劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

読響のロシア・プログラム

2024-09-14 11:13:55 | 音楽
9月13日(金)の夜に、サントリーホールで読響のロシア・プログラムを聴く。7時開演、15分の休憩を挟み、終演は8時45分頃。客席はほぼ埋まっていた。コンサート・シーズンとなったのに、まだ真夏のような暑さが続き、真夏の装いで聴きに行った。

指揮はまだ若いロシア人のマクシム・エメリャニチェフ。トランペット独奏がセルゲイ・ナカリャコフだった。長く読響のコンマスをやっていた長原幸太の退団が発表されていたので、誰がコンマスかなと思っていたら、ゲストの伝田正秀だった。

曲目は最初に、リムスキー=コルサコフの序曲ロシアの復活祭、続いてアルテュニアンのトランペット協奏曲、休憩の後にリムスキー=コルサコフのシェエラザードだった。ロシアの復活祭は初めて聞いたが、リムスキー=コルサコフらしい楽器の音色を楽しむような曲。続くトランペット協奏曲も初めて聞く曲だが、ナカリャコフの吹く音色が素晴らしかった。トランペットの高音をこれほど軽やかに滑らかに吹くのは初めて聞いたような気がする。かなり難しい技巧的な曲だと感じたが、読響のトランペット奏者も食い入るように演奏を見つめていた。柔らかい音色の秘密は楽器にもあるようで、古そうなまったく光っていない楽器を使っていた。何となく1940年代のハリウッド映画の音楽を感じさせる曲調。協奏曲は17分程度で短かったので、アンコールでバッハのG線上のアリアを吹いた。これも少し大型のコルネットのような楽器で吹いたが、実に柔らかい美しい音色だった。

後半のシェエラザードは散々聞いた曲だが、聴く度に新しい発見もあり飽きさせない曲だ。エメリャニチェフは指揮棒を使わずに素手で指揮をしたが、丁寧に各パートに対してキューを出していた。演奏は随分とゆっくりとしたテンポで始まったが、途中で早くなる部分もあり、緩急自在の面白い演奏で、新しいシェエラザードを聴いたと感じた。

ホールの前にあるカラヤン広場で、珍しくイベントが開かれていて、盆踊りの太鼓や屋台の店が出て賑わっていた。帰りがけにビールの一杯でも飲もうかと思ったら、すでに終了していて、東京の夜はなんて早いのだろうと呆れた。あまりに暑いので、スーパーで買い物して帰宅して、家で軽い食事。トマトサラダ、フランス産生ハム、スペイン産チョリソー、ブルーチーズのディップなどをつまみながら、トスカーナ産の赤ワインを飲む。

文京シビックの「夜クラシック」チェロ4重奏

2024-08-24 10:52:04 | 音楽
8月23日(金)の夜に文京シビックでチェロ4重奏を聴く。「夜クラシック」は、文京シビックの室内楽シリーズで、大ホールは大きすぎる印象だが、文京シビックの小ホールでは小さすぎるので、大ホールの1階席だけで運用しているようだ。チケットは完売で満席、年金生活者風が多い。7時開演で、20分の休憩が入り、終演は9時ごろだった。

チェロだけの4重奏というのは珍しい企画で、横坂源、上野通明、水野優也、柴田花音と、若手のチェリストが揃った。チェロの4重奏は初めて聞いたが、2本は高音部でメロディ・ラインを、2本は低音部を受け持つという構成で、ところどころは4本で密集和音的な演奏となる。音域が割と広いチェロという楽器ならではのアンサンブルで、とても落ち着いた美しい響きだった。

前半は、恒例のドビュッシーの「月の光」から始まり、ジョンゲンの二つの小品、フィッツェンハーゲンのコンサートワルツ、デューク・エリントンの曲が続いた。ジョンゲンは現代曲なので心配したが、美しい響きの曲で現代的な響きではあるが、楽しめる作品だった。デューク・エリントンの曲は、バイエルンののチェリストが編曲した作品だが、いかにもジャズ的な響きで、チェロでもこういう曲が弾けるのかと、新しい可能性を感じた。

後半は、最初にバッハの「チャコンヌ」があり、ピアソラ作品、ガーシュウィン作品が演奏された。最後はアンコールが2曲あり、とても楽しいコンサートだった。

チェロの4重奏なので、オリジナルの作品はなく、全部編曲ものだが、編曲により随分とチェロという楽器の個性が出てくる。今回は「月の光」とピアソラの曲、そして恐らくはアンコールのワーグナーの曲を編曲した小林幸太郎のすごい才能を感じた。本人がチェロも弾くので、その特徴を知り尽くしているのだろう。どの曲もこの楽器の魅力を存分に引き出す美しい作品だった。

すっかり良い気分になって、帰りがけにフレンチ・レストランによったが、金曜日の夜なので満席だったため、家に帰って軽い食事。サラダ、スペイン産生ハム、チョリソー、マフィンにオランダ産ゴーダ・チーズをのせて焼いたもの等を作って食べた。飲み物はスプマンテ。

読響の「三大協奏曲」

2024-08-22 13:26:58 | 音楽
8月21日(水)の夜に、東京芸術劇場で読響の「三大協奏曲」を聴く。6時30分開演、15分雄休憩を挟み、終演は8時50分頃。場内は満席で、中高年男性客が多かった。珍しく、男性用トイレに長い行列ができていた。

「三大協奏曲」は読響の夏の恒例コンサート。メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲」が演奏される。このほかにも、「三大交響曲」というのを毎年やっていて、「未完成」「運命」「新世界から」が演奏される。どちらにもドヴォルザークが入っていて人気の高さがわかる。どちらのコンサートも売り出し中の若い音楽家が指揮者やソリストに起用される。交響曲の方は指揮者一人しか聞けないが、協奏曲の方は、これからというソリストが3人もまとめて聴けるので、毎年同じ曲目なのだが、飽きることなく聞いている。

今回の指揮者は大井剛史で、ソリストはヴァイオリンが中野りな、チェロが佐藤佳菜、ピアノが進藤実優と20~24歳の女性だった。中野は白いドレス、佐藤は黒いドレス、進藤は赤いドレスで登場し、それぞれ個性的な演奏を聴かせた。

中野は爽やかな演奏、佐藤は力強いが美しい音色を聴かせた。進藤のピアノは力強く感じられ、第二楽章の飛び跳ねて遊ぶような演奏は印象的だった。どんどんと新しい才能が出てきていることを実感して、すごいものだと感心した。

聴いている間に大雨が降ったようで、道路はぬれていたが、帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、しし唐のソテー、ラム肉のミートボール、イワシのエスカベッシェなどと、ワイン各種。


歌劇派「夏のオペラ祭り」

2024-08-20 11:23:15 | 音楽
8月19日(月)の夜に文京シビック小ホールで、歌劇派の「夏のオペラ祭り」を見る。ソプラノ、テノール、バリトンの3人とサラスヴァティという合唱団の公演。ピアノ伴奏。19時30分に始まり、10分間の休憩を入れ、終演は21時15分頃。ガラガラと予想して言ったら、満席で驚いた。合唱団が50人ぐらいいたので、友人筋で売り切れたとおもわれる。

御贔屓にしているソプラノの髙橋絵里を間近で聴こうと思ってチケットを入手したのだが、公演の三日前になって、髙橋が今秋に予定していた「ラ・ボエーム」を降板したというニュースがあり、どうやら医師の判断で入院治療を余儀なくされたということらしかった。「オペラ祭り」の直前だったので中止になるかなと思っていたら、佐藤亜希子が代役に立って歌った。有名な曲ばかりだからレパートリーに入っているのかも知れないが、素晴らしい歌だったので、感心した。

他の出演者はテノールが寺田宗永、バリトンが渡辺弘樹、ピアノが菊池沙織。合唱は男女の声域がバランスよく集まっており、50人ぐらい。年金生活者のような人が多かったが、それなりに歌っていた。指揮は松下京介。

前半は、ソプラノ、テノール、バリトンがソロやデュエット、トリオで歌う。全部イタリア語の歌で約1時間。一番の聞かせどころは「椿姫」からの曲で、ソプラノとテノールのデュエットと、ソプラノのソロで1幕後半を見せた。曲と曲との間に長屋晃一による簡単な説明があり、これも過不足なく適切だった。テノールの寺田は高音まで美しく響いたし、バリトンの渡辺は迫力のある声を聴かせた。ソプラノの佐藤は、準備期間が短かったのに立派な歌唱で、高域も乱れず美しく響かせただけでなく、素晴らしいディクションだった。

後半は、ほとんど合唱の曲。「カルメン」「カヴァレリア・ルスティカーナ」「アイーダ」「レ・ミゼラブル」から。「レ・ミゼ」は日本語で歌っていたが、他は原語。

髙橋が出ないので、残念だったが、佐藤が思いのほか良かったので、十分に楽しめた。帰りはちょうど豪雨の谷間に急いで帰り、家で軽い食事。作って冷凍しておいた自家製餃子を焼いて食べた。飲み物は5年物の紹興酒。

ダン・エッティンガー指揮の東フィル

2024-07-25 10:27:25 | 音楽
7月24日(水)の夜に東京オペラシティで、ダン・エッティンガー指揮の東フィルを聴く。8~9割の入り。若い人が多い。曲目はモーツアルトのピアノ協奏曲20番とブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」。7時開演だが、結構長い曲なので、15分の休憩を挟んで、終演は9時15分頃。

前半のモーツアルトのピアノ協奏曲は阪田知樹がピアノ演奏。阪田のピアノは一音一音が際立って粒立ち、とても美しい音色だった。超絶技巧を聴かせたわけではないが、美しい音楽を聴いたという感じで、とても好感が持てた。ヴァイオリンやピアノは、日本人にもうまい人がたくさんいるなあという印象。特に、カデンツァで聴かせた音色にはうっとりとした。アンコールの曲もとても美しい曲だった。

後半はブルックナーのロマンティックで、1時間を超える長大な曲。最初から最後までホルンが活躍するが、見事なホルン演奏だった。ブルックナーは何となく苦手意識があったが、この交響曲はとても面白く聞けた。これはホールの影響もあるかも知れない。いつも聞くサントリーホールと異なり、オペラシティは、古典的なシューボックススタイルのホールで、1階席の中ほどで聴くと、音に包み込まれるような心地よさを感じる。それだけで、普段は苦手意識のある曲でも面白く聞けたような気がする。エッティンガーの指揮は初めて聞いたが、精悍な印象。ブルックナーを面白く聞かせたのだから、力量があるに違いないと思った。

それにしても、1時間を超える曲は長すぎる。何よりも繰り返しが多い。微妙に違う変奏なのかも知れないが、同じフレーズが何度も出てきて、ちょっとうんざりした。それでも、全体としては大いに楽しんだ。

帰りがけに、英国風のパブで軽く食事。チキンの入ったサラダ、香草風味のケバブ、フィッシュアンドチップスなど。飲み物はエールビール。