劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

東京文化会館の「アマールと夜の訪問者」

2020-08-31 14:48:40 | オペラ
8月30日(日)の昼に、東京文化会館の小ホールで「アマールと夜の訪問者」を見る。15時開演で、1部は浅岡聡司会のトークと歌で、指揮の園田隆一郎と演出の岩田達宗の話と、メノッティなどの曲を何曲か聞かせた。2部はオペラ「アマールと夜の訪問者」で、これは約1時間。20分間の休憩をはさみ、終演は17時頃だった。

これまで知らなかったが、10年以上も前から上野の商店街の協賛により、オペラBOXとして毎年いろいろな作品を上演しているらしい。過去にはオペラの有名作品も上演されていたようだが、今回のメノッティのオペラは、テレビ用に書かれたものだから、約1時間で1幕物としてちょうどいいような気がする。小劇場での公演だからこうした作品がありがたい。

出演者は、過去の東京音楽コンクールの入賞者たちで、どの人も実力があり、安心してみることができた。うれしかったのは楽団で、小ホールなのでピアノだけではないかと思っていたら、ピアノとチェロとクラリネットという3人の構成で、弦と木管が加わるだけでずいぶんと音の響きが本格的に感じられた。

物語はイエス生誕にちなんだもので、イエスに贈り物を捧げに行く東方の三賢人が、途中で少年アマールと母親の住む家で休みを取るという話。アマールは脚が悪く、貧乏で何も捧げものをできないが、自分の一番大事な松葉杖を捧げものにしようというと、奇跡が起こり、少年の悪い脚が癒えるというものだ。

導入部はアマールの貧乏暮らしの紹介、次いで東方の三賢人の登場とイエスへの捧げものへ行くという紹介、それから羊飼いたちなどによる賢人へのもてなしによる歌や踊り、最後が母親の迷いとアマールの奇跡という四部構成なので、途中でうまくCMが入れられるような構成になっている。

3番目の羊飼いたちの歓迎場面は、子供たちも含む合唱やダンサーが登場して踊りも見せたが、小ホールの小さな舞台ではなかなか効果的な踊りを見せるのは大変だと感じさせた。

コロナ時代なので、オペラや合唱は何か対処をするのかなと思ってみていたら、主要出演者は全員フェイス・シールで歌い、合唱やダンサーたちは、布製のマスクをうまくアラブ風のベールに見立てて対処していた。なかなか出演者も大変そうだが、フェイス・シールドをしていても、声はそれほど違和感なく聞こえたので、安心をした。小ホールだからこれでもよく聞こえるが、大ホールでのオペラはいったいどうなるのだろうと心配する。

アマールを演じたソプラノの盛田麻央、母親役のメゾ・ソプラノ山下牧子とも立派な歌で、とても楽しめた。コロナ下でもやっとオペラを聴けるようになったのがうれしかった。

帰りに近所の店で買い物して帰る。タコのガルシア風と、サラダ、タイの頭のグリルで食事。お酒はイタリアのスプマンテ辛口。




東京音楽コンクール ピアノ部門本選

2020-08-30 10:27:42 | 音楽
8月29日(土)の昼に、東京音楽コンクールのピアノ部門本選を聴く。東京文化会館大ホールで、16時から始まり、20分の休憩をはさみ、終演は19時過ぎだった。暑かったので、東京文化会館に着くまでに、体力を使いつくした感じ。天候から考えると、9月に実施した方がよいのではと思った。コロナ仕様の千鳥格子での客席だが、ほぼ満席だった。

ピアノ部門は1次予選105人、2次予選12人、そして今回の本選は4人で、男性3人、女性一人だった。一番若い人は16歳、年長者は27歳。曲目は全員異なっていて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の3番、4番、5番と、ラフマニノフの3番だった。

オーケストラは東京フィルハーモニーで、指揮は梅田敏明。立派な演奏。

105人中の4人だから、それなりに選ばれているので、どの人も見事に弾いていたが、審査員はそれを評価して優劣をつけるのだから大変だなあと感じる。

結果を見ると、1位が該当者なしで、2位はベートーヴェンの3番を引いた大崎由貴と、ラフマニノフを弾いた谷昴登の二人だった。3位も該当者なしで、残りの二人は入賞という扱い。

ずっと聞いていると、ベートーヴェンを弾いた3人は、曲調が似ているので評価しやすい。ラフマニノフはちょっとムードが違うので、直接の比較はしにくいが、このラフマニノフはオーケストラものっていて、ピアノの演奏にも引き込まれて大いに盛り上がった。

このコンクールでは聴衆賞というのがあり、帰りがけに投票箱に入れるのだが、昨年までは名前に丸印をして箱に入れる式だったが、今年は参加者ごとに箱が分かれていて、自分の気に入った人の箱に投票用紙を入れる形になっていて、ペンも不要で便利ではあるが、
今回のように、聴衆賞がラフマニノフの谷に集中すると、その箱ばかりに列ができるだけでなく、用意した箱が小さすぎたのか、箱に入りきらずにあふれ出ていた。大きな箱にしないと問題がありそうだ。

というわけで、聴衆は圧倒的にラフマニノフだったが、審査結果は冷静だったので、ちょっと驚いた。

帰りは行きつけのフランス料理店で食事。コロナの関係で10時に閉店するので、8時までに入ってくれと言われたので、10分前に滑り込んだ。不便な時代になったものだ。エスカルゴときのこのクリームソースを前菜に、メインはマグレ・カナールのロースト。甘いものは洋ナシのタルト。ワインはブルゴーニュのシャルドネ。





東京音楽コンクール 弦楽部門本選

2020-08-28 11:19:07 | 音楽
8月27日(木)の18時から、上野の東京文化会館大ホールで、東京音楽コンクール弦楽部門の本選を聴く。18時開演で、20分間の休憩をはさみ、終演は21時10分頃。昨年までは自由席だったが、コロナ対策で千鳥格子配列の指定席になった。あらかじめ席が確保されているので、開演ぎりぎりに言っても問題なく、開場まで並ばせられないのでこの方がありがたい。客席はほぼ埋まっていたが、端の方は少し空いていた。

本選参加者は5名で、ヴァイオリン3人、ヴィオラ1人、チェロ1人。日本フィルハーモニーとともに、協奏曲を演奏して評価される。1次予選、2次予選を通過してきた5人だから、みな十分に実力を持っていて、聞きごたえがあった。

プログラムによると、1次予選の参加者はヴァイオリンが98人、ヴィオラが13人、チェロが17人、コントラバスが6人だった。本選に出れたのは、ヴァイオリンは3%、ヴィオラは8%、チェロは6%、コントラバスは0%ということになる。

一番若かったのはチェロの男性で16歳、年齢が高かったのはヴィオラの女性で24歳だった。男性はチェロの一人で、ほかは全員女性。

ヴァイオリンはシベリウスが2人で、チャイコフスキーが一人。ヴィオラはバルトーク、チェロはショスタコービッチだった。

シベリウスが2人いたので、同じ曲を続けて聞くのは嫌だなと思ったら、うまく前半と後半に分かれていて、助かった。

結果は、最後にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾いた前田妃奈が1位となり、聴衆賞も取った。一番ポピュラーな曲で聞きやすくもあったが、17歳で高校三年生だが、堂々と物おじしない態度で、楽しむように感情をこめて演奏している様子はすでに大物のような風格も感じられた。

ヴィオラの協奏曲など、こうした機会がないとなかなか聴かないが、バルトークなので退屈するかなと思ったら、思いのほか楽しめて演奏もよく感心した。

オケは角田鋼亮指揮の日本フィルだったが、ショスタコービッチの難しそうな管楽器、特にホルンなど頑張っていて、少し荒々しくはあったが、なかなか良かった。

9時10分過ぎに終了したが、コロナの規制のために、飲食店は10時までなので、食事に困ってしまう。外食はあきらめて家に戻って軽い食事。あらかじめ作っておいた、サラダ、タプナード、ケッカとフランスパンという食事。飲み物はスペインのカヴァ。

今年のトニー賞はオンライン開催へ

2020-08-27 10:27:52 | ミュージカル
6月上旬に予定されていた今年のトニー賞は、「延期」とだけ発表されていたが、米紙の報道によると、オンライン開催が決まったようだ。まだ、いつ開催との知らせはないが、2月19日までの開幕分が対象となるというので、例年とはちょっと異なり対象期間が短い。

例年だと、4月末ぐらいまでの開幕作品が対象となるので、3~4月の開幕が多いが、今年はクオモ知事により3月12日に劇場の閉鎖命令が出たので、期待の新作がほとんど対象外になってしまった。

ミュージカルで行くと、2月20日に開幕した新振付の「ウエスト・サイド物語」の再演、3月5日に開幕したボブ・ディラン音楽の「北国の少女」は対象外になり、もちろん劇場閉鎖当日に開幕を予定していた「シックス」も対象外だ。

そうなってくると、ミュージカルの対象作品で有望そうなのは、昨年7月に開幕していた『ムーラン・ルージュ』と、11月に開幕したティナ・ターナーの『ティナ』ぐらいしかなく、盛り上がりを欠くことおびただしい。

しかも、オンライン開催となれば、例年行われていたミュージカル作品のパフォーマンスもないだろうから、本当に受賞のスピーチだけなのではないかという気がする。まあ、78年からテレビ中継が始まるまでは、パフォーマンスのない授賞式だったので、元に戻った形だが、毎年楽しみにしていたので、残念だ。

読響の三大協奏曲

2020-08-23 11:03:09 | 音楽
8月22日(土)の昼にサントリー・ホールで、読響の三大協奏曲を聞く。このところ、あまりにも暑いので家にこもっていたが、久々に生のオーケストラを聞くとまた格別だ。14時開演で、15分間の休憩を入れて、終演は16時20分ごろだった。客席は千鳥格子で半分しか入れていないが、ほぼ埋まっている感じ。オーケストラの配置は、ゆったりと間を取っているので、弦の譜面台も一人一台で、かなり多い印象。

演目は、メンデススゾーンのヴァイオリン協奏曲を戸澤采紀、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を佐藤晴真、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番を辻井伸行が演奏。指揮は太田弦だった。

夏の三大交響曲や三大協奏曲のコンサートは、お祭りみたいなところがあって、若手の活躍の場だが、今回のコンサートは、ヴァイオリンの戸澤は20歳ぐらい、チェロの佐藤は22歳ぐらい、ピアノの辻井は32歳ぐらい、指揮の太田は26歳ぐらい。舞台に出てきて先ず感じたのが若いという印象。特に指揮の太田は童顔だということもあり、まるで中学生か高校生のように感じられる。

しかし、演奏はいずれも立派なもので、安心して聞けた。メンデルスゾーンとドヴォルザークは、聞きなれた曲でもあり、独奏楽器の音色とオケの絡み合いを楽しんで聞いたが、後半のチャイコフスキーにはよい意味で驚いた。

辻井のピアノを生で聞いたのは初めてだったが、最初からピアノの演奏に引き込まれて、協奏曲なのだがピアノの音しか耳に入らないような印象を持った。チャイコフスキーのピアノ協奏曲は何度も聞いている曲だが、まるで新しい生命を持ったような印象を与える演奏だった。辻井のピアノは一つ一つの音がクリアで、音が美しく響き、低音の力強さも高音の繊細な響きも兼ね備えていて、その音を聞いているだけでなぜか感動してしまった。

近年聞いたピアノの中では最高といいう感じで、人気があってチケットを取りにくいのも当然だと思ったが、また、ピアノ曲のソロでも聞いてみたいと思った。

というわけで、大満足のコンサートだったが、外気温が高かったためかサントリー・ホールにしてはずいぶんと暑かった。これ以上暑いと熱中症で倒れそうというくらい暑い。恐らくは、コロナ対策のために外気の取入れを最大にしているためだと思われるが、そうすると、外気温の高い昼間の公演は観客のほうもそれなりの覚悟がいりそうだ。こうした状態が続くのであれば、昼間の開催はやめて、少しは外気温の下がる夜の開催にしてほしいと思った。

早い時間に終わったので、家に戻って食事。キャベツベースのサラダと、ナスのカレーにタイ米のごはん。飲み物はイタリアのスプマンテを合わせた。暑いときには、やはりカレーが食欲をそそる。