劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

筑前琵琶演奏会

2018-12-25 10:46:26 | 音楽
12月24日(月)の昼に紀尾井ホール(小)で筑前琵琶の演奏会を聴く。14時に始まり、15分の休憩を挟んで、終演は16時20分ごろ。なぜかクリスマス・コンサートと銘打っていて、昨年に続き第二回となっている。小さな会場だが、入りは7割程度。

人間国宝の奥村旭翠の語りと演奏がメインだが、前座で5人による「安達ケ原」が演じられた。若い人(といってもそれなりの年齢だが)中心だが、声もよく出ていて、なかなか聴きごたえがあった。

メインの奥村旭翠は、源平の戦いから木曽義仲の部分を中心に語った。物語の背景は大阪の講談師旭堂南陵が20分間に渡り、いろいろと解説した。若干長いと感じたが、まあ、話は面白い。旭翠の語りは、さすがに人間国宝だけあって、安定しており、琵琶の響きも良かった。

近くで琵琶を見ると、五弦で、フレットがあり、なんとなく西洋の楽器リュートに似ている。恐らく、シルクロードを伝わって、日本にも伝来したのだろう。使われた撥は、三味線より平べったいもので、形も少し異なるが、しみじみとした情感から、戦場面の賑やかな響きまで、いろいろと多様な響きが出るので感心した。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。

「グレイテスト・ショーマン」を観る

2018-12-22 20:17:49 | 映画
衛星放送の録画で「グレイテスト・ショーマン」を観る。2017年のアメリカ映画で、サーカスで有名な興行師P・T・バーナムの伝記映画。ミュージカル仕立てになっている。バーナムは、3つのリンク(円形状の演技場)を持つリンク・リンク・リンク・サーカスの元祖と知られる人物で、アメリカではかなり有名な人物だ。

映画の題名にもなったが、「ペーパー・ムーン」という歌があり、その中の歌詞にも『バーナムとベイリーの世界』という歌詞で登場する。「紙の月」という「作り物の世界」というようなコンテキストでの登場だ。バーナムもベイリーもサーカスの世界の有名人だ。

しかし、バーナムがサーカスばかりかというとそうでもなく、いろいろな演劇や見世物なども興行していた。そういう意味では大興行師として有名なわけだ。確かな記憶ではないが、「1946年のジーグフェルド・フォリーズ」という映画があって、その一番最初の導入部の部分で、天国のジーグフェルドが登場して昔を語るのだが、シェイクスピア、P・T・バーナムの後に続く人物として、ジーグフェルドが紹介される。まあ、そういう位置づけとしてとらえられるのかも知れない。

この映画では、大サーカスの話は殆んど出ずに、初期のフリークスと呼ばれる奇形の人間を中心として見世物と、上流に受け入れられようと、オペラ歌手のジェニー・リンドのコンサートツアーの話を中心にまとめている。嘘ではないが、かなりいびつな見方だろう。ここに登場するフリークスたちは、かなり明るく陽気だが、実際にはもっと暗いものがあったに違いない。トーキー初期の映画「フリークス」を思い出す。ジェニー・リンドの歌う場面もあるが、オペラ歌手的ではなく、イメージが崩れる。

サーカスがメインになっても、こうした奇形的な見世物は続き、サーカスの横で演じられる附属的な「サイド・ショー」へと変わった。この辺りはブロードウェイのミュージカル「サイド・ショー」にも描かれている。

話しはこの映画に戻るが、音楽は「ラ・ラ・ランド」と同じ人のようだが、同じようにつまらないというか、ミュージカル向けの曲とはなっていない。また、台本も陳腐。監督も腕が悪いと来ては、まったく良いところのない映画だった。せめて19世紀後半の時代の雰囲気でも出ていればよかったのだが、このスタッフでも期待しても無理だろう。

新国立劇場の「くるみ割り人形」

2018-12-17 06:57:34 | バレエ
12月16日の昼に、新国立劇場で「くるみ割り人形」を観る。午後1時開演で、25分間の休憩を挟み、終演は3時35分頃。場内は満席で、子供連れも多かった。いつもは午後2時開始が多いのに、なぜ1時開演なのだろうとよく見たら、昼と夜の二回公演になっているからだと分かった。今回は全部で9回の公演。4人のプリマがクララを踊るが、小野絢子だけが3回出演で、米沢、木村、池田の3人は2回ずつ踊る。

イーリング版の「くるみ」を観るのは2回目だが、一幕は凄く面白くて今回も良いなあと思った。クリスマスの夜のパーティの場面も飽きさせないし、何といっても一幕最後の雪の結晶たちのコールド・バレエが面白い。この調子でと思うのだが、二幕になるとなぜか急にエネルギーが落ちる気がした。

2幕では、「夢の国」に着いて、ねずみの王様とくるみ割り人形の対決があり、くるみ割り人形が王子に変身する。そこまでは良いのだが、そのあとは、スペインの踊り、中国の踊り、アラビアの踊り、ロシアの踊り、蝶々の踊り、花のワルツ、金平糖の踊り、とディヴェルティスマンが続く。踊りを観るという点では、この場面が見どころのはずだが、これがあまり面白く感じられなかった。

ひとつには、音楽と振付がいま一つあっていない印象がある。テンポの遅い音楽と早い動きという組み合わせがどうも良くないような気がする。もう一つの問題は、これらの踊りがどんな場面で踊られているのか、ハッキリとしないことだ。たいていは、単なる踊りであっても、宮廷内の余興とか、結婚式のお祝いのような場面設定があるのだが、このイーリング版では、単にドロッセルマイヤーが踊らせるだけとの位置づけ。誰も見物している人がいないので、何のために踊っているのだろうという気がする。

装置や美術も気になる。なんとなくロシアっぽい建造物の背景だが、あまり美しくない。花のワルツの場面で出てくる大きな花や、花の色もなんとなくしっくりとこない。そうした観点で見ると、ねずみの衣装に愛嬌がない。もっと、一目でネズミとわかるような顔や体形の方が良いのではないかと思う。

一幕は凄くご機嫌だったが、二幕はなんとなく気が抜けてしまった気がした。そう言えば前回見た時もそういう印象だったと思い出した。二幕だけでももう少し練り上げると良いのになあと考えた。それでも、小野絢子と福岡雄大の踊りはきっちりとして、端正でいつみても良いなあと、見惚れていた。

新国立劇場の「ファルスタッフ」

2018-12-16 06:05:45 | オペラ
12月15日(土)の昼に新国立劇場で、ヴェルディのオペラ「ファルスタッフ」を観る。午後2時開演で、25分間の休憩を挟んで、終演は4時40分頃。4回公演の最終日だったが場内は満席だった。

ヴェルディ最後のオペラで、若干オケがうるさい気がするが、喜劇だし、気楽に見れて楽しい演目。このプロダクションは、ジョナサン・ミラーの演出がとてもよく、何度見ても面白い。イザベラ・バイウォーターの装置もよく工夫されていて、うまく考えたものだと感心してしまう。照明はペーター・ペッチニックで、まるでフェルメールの絵を見ているような光を感じさせてくれる。

原作はシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」などだから、当然衣装はイギリス風が正しいのだろうが、なぜかこの舞台ではオランダ風となっている。それでも、なんとなく、それでよいかと思わせてしまうような演出の説得力がある。

ファルスタッフのロベルト・デ・カンディアは、ほとんど出ずっぱりだが、体つきからしていかにもファルスタッフらしい好演で、相手役のマッティア・オリヴィエ―リと共に、演技、歌共に良かった。歌手陣は日本人も含めて充実しており、高い水準の舞台だった。日本人ではナンネッタ役の幸田浩子、メグ役の鳥木弥生が良く歌っていた。

オケは東京フィルハーモニーで、指揮はカルト・リッツィ。

観終わってすっかり気分が良くなり、帰りに行きつけのフランス料理屋で食事。ジビエの季節だが、最近は鳥インフルが流行していて、フランスから良い食材が入ってこないが、頼んでおいたら、鹿児島で捕った青首鴨が入ったとのことで、血を使ったサルミ・ソースで頂く。胸肉がしっとりしていて美味。前菜は豚の血を使ったブータン・ノワールのテリーヌだったので、ワインはプロヴァンスのしっかりした赤を選んだ。

国立劇場の「増補双級巴」

2018-12-11 11:23:35 | 歌舞伎
国立劇場で、12月11日の昼に「増補双級巴」を観る。石川五右衛門の話で、吉右衛門の宙乗りもあるためか、月曜の昼だが、劇場内は8割ぐらいは入っていた。石川五右衛門の誕生秘話から始まり、息子を人質に捕えて捕まるまでが、四幕九場にまとめられている。

通史での上演は長く途切れていたようで、チラシによると、70年ぶりとか、90年ぶりの上演場面もあるようだ。序幕、二幕、三幕、大詰めとそれぞれに見せ場が用意されていて、退屈はしないが、芝居としては深みがなく、面白くないかも知れない。一番面白いと思ったのは三幕で、五右衛門が勅使に化けて、将軍の別邸に乗り込み、金を巻き上げようとする場面だ。最後には身分はばれてしまうのだが、「ばかめ~」との言葉を残して、つづら抜け、宙乗りで立ち去るのは、「河内山」に似ている。

四幕は世話物風で、五右衛門の後妻と先妻との間の息子の折り合いが悪く、五右衛門がそれを苦にする様子が描かれるが、三幕との間で話が飛んでしまい、面白味が今一つ浮かびあがらなかった。

五右衛門を演じた吉右衛門は、盗賊の品のなさと、化けたときの演技などの対比が面白いが、それを追い詰める役を演じる菊之助は対峙すると貫禄負けしてしまう。脇も、歌六、又五郎、雀右衛門、東蔵、米吉などが揃っているので、安心して観ることができた。

ところどころにチョボが入るのもうれしいが、途中で、細竿三味線の大薩摩があって、久しぶりに美しい音色を堪能して満足した。

帰りは、いつものスペイン・バルで軽い食事。生ハムがいつもよりもおいしく感じたが、シェフに聞くと、同じ生ハムでも、部位によりだいぶ味が違うとのこと。