劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

モーツアルトの室内楽

2022-03-24 14:53:49 | 音楽
3月23日(水)の夜に東京文化会館小ホールで、東京春音楽祭の「名手たちによる室内楽の極み」を聴く。タイトルがちょっと恥ずかしい気がするが、要するにモーツァルトのディヴェルティメントを2曲演奏するという室内楽コンサート。いろいろなオーケストラの首席奏者クラスが集まっているので、そういう意味では名手たちなのだろう。せっかくの機会だが、入りは悪く4~5割しか入っていなかった。もったいないという感じ。入り口では手袋してチケットをもいでくれた。

最初はk563の変ホ長調。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが各1人づつで、三重奏。普段は四重奏で聴く機会が多いが、三重奏だと一つ一つの楽器の演奏がより際立ってよくわかる。具体的にはヴィオラの音が、いつも影に隠れて聞き取りにくいのだが、三重奏だとヴィオラの音もくっきりと聞こえて、なかなか面白かった。6楽章まであり50分近い曲だが、リズムやテンポが変わり、退屈せずに楽しめる。

後半は17番k334で、一転して大編成。ヴァイオリン6本、ヴィオラ2本、チェロ2本、コントラバス1本に、ホルン2本が加わる。ヴァイオリンは3本ずつ第一と第二に分かれて演奏するので、まるで小さなオーケストラの響きだった。弦ばかりの中にホルンがいるので、浮かないかという心配をしたが、ホルンの柔らかい音色は弦楽器ともとても相性が良かった。こちらも6楽章まであり、50分近い演奏。途中にメヌエットなどが挟まり、変化に富むので退屈しないことも同じ。

オーケストラではこうした室内楽はやらないし、弦楽四重奏楽団でもこうした曲はレパートリーに入らないので、こうした機会はありがたい。また、やってほしいが、入りが悪かったのでちょっと心配だ。

マンボウが明けたので、帰りにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、生ハム、クスクスのサラダ、アサリの漁師風、ワタリガニのグラタンなど。

東京春音楽祭 ムーティのコンサート

2022-03-19 14:41:52 | 音楽
3月18日(金)の夜に、雨の中を東京文化会館のコンサートへ行く。入り口では手袋の係員が切符をもぎっていた。東京春音楽祭の開幕コンサートとあって、招待客や有名人が多く来ていた。満席かと思ったらそうでもなく、7割ぐらいの入り。コロナと雨で足が向かなかった人がいたかもしれない。

開演に先立って、リッカルド・ムーティがマイクを持って登場し、2点ほど簡単な挨拶をした。イタリア語かと思って身構えたが、英語で話した。1点目は開幕公演に参加できてうれしいという儀礼的なもの。2点目はウクライナの困難な状況とそれに対して「音楽」が果たせる役割についてだった。話は観客からは好意的に受け取られたように見えた。

プログラムは、最初にモーツアルトの交響曲39番、休憩20分の後はシューベルトの交響曲「未完成」と「イタリア風序曲」。オーケストラは、いろいろなオケからの選抜メンバで寄せ集めなので心配したが、立派な響きで感心した。比較的若手で活躍している人を集めたらしいが、各オケの首席奏者クラスがごろごろいる贅沢なもの。コンマスは読響の人だった。

モーツアルトも、シューベルトも奇をてらうところがなく、オーソドックスな演奏。しかし楽譜に忠実で音の強弱もきちんとメリハリが付いている。たったそれだけのことだが、それにより曲の構造が明確となって、音楽そのものが迫ってくる感じで、やはりムーティはこうしたところがうまいのかと感心した。

小さな音を美しく出し、それが急に大きな音になっていくあたりの「うねり」は聴いていて心地の良いものだった。各パートともうまかったが、僕はクラリネットが高音をピアニッシモで美しく出していたので、聞きほれてしまった。途中ティンパニーの元気が良すぎるところがあり、ちょっと音が大きすぎると思ったら、ムーティが「音を抑えろ」というようなそぶりでサインを送り、そのあとはうまい具合になった。うまくコントロールするものだとこれまた関心。

終わって挨拶に呼び出される時も、何となくお茶目でチャーミングな印象。帰りがけには、舞台上から手を伸ばしてファンと握手をするサービスぶりで、魅力的な人物だと思った。

雨なので、急いで帰り家で軽い食事。作っておいたキャベツ、ベーコン、ソーセージなどのポトフを温めて食べる。飲み物はカヴァ。やはり自分で作ったほうがうまいと思った。

東京芸術劇場の東京シティ・フィル・コンサート

2022-03-18 10:55:34 | 音楽
3月17日(木)の夜に東京芸術劇場で東京シティ・フィルのコンサートを聴く。オール・シベリウス・プログラムで、最初に交響詩「4つの伝説曲」の第4曲。続いてヴァイオリン協奏曲。休憩20分の後は交響曲2番だった。観客の入りは6割程度といった感じで、1階はかなり埋まっていたが、2階や3階はガラガラといった印象。昨日の読響のコンサートでは、入場時に切符のもぎりを係員がやっていたが、今回は自分でちぎって半券を箱に入れろと言われた。係員のもぎりはやめたのかと尋ねたら、コロナ対策ですとの回答だった。一体どうなっているのだろう。

都民芸術フェスティバルでは、8つのオーケストラが演奏会を行うが、東京シティ・フィルは中でも一番規模が小さい。その割にはシベリウスで大編成を必要とするから、エキストラも含めて苦労が多いだろうと思われる。今回の編成もコントラバス7本はよいのだが、チェロも7本で、普通の感覚だと8~9本にしてほしいところだ。

指揮は藤岡幸夫、ヴァイオリンは郷古廉。最初の交響詩は、なんだか各パートの演奏がばらばらで揃っていない印象。聴いていてちょっとハラハラする。ヴァイオリン協奏曲は独奏は悪くないのだが、何となく演奏が平板で退屈した。

後半の交響曲2番は、2楽章まで管がばらついていたが、藤岡の熱意が通じたのか、3~4楽章は持ち直して、それなりに聞かせた。終わりよければ、すべて良しという感じ。

帰りがけに、テイクアウトの寿司店で、閉店間際に割引となった寿司を買って帰った。買うときは魅力的に見えたが、食べてみると機械で握ったような寿司で、色気がない。やはり寿司店で食べないとだめだと反省した。

東京芸術劇場の読響

2022-03-17 14:38:59 | 音楽
3月16日(水)の夜に東京芸術劇場で読響のコンサートを聴く。9割ぐらいの入りで人気が高い。コロナ問題が発生して以降、チケットのもぎりは、自分でやれと言われていたが、最近は昔のように係員がもぎってくれるところも出てきた。ただ、これまでは手袋をしていたが、芸術劇場でももぎりは手袋なしの生手でやっていたので、ちょっと感動した。コロナの感染は、一般的に「エアゾル」感染なので、チケットを媒介してなどというのは、あまり考える必要がないので、今後とも各劇場では係員がもぎりをやってほしい気がする。

だが、これを機会にいっそのことチケットは、自宅で印刷したり、スマホの画面上で確認するように変更したらよいと思う。海外の劇場では、大抵は自宅で記名式のチケットを自分で印刷し、そのチケットについたバーコードを入場時に読み込む方法がとられている。日本の主流はコンビニ発券だが、コンビニやチケット発券会社に高い手数料を払う必要があり、不便で効率も悪いという気がする。コンビニ発券だってバーコードを読み取って発券しているのだから、チケットそのものにバーコード(二次元でもよい)を印刷してそれを入場時に読み取れば事足りるはずだ。チケットはPDFで発行すれば、スマホ画面に表示したバーコードを読み取ることでも問題ないと思う。早く改善してほしいと思う。

ところで、コンサートは都民芸術フェスティバルの一環なので、プログラムは割とポピュラー。最初にモーツァルトの「後宮からの脱出」の序曲、続いて坂田知樹のピアノによるバートーヴェンのピアノ協奏曲4番、15分の休憩の後にチャイコフスキーの交響曲5番。指揮は松本宗利音。

指揮者もピアノも若い。いかにも伸び盛りといった雰囲気で元気のよい演奏だった。モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキーと続けて聞くと、まるで音楽史の講義を受けるように、時代の変遷とともに曲が変わっていく様子が分かって面白かった。

ピアノの坂田はきれいに粒が揃った端正な演奏で、指が良く動く。アンコールでドビッシーの小品を弾いたが、これがまた素晴らしい演奏だった。

チャイコフスキーの交響曲5番は、1楽章から4楽章までしつこく同じ主題が返送されていく面白さがある。とにかく派手でにぎやかな演奏。読響らしく大音量の迫力で聞かせた。

家に帰って軽い食事。グリーンサラダと、ソーセージと白いんげん豆のトマト煮込み。フランスの白でソーヴィニヨンブラン。

新国立劇場の「椿姫」

2022-03-11 13:47:56 | オペラ
3月10日(木)の夜に、新国立劇場で「椿姫」を見る。8~9割程度の入り。初日で夜だったので、着飾った人もいる。外国人の原則入国禁止が3月から解除されたためか、指揮者のアンドリー・ユルケヴィチ、アルフレード役のマッテオ・デソーレ、ジェルモン役のゲジム・ミシュケタが参加した。ヴィオレッタ役は来日できず中村恵理が務めた。オーケストラは東京交響楽団。

ジェルモン役でバリトンのミシュケタが抜群によく、いつもは少しダレた感じのする2幕がぐっと引き締まり、緊迫感が出て大変面白い舞台となった。アルフレード役のデソーレは、歌がうまいわけではないが典型的なイタリアン・テノールの美しい高音を持ち、声を堪能させてくれた。

日本人で主役を務めた中村は、出ずっぱりで体力を使う役を見事に歌い切った。さすがに世界一流とはいかないかもしれないが、来日した歌手に伍して立派な歌唱をしたのが良い。

コロナ以来、この2年間は外国人の来日が極端に減り、日本人の代役ばかり聞かされていたが、久々の来日メンバーで世界水準のオペラを聴くことができた。すっかり忘れていたが、この声がイタリア・オペラだよな、と久しぶりに思い出させてくれて、オペラの楽しさを満喫できた。

変な舞台ばっかり見せられてので、オペラの来シーズンの申し込みを躊躇していたが、やはり良いものが見たいと思って、申し込む決心も付いた。

30分の休憩をはさんで、終演はほぼ10時頃。レストランがやっていないので、家に帰って簡単な食事。ブロッコリーと生ハム、マイタケのホイル蒸し、トルティージャ・エスパーニャなど。飲み物はシャブリ。