劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

藤原歌劇団の「イル・トロヴァトーレ」

2022-01-30 15:15:23 | オペラ
1月29日(土)の午後に、東京文化会館で藤原歌劇団の「イル・トロヴァトーレ」を見る。途中に25分と15分の休憩が入り、約3時間の公演。ガラガラかと思ったら8割以上埋まっていて驚いた。ヴェルディの傑作で、好きな演目だが、日本では上演機会が少ないので、ありがたい。今回は2回しかやらないので、、集中したのかもしれない。

演出が粟國淳なので、オーソドックスで安心して見れた。藤原歌劇団の公演ではいつもセットや衣装にお金がかけられないせいか、オペラにしては貧弱だと感じることが少なくないが、今回はお金はかけずにうまく衣装、セットとも工夫されていた。書割の一杯装置だが、階段や十字架、大きな満月などを使い、場面の雰囲気をうまく出していた。大きな月は美しいが、何となくジェノヴァでやった「ランメルモールのルチア」の印象的な装置を思い出した。書割の装置だと安普請に見えることもあるが、この作品は夜の場面が多いので、薄暗い照明でよく見えなかったためか、ごまかしがきいて結構豪華に見えた。

ダブル・キャストだが土曜日のキャストは、それなりに皆声が出ていて気持ちよく聞けた。特に良かったのはレオノーラの小林厚子とマンリーコの笛田博昭。この主役の二人がきちんと歌ったので、舞台は引き締まった。ほかの主要なキャストとしては伯爵役の須藤慎吾とアズチェーナの松原広美で、この二人もそつなく歌っていた。

男性合唱で舞台に登場するのは15人ぐらいだったので、舞台空間を小さく使う工夫がなされてはいたが、声の迫力を欠いた印象。経済的な問題もあり、これは致し方ないことか。

オーケストラは東京フィルで、安定した演奏。指揮は山下一史で、大きな問題があるわけではないが、テンポが若干遅いと感じられる部分もあった。この歌劇団では時として、ゆっくりとした曲を歌うとイタリア語ではなく「カタカナ」で歌っているように聞こえるときがある。ネイティヴの発音指導を充実させる必要があるかもしれないと感じた。

それでも、全体としては大いに面白く楽しめたので、大満足して帰る。帰りにスーパーで鶏肉を買い、親子丼、きんぴら、ナスの煮びたしを作って食べる。飲み物は伏見の大吟醸。




新国立の「さまよえるオランダ人」

2022-01-27 11:14:29 | オペラ
1月26日(水)の夜に新国立劇場で、ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」を見る。当初予定されていたキャストはほぼ全滅で、外国からは来ずに日本人だけのキャストとなった。観客の入りは薄く、7割程度。新国立劇場では今でも来場者カードを毎回書かせているが、いったいいつまでやるのだろう。濃厚接触者の調査も保健所はあきらめ始めているし、ほかのコンサートでも購入時の履歴から調べることにしたようだし、新国立だけいつまでも続ける必要はないようにおもう。

ワーグナーの作品はどれも長いので見るほうも大変だが、「オランダ人」は初期の作品なので、長くはあるが、7時に始まり25分の休憩をはさみ10時に終了した。これ以上長いと途中で腹ごしらえしたくなるが、現在は食堂がほとんど閉まっているので、やはり大変だ。

ほとんど日本人歌手となったので、それほど期待しなかったのだが、ゼンダ役の田崎尚美の声がしっかり出ていて、思わぬ喜びだった。日本人のソプラノであれだけしっかりした声を出す人はあまりいない気がするので、今回の一番の収穫だった。船長役の妻屋秀和はいつもながら安定した歌唱。

ほかにエリック役の城宏憲とマリー役の山下牧子も、それなりの水準でこれなら日本人キャストも捨てたもんじゃないと感じさせた。問題はタイトルロールのオランダ人役を歌った河野鉄平で、声に芯がなくてふにゃふにゃした歌いっぷりに加えて、ディクションも悪く、全体のバランスを著しく損ねていた。

前半の1幕は、妻屋と河野の二人が主に歌うのだが、河野の声がしっかりと出ていないので、ただ長くて退屈なだけ。おまけにオーケストラが東京交響楽団で管が弱いせいか、序曲がえらく長いと感じさせられた。まるで下手な歌舞伎で「まま炊き」を見せられたような気分。

後半の2幕、3幕は田崎が出てきて歌うので、舞台も引き締まり、退屈しなかった。いろいろと制約はあるのだろうが、歌手を決めるときにはちゃんとオーディションをして、しっかりと歌えるのかどうか確認してほしいと思う。オペラ団体からの推薦だけで決めるなんてことはないと思うのだが、今回の例などを見ると、やはり実力以外のものがあるのではないかと邪推してしまう。

コロナのために、10時から食堂では食べられないので、家に帰って食事。作っておいた、けんちんうどんで暖まった。


日本フィルハーモニーのラヴェル

2022-01-20 16:51:42 | 音楽
1月19日(水)に池袋の東京芸術劇場で日本フィルを聞く。曲目は「左手のためのピアノ協奏曲」、「ピアノ協奏曲」、最後に「ボレロ」。都民芸術フェスティバルの一環だが、人気がなく4割ぐらいの入り。ガラガラという印象。年金生活者が多い感じで、勢いが感じられない。指揮は粟辻聡で、ピアノは黒岩航紀。

オーケストラは、こういう時こそ新規ファン獲得のチャンスなので、サービスしたり、良いところを見せればよいという気がするが、そうしたプログラム構成になっていない気がした。3曲ともラヴェルというのはよいが、演奏時間は3つ合わせて55分しかない。長ければよいというものではないが、こんなに短いならば、休憩なしでやればよいものを、最初に19分の曲があり、すぐに20分の休憩となる。これではファンが増えるとは思えない。

それでも、ラヴェルのピアノ協奏曲は初めて聞いたので、ラヴェルはこういう曲を書くのかと、勉強になった。やはり、当時の時代らしいジャズなどの影響をかなり受けた印象だ。そして、ラヴェルは楽器の音色の使い方がうまいなあと、改めて感心した。ピアノ協奏曲でも、ピアノがオーボエの伴奏をしたりして、こういう作り方もあるのかと思った。

最後の「ボレロ」は、つい先日読響の演奏会で聞いたばかりで、その音が耳に残っていたので、日本フィルの演奏はちょっと荒っぽく感じられた。

コロナでマンボウになる前に、池袋のレストランで食事しておこかと思ったが、よく行く店は全部早じまいになっていて、コンサート終了後には食事できない。そこで、いつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、イカのフリット、塩タラのグラタンなど。


新国立の「ニューイヤー・バレエ」

2022-01-15 10:50:12 | バレエ
1月14日(金)の夜に、新国立劇場で「ニューイヤー・バレエ」を見る。コロナのため当初の予定演目とは異なり、新作はなく再演ものだけとなった。こんな演目ならば客が入らないと思ったのだが、場内はほぼ満席で驚いた。

演目は、前半にバランシンの「テーマとバリエーション」。踊りのテクニックを見せるような作品で、見ていてあまり面白くはない。やはり、物語付きの作品のほうが好きだ。それでも米沢唯と奥村康祐の踊りを楽しむ。

後半は、ビントレーの「ペンギン・カフェ」。被り物の踊りなので、ダンサーの個性があまり見えず面白くない。それでも「豚鼻スカンクにつくノミ」の「ノミ」役を踊った五月女遥の軽々しくダイナミックな踊りはなかなか良いと思った。今まで知らなかったが、絶滅危惧種の珍しい動物たちの踊りが続いた後、最後は大雨になって、ノアの箱舟につがいが乗って終わりになる。ノアが出てこないので、最後の箱舟の場面は、もう少し丁寧に見せたほうが日本の観客にもわかりやすいと思った。

オーケストラは東京交響楽団で、富田実里の指揮。指揮者は代理の代理。「ペンギン・カフェ」の演奏で、チューバの音が遅れるのが気になった。

コロナだから仕方がないという感じもするが、前半25分で、休憩が25分、そのあとの後半は45分ということで、少し短すぎる割には、休憩が長くて退屈する。休憩は15分ぐらいにして欲しい。もう一作品ぐらい20~25分程度の小品を入れたほうが良いと思う。劇場への往復に2時間ぐらいかけるので、実質1時間ちょっとしか鑑賞できないというのは、効率が悪いので、足が遠のく。おまけに休憩が長すぎるし、10分遅れで始まるのもよくない。場内の温度が高すぎて暑くて疲れるのもうんざりだ。新国立劇場は、きちんと公演管理をすべきだろう。

帰りは、いつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、イカの墨煮、フグのガルシア風ソースなど。スペインではフグを食さないが、アンコウのレシピでやってみたとのこと。

読響のハープ協奏曲

2022-01-12 14:13:05 | 音楽
1月11日(火)の夜にサントリーホールで、読響を聞く。寒いうえに雨だったためか、入りは薄く5割程度の観客だった。サントリーホールは、正月の飾りつけも外れ、ふつうモードとなった。バーの営業もあるので、あとはクロークの再開が望まれる。

今回は指揮者もハープ奏者も来日できなかったため、指揮者とハープ奏者が変更になり、曲目も4曲中2曲が変更になった。指揮者はイタリア人のガエタノ・エスピノーサで、経歴を読むとオペラが多いようだ。ハープ奏者は日本人の吉野直子で、単独でコンサートも開くベテラン。

曲目は、最初に「こうもり」序曲。エスピノーサのメリハリの利いた指揮で楽しい。この曲はオペラの時に、ピットに入ったオケで聞くことが多いが、ステージ上の演奏だと音の迫力がすごかった。続いてボワエルデューの「ハープ協奏曲」で、初めて聞いた。もともとはオペラの作曲家だったようだが、ハープ関係者の世話になったことから、ハープの曲を多く書いたらしい。ハープの音量に合わせて、オーケストラも半分以下の小さな編成となった。ハープでは有名な曲らしいが、面白いものの少し単調という印象もあった。

休憩後はラヴェルの曲で、最初に組曲「クーランプの墓」、続いて「ボレロ」。ラヴェルは、楽器の音色の特徴をうまく使っていて面白いなあと、改めて感心する。特に、「ボレロ」のホルンが旋律を演奏する時に、チェレスタの音が重なっているので驚いた。

普通、コンサートは9時ごろに終演することが多いが、曲目が変更になったためか、珍しく8時40分で終わった。レストランのラスト・オーダーが最近早くなったので、コンサートの後のレストランは諦めていたのだが、早く終わったので、行きつけの店に電話して9時前に入った。

コロナ禍のため、店もだいぶ長く休業していたそうで、久しぶりの店。名物の魚のスープで始め、ニンジンのラペ、仔羊のロースト、クレーム・ブリュレなどをいただく。飲み物はコート・ド・ローヌの赤。