劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

団十郎の星合世十三團

2024-07-23 14:27:20 | 歌舞伎
7月22日(月)の昼に歌舞伎座で、団十郎の歌舞伎を見る。11時開演、30分と25分の休憩を挟み、終演は15時45分頃。オペラよりも若いが、中高年が多い。暑いけれど着物姿も多い。団十郎は襲名以来あまり見ていなかったが、先日見た「先代萩」の仁木弾正が魅力的に見えたので、台詞のある芝居も見に行った。

副題で「成田千本桜」と受けられているが、「義経千本桜」の通しを四倍速で見せるイメージ。堀川御所で鼓を渡す場面から始まり、鳥居前、渡海屋、大物浦までを一幕で見せる。亡霊となって宙乗りで終わるまでが、1時間半ぐらい。二幕は木の実、小金吾討死、鮨屋で1時間ちょっと。三幕は川連法眼館で、キツネの宙乗り。いつもは部分的にしか見ないから、早送りの通しで見たら物語がよく分かるかなと思ったら、省略が多いので、かえって判りにくいと感じた。木の実などは、あっさり終わってしまうので、いがみの権太の悪辣な感じが出ない。

見どころは、各場面の主役を団十郎が十三役早替わりで見せるという点に尽きる。いろいろな役があるので、団十郎に合う役もあれば、全然向いていないと感じさせる役もある。鮨屋では、鮨屋弥左衛門、いがみの権太、弥助を全部団十郎が演じて、三人が絡む場面も吹き替えを使って、何度も早変わりして見せる。10秒ぐらいでの頻繁な早替わりなので、観客にはそれなりに受けていた。

団十郎は、顔は役者向きだが、台詞と芝居が雑で、とても古典的な演目をじっくり演じることはできそうもない。だから、こうした体力勝負の早替わりと宙乗りで人気を得るしかなさそうだ。先代の猿之助は宙乗りをしたが、芝居もきちんとしていたのが、懐かしく思い出される。10年ぐらいしたら、少しはうまくなるだろうか?とても心配だ。

松竹も、こうした早替わり路線ならボロが出ないと踏んだのか、来年1月には「仮名手本忠臣蔵」の早替わり版をやるチラシが置いてあった。

見終わって、一気に疲れが出て、家に帰って食事。生ハム、サラダ、ラム肉のソテー、食後に各種チーズ。飲み物はボルドーの赤。

歌舞伎座「伽羅先代萩」「四千両小判梅葉」

2024-05-08 11:07:22 | 歌舞伎
5月7日(火)の夜に歌舞伎座で、久々に歌舞伎を見る。連休明けだったあためか、客席は6~7割の入り。近年の歌舞伎座でこんなに入りが薄いのは初めて見た気がする。4時半開演で、35分間の休憩を挟み、終演は8時半だった。

五月は恒例の団菊祭なので、団十郎と菊五郎の共演が見ものだが、菊五郎はもう年齢が年齢なので、菊之助が大きな役を演じている。先代萩の正岡は、女形では有名な作品だが、菊之助がどんな風に演じるのか見たいと思っていったわけだ。菊之助も決して若いとは言えないだろうが、この大役に取り組むと型を演じるのが精いっぱいで、正岡の強さ、特に精神的な強さが感じられない。この役を演じられるようになるのは、もう少し時間が必要と感じた。団十郎は、床下に変わって仁木弾正になって登場する。花道での面明かりでの演技など、見せ場はあるが、台詞を語って演じる場面がなかったのは残念。この後の「対決」も見たかった。

後半は松緑と梅玉による「四千両」。江戸時代の御金蔵破りの実話を河竹黙阿弥が芝居にしたもの。元は6幕22場だが、上演するのは3幕5場だから、脇筋を全部カットした短縮版。話は通じるが、芝居としての面白みはあまりない。中仙道の雪道での親子の別れの場は本当ならば泣かせどころだろうが、あまり情感が感じられず、面白みが出ていない。最後の牢内の場面と言い渡しは、芝居としての面白さはないが、江戸時代の牢内の様子が再現されていて、こんな感じだったのかと、風俗的な観点で面白い。もちろん現代の牢獄だってよく知っているわけではないが、歌舞伎でこうして再現してくれると、イメージが沸いて面白かった。

団菊祭にも関わらず入りが薄いのは寂しいと思いながら帰路につく。前を歩いていたご婦人は吉右衛門の写真に別れを告げていた。魅力的な役者がそろわないと歌舞伎も面白くないなあと改めて感じる。

家に帰って食事。新玉ねぎのサラダ。ビフストロガノフ、食後に国産のウォッシュ・チーズ。円安で、フランス産のおいしいチーズが入ってこなくなったのは寂しい。ペールエールとボルドーの赤。

国立劇場の歌舞伎「妹背山婦女庭訓」第二部

2023-10-12 14:09:59 | 歌舞伎
10月11日(水)の昼に国立劇場で「妹背山」を見る。国立劇場のさよなら公演と銘打ち、9月と10月で「妹背山」の通しとしているが、9月は三段目中心、10月は四段目の一部分の上演。完全上演からは程遠い。このところ不入りが続く国立劇場だが、さよならとあって、普段よりも入ってはいるが、それでも半分以下の客席しか埋まっていない。最後の記念撮影をしている人もたくさんいた。

10月公演は、三笠山御殿中心で、杉酒屋の娘お三輪が、惚れた美男子求女を追っていくと、ライバルの橘姫との婚礼が行われると知り、逆上する展開。お三輪を菊之助、立花姫を米吉が演じていて、この二人が良い。求女の梅枝はちょっと影が薄い。曽我入鹿の歌六、鱶七の芝翫も充実した芝居で、全体的に良い出来だった。

国立劇場は「通し公演」が売り物のはずだが、今回の公演は四段目の途中からの公演で、道行恋苧環から入る。その前の杉酒屋をやらないので、なぜお三輪が求女を折って来るのかわからない。上演時間の制約からこうした中途半端な上演をするのだろうが、これでは観客がどんどん離れていくだろう。建て替わったら、是非ともきちんとした公演をやって欲しいものだ。

12時開演で、終演は3時25分。家に帰って夕食を食べる。レンコンやナスの天ぷら、エビフライなど。イタリア産の白を飲む。

国立劇場の「妹背山婦女庭訓」

2023-09-07 13:41:29 | 歌舞伎
9月6日(水)に国立劇場で「妹背山婦女庭訓」を見る。建て直しに入るので、さよなら公演と題して、9月10月の2か月間で「妹背山」の「通し」を上演としている。9月は「山の段」が中心で、10月は「御殿」中心なので、鹿殺しや芝六住家は出ないので、まあ「半通し」だろう。

「山の段」は吉野川を挟み妹山、背山に分かれた悲劇を描くので、両花道だけでなく、義太夫も上手と下手に分かれて語る。なかなかかからない演目なので、この機会に見ておいた。貴重な機会だと思うが、客の入りは悪く、3割程度の入り。客を呼べるスターがいないこともあるかも知れないが、もう少し考えないとだめだろう。

出演者は、菊五郎も菊之助も出ない菊五郎劇団といった感じで、時蔵と松緑がメインで、そのほかは若手の発表会。時蔵だけが突出して良い芸を見せるが、松緑は元気の良いのだけが取り柄といった印象。亀蔵は台詞がよくわからない。

それでも、久々に歌舞伎で「妹背山」を楽しんだ。12時に始まり終演は15時35分だが、休憩が3回1時間ぐらいあり、実質は2時間半。11時から始めて夕方5時ぐらいに終わっても良いから、きちんと通しで上演してほしいものだ。

帰りにスーパーで買い物して家で食事。豆腐やニンジンなどの甘辛煮つけ、大根サラダ、トウモロコシごはんなど。飲み物は京都の純米大吟醸でうまし。

歌舞伎座の「与話情浮名横櫛」

2023-04-14 15:57:49 | 歌舞伎
4月13日(木)の夜に歌舞伎座で、「与話情浮名横櫛」と「連獅子」を見る。コロナ禍のため、歌舞伎座がずっと三部制になっていたので足が遠のいていたが、二部制に戻ったので、久々に見に行った。平日の夜だが、満席で人気があり、外人観光客も多かった。午後4時に始まり、20分と35分の休憩を挟み、終演は午後7時半ごろ。着物の御婦人も多い。

前半の「与話情浮名横櫛」は、木更津海岸見染め、赤間別荘、源氏店という簡略版での上演。フルの上演を見てみたいが、最近はほとんどかからない。今回は与三郎を仁左衛門、お富を玉三郎という豪華配役で、この二人が美男美女を演じる形。左団次は休演で代わって権十郎が演じていた。仁左衛門もかなりの年齢になったのか、病み上がりなのか、見れただけでも良かったが、台詞は少し弱々しかった。権十郎の多左衛門は、その点しっかりした台詞回しで好感が持てた。こうもり安の市蔵は演技は良いが台詞が聞き取りにくい問題がある。それでも、久々の「切られの与三」を堪能、だが、幕切れはちょっと間の抜けた印象。まだ長く続く芝居を途中でちょん切るのだから無理はあるだろうが、もう少しすっきりとした終わらせ方が良いのではないか。

食事休憩の後は、松緑親子による「連獅子」。途中で狂言風の漫才が入る1時間のフルバージョンで、長唄の演奏もよく楽しめる。松緑の息子の左近は、まだ若いだろうが、子獅子を懸命に踊り、体力がある分、サービスで力任せにたてがみを回し、喝采を受けていた。これはバレエで32回転をするグランフェッテみたいな見せ場だろうが、体力があるので、60回以上回した印象で、観客も大満足だった。

帰りはいつものスペインバルで、軽い食事。トルティージャ、ハモン、イワシのエスカベッシェ、ほうれん草とひよこ豆の煮込み、塩タラのローマ風フライなど。