展示で、暗い部屋に6人ずつ入り、マジックミラーで四方を囲まれたかぼちゃの立体物が並ぶオブジェをみる。合わせ鏡の仕組みで、どこまでもかぼちゃが続いて見えるので結構面白い。

更に5階まで昇ると、天井のない屋上のような空間に、大きなかぼちゃのオブジェが展示したあった。そこから、エレベータで1階に戻り、売店をチェックして、何も買わずに帰った。まあ、現代美術はそれほど好きな方ではないが、階段を昇っていくときに足元を見ると、階段の構造は壁から薄い板が飛び出ただけで、壁の反対側にはなんの支えもない。高所恐怖症の僕としては、それを見たとたんに、脚がすくんで昇れなくなってしまった。スタイリッシュさを求めて、無理な構造を作るのは良くないと思う。建物もよく見ると、外壁が大きく空いた窓になっていて、構造的に大丈夫なのかと心配になる。開口部を大きく取ったにも関わらず、作品保護のためかブラインドを下ろしているので、一体こんなことをしてどんな意味があるのだろうと疑問に思う。

建物を出ると、ちょうどお昼時になったので、美術館の近くにある蕎麦屋へ行って定食を食べる。昔は「松下」という日本料理の名店があったところだが、現在では息子が店を継いで、蕎麦屋となり店名も変わっているが、きちんとした料理も出しておいしかった。

ミラノの大聖堂を見る

2017-07-15 13:21:34 | 美術
せっかくミラノに来たのだからと、大聖堂を見に行く。以前もミラノに来たのだが、その時は修復中で、正面のファザードが全部隠れていたため、見た気にならなかった。昔見たヴィットリオ・デシーカ監督、脚本ザバッティーニというコンビの映画で「ミラノの奇跡」という作品があり、主人公の青年がミラノの大聖堂の前の広場から空を飛ぶような場面が印象にあったので、何とかその大聖堂を見たいと思っていた。「ミラノの奇跡」は1950年代初めのネオレアリズモの傑作。

大聖堂はドゥオーモと呼ばれて各地にあるが、普通の教会とは異なり、教区を束ねる総本山の教会で、教区をまとめる司教がいるところだ。だから、大聖堂はたいてい大きくて立派な建物だ。英語で言えばカセドラルだろうと思う。

ミラノは昔から経済力がある街だったので、大聖堂も飛び切り大きくて立派だ。14世紀から建築を始めて、完成したのは19世紀末というから建設に500年もかかっている。尖塔が沢山あるゴシック建築で、その堂々たるファザードはパリのノートルダム大寺院よりもずっと素敵な感じがする。近寄るとファザードの装飾だけしか見えないが、離れた場所から見ると100メートルを超える高さの先端に黄金の聖母像が輝いている。僕が行った時も、聖母像は見えたがその周りは未だ修復中だった。修復前は随分と黒ずんでいたが、修復を終えた個所は白い輝きを取り戻していた。

大聖堂に入るには切符が必要で、隣にある切符売り場で買う。混雑を避けるために午前中の早い時間帯に行ったが、結構観光客が列をなしていて、入り口のおじさんから、番号札を渡された。大分待たされるかなと思ったが、自動券売機ならば並ばずに買えるよと教えてくれたので、自動券売機で買う。現金はダメで、クレジット・カードのみ。それは問題ないのだが、カードを入れろと表示されたのに、入れ口がどこにあるかがわからない。仕方がないので磁気ストライプをこすったら、ICチップ付きなので磁気ストライプは使えない様だ。タイムアウトになってしまったので、もう一度やり直して、散々入れ口を探したら、テンキーパッドの下側に入れ口があり、無事決済を済ませることができた。

切符を買ってもすぐには入れずに、入り口で結構並んだ。セキュリティ・チェックが厳しく、一人ひとり金属探知機で調べた後、バッグを持っていると中身を検査する。ペットボトルの水を持っていたら、水だと分かるように、係員の前で飲んで見せろと言われて、その場で一口飲むと、やっとOKが出た。そうした調子だから、午後などは随分と長い行列になっている。

中に入ると、何しろ大きいという印象。これだけ大きな教会は少ないだろう。ニュー・ヨークのセントラル・パーク北にある未完成の大聖堂もかなり大きい印象を持ったが、それ以上かも知れない。内部ではステンドグラスの装飾が見事に輝いていた。一度、教会の外に出て、今度はエレベーターに乗り教会の一番上の屋根の上にあるテラスへ上る。ここからだと、尖塔の上に沢山ついている聖人像を一体一体まで細かく見ることができて、この建物の凄さが良く分かる。

僕は高所恐怖症で、高いところは苦手だが、あまり下を見ないようにして、とにかく一番上のテラスまで行くと、町の風景が一望できる。また、教会の一番上にある黄金のマリア像も近くで見ることができる。この屋上テラスは、何かの映画で出てきたような気がしたが、何という映画なのか、結局思い出せなかった。

屋上からエレベータで再び地上に戻り、隣の附属博物館も見学する。ここにはこれでもかというくらいに、尖塔の先の像やいろいろな宝物類が収められているが、見学者は少なかった。

博物館を見終わるとちょうど昼時になったので、大聖堂そばのレストランで食事する。オッゾ・ブーコとミラノ風のリゾットに赤ワインを頂く。隣のテーブルではイタリア人のおばさんが、骨付きのミラノ風カツレツを食べている。結構な歳なのに、あんなにたくさん食べるのかなあと、見ていたら、視線を感じたおばさんが、これは若い牛の肉を揚げたものですよと、教えてくれた。

ヴェネチアのサン・マルコ寺院を見る

2017-07-14 17:14:32 | 美術
サン・マルコ広場にそびえ立つ、サン・マルコ寺院を見に行く。ここは宝物庫に入らなければ無料で見ることができる。結構太っ腹だ。ちょうど午後だったので、西日が正面のファザードの金色のモザイクを照らし、それだけでもう美しさにしびれてしまう。

上には5個くらいのクーポラがあるが、これがなんとなくイスラム的な形だ。ヴェネチアは最盛期にはコンスタンティノープルを配下に収めていたので、東方美術の影響がある。その時代のキリスト像などを見ても、アーモンド型の目など、いかにもビザンチン風の描き方の作品も多い。そこがこの教会の魅力だろう。

正面ファザードも金のモザイクだが、中に入ると一段と金、金で、壁面や天井部が金色のモザイクで装飾してある。これだけ派手に金で装飾してあるのも珍しい。床もまた豪華な装飾が施されている。

最終的には、ヴェネチアはオスマン・トルコにかなり攻められて衰退化することになるのだが、絶頂期には凄く繁栄したのだろう。その時代の絵を見ると、いろいろな所から様々な人々が集まってきた様子が描かれている。

教会を出て、サン・マルコ広場を見渡すとそこかしこに、ヴェネチアを象徴する有翼の獅子像がある。広場には鳩も多い。そいえばカトリーヌ・ドヌーヴが出た映画でこの広場が出てきたななどと思い出しつつ、海岸に出て少し散歩する。高級ホテルが並ぶ海岸線のところを見ると、なんとなく「ヴェニスに死す」の映画はここらでロケしたのかなと感じた。

暑くて疲れたので、バポレットに乗りサンタ・ルチア駅まで行き、総菜屋で簡単な総菜と良く冷えたプロセッコを買い、宿に戻って軽い食事をした。