劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

藤原歌劇団の「ファウスト」

2024-01-28 10:59:34 | オペラ
1月27日(土)の昼に、東京文化会館でグノーのオペラ「ファウスト」を見る。長いオペラで、5幕構成、2時に始まり15分の休憩が2回入って、終演は5時50分頃。フランスのグランドオペラ風で、5幕には本格的なバレエも入っていた。結構観客が入っていて、9割近い入りだった。

主役のファウストには笛田博昭が予定されていたが、劇場に行ってみるとキャスト変更のお知らせが張り出してあり、村上敏明に代わっていた。酷いキャスティング。2年ぐらい前に、新国立劇場で代役で出演した村上がまともに歌えていなかったので、顰蹙を買ったのを忘れたのかといいたい。代役を立てるなら、ちゃんと歌える人を立てるべきだ。

バスのメフィストフェレスは、イタリアから呼んだアレッシオ・カッチャマーニで立派な歌唱。声も良くバスバリトンの美声を聴かせた。マルグリート役は砂川涼子で、安定した歌唱。最初は声が出にくい様子だったが、だんだんと調子を上げて、最後の方はよく声が出ていた。ほかのメンバーも概ね及第点。ただ一人ファウスト役のテノール村上敏明だけが、声が出ないだけでなく、高音になると声がひっくり返ってまったく歌えていない状況。一人でこのオペラをぶち壊した印象だ。笛田が歌えないならば、若い有望な代役を立てれば、いくらでも歌える人はいると思うのだが、藤原歌劇団の運営はまったくなっていないと思った。総監督と称している折江忠道は、何を見ているのだろう。こんな歌唱にも拍手してブラボーと叫ぶサクラがいるので、どんどんと観客の足が遠のくような気がした。歌劇団運営の猛省を促したい。

演出はイタリアのダヴィデ・カラッティーニ・ライモンディで、美術と衣装はドメニコ・フランキ。奇をてらった演出ではなく、オーソドックスで好感が持てたが、衣装がほとんど黒っぽいので、舞台が見にくいことおびただしい。こうした舞台でも正面からきちんと照明を当てれば、ちゃんと見えるはずだが、後ろのセットなどとの関係もあり、照明は上からが中心で、横からもあてていたが、正面が弱いので感心しなかった。

バレエはNNIバレエアンサンブルとなっており、男女のソロダンサーと6人のコールドで、伊藤範子の振付。最初の場面から少しダンサーが入ったが、5幕の有名なディヴェルティスマンはきちんと振付されていて、面白かった。これだけ本格的な踊りの入る作品の上演は少ない。

村上の酷さに呆れたが、全体としては面白い作品で、見る価値があった。帰りがけにフレンチのレストランで食事。サーモンの低温調理を前菜に、鴨肉のカシス煮込みを食べる。デザートはルバーブ。飲み物はミュスカデとロアールの赤。

エール弦楽四重奏団

2024-01-27 10:04:04 | 音楽
1月26日(金)の夜に文京シビックセンターでエール弦楽四重奏団を聴く。2階席は入れていなかったが、1階席はほぼ満席。それでも1階だけで1200席を超える大ホールだから、弦楽四重奏にはちょっと大きすぎる感じ。

2年前に計画されていた企画だが、コロナのために中止になったので、2年ぶりに実現した。エール弦楽四重奏団を聴くのは初めてだが、東邦音楽高校の同級生で結成して、それぞれが普段はソロ活動などをしているので、年に1度ぐらいしか演奏会を開けないと本人たちが話していた。それでも若い時から一緒にやって来ただけあって、呼吸もピタリと合い、良い演奏を聴かせてくれた。

メンバーはヴァイオリンが山根一仁と毛利文香、ヴィオラが田原綾子、チェロが上野通明。皆それぞれにすごい受賞歴の持ち主だが、ジュネーヴ国際音楽コンクールで2021年に優勝した上野のチェロが聴けるので楽しみにしていた。

曲目は、最初にドビュッシーの「月の光」があり、森円花の編曲による弦楽四重奏版だったが、これが素晴らしく美しい響きで、各楽器の特色ある音色を聞かせてくれたので、嬉しくなった。続いて、ドビュッシーの弦楽四重奏曲。美しい曲だが、ものすごく難しそうな印象で、こんな複雑な曲を良く書くものだと思ったが、演奏する側も見事で、弦楽四重奏の面白さを堪能した。

休憩の後はシューベルトの「死と乙女」。弦楽四重奏の定番で、長い曲だが、まったく退屈せずに聞いた。山根のヴァイオリンと、上野のチェロの音色の美しさが際立っていて、弦楽四重奏のグループの中でもトップクラスといえる演奏だと思った。アンコールにはハイドンを弾いた。これも音色が美しく、堪能。

すっかり良い気分で家に帰り、簡単な食事。シーザー風のサラダ、野菜スープ、特大クロスティーニ、鳥のパテ、豚肉のパテなど。飲み物はヴァン・ムスー。

N響のモーツアルトとベートヴェン

2024-01-26 11:12:06 | 音楽
1月25日(木)の夜にサントリーホールでN響を聴く。指揮はロシア出身のトゥガン・ソヒエフ。9割以上の入り。

前半がモーツアルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」。ソリストはN響のコンサートマスターである郷古廉、とヴィオラ首席の村上淳一郎。顔はよく見るが、ソリストとして演奏を聴くのは初めて。モーツァルトなので、小編成のオケと合わせる形で、室内楽的な音色を楽しむような曲。普段はヴィオラの音はあまり聞かないが、この曲ではヴァイオリンとの掛け合いを堪能できる。さすが、N響のコンマスや首席だけあって、素晴らしい掛け合いだった。アンコールでは、二人でモーツァルトの曲を弾いたが、これもなかなか聞きごたえがあって堪能した。できるならば、もう少し小さな会場で聴きたいと感じた。

後半は打って変わって大編成のオケで、ベートーヴェンの「英雄」。ソヒエフの指揮は、オーソドックスで、骨格のしっかりとしたベートーヴェン。久々に聴いたが、第四楽章が面白いという印象。N響の音は、上品で決して荒々しくは響かせない。これはオーケストラの個性だろうか。長い曲だが、退屈せずに聞いた。

帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン・セーラノ、ポテトサラダ、小エビのアヒージョ、メカジキの煮込みなど。

新国立劇場の「エウゲニー・オネーギン」

2024-01-25 11:12:18 | オペラ
1月24日(水)の夜に新国立劇場でチャイコフスキーのオペラ「エウゲニー・オネーギン」を見る。6時半開演で、30分の休憩が入り、終演は9時45分頃。観客の入りは少し薄い感じで、7~8割程度の入り。学生券が大量に出たのか、若い人も多い。

主要な5人は海外からの招聘だが、ロシア出身が3人、ウクライナ出身が2人。戦争をやっているのに、こんな配役が可能なのかと驚いた。主役のオネーギン役はウクライナ、相手役のタチヤーナはロシア出身という具合だが、この主役の二人は期待ほど声が出ておらず、残念だった。代わって良かったのが、レンスキー役のテノールのヴィクトル・アンティペンコ(ロシア出身)と、グレーミン公爵を歌ったバスのアレクサンドル・ツィムバリョク(ウクライナ出身)で、観客の拍手もこの二人に集中していた。特にツィムバリョクのバスは圧倒的な迫力があり、これまで聞いたバス歌手の中でも最高の部類だと思った。

このオペラはプーシキンの小説が原作で、チャイコフスキー自身が台本を書いてオペラ化したいるが、小説のエピソードがかなり大胆に省略されているので、オネーギンの性格や背景がわかりにくい印象がある。特に、1幕は長いだけで盛り上がりを欠く印象が強い。それでも、チャイコフスキーの音楽は良いので、人気がある演目だ。今回の上演は再演だが、セットや衣装は美しく作られており、照明もきちんとしているので、結構好きな演目だ。

今回の指揮は、ウクライナ出身でロシアで学んだヴァレンティン・ウリューピンで、オーケストラは東京交響楽団。まだ若いがとても良い演奏だった。

遅くなったので、家に帰って軽い食事。ソーセージ、生ハム、サラミ、キャベツのサラダ、ポークペーストとフランス風の田舎パンなど。飲み物はボルドーの白。

ミハイル・プレトニョフ指揮の東京フィルハーモニー

2024-01-24 10:51:38 | 音楽
1月23日(火)の夜に、サントリーホールで東フィルのコンサートを聴く。ミハイル・プレトニョフ指揮、ピアノはマルティン・ガルシア・ガルシア。観客は7割程度の入りで、空席も結構あった。年齢層は比較的若く、外人客も多かった。

最初はシベリウスの組曲「カレリア」。続いてガルシア・ガルシアのピアノによるグリーグのピアノ協奏曲。ガルシアはスペイン出身で、使ったピアノがイタリアのファツィオリだったので、ちょっと驚いた。ショパン・コンクールなどでは時折見かけるが、サントリー・ホールのコンサートで使われるのを見たのは初めて。ガルシアの弾き方は力強さが優先で、迫力のある演奏。ファツィリオの派手な明るい音と相まって、力強いグリーグだった。先日聴いた藤田真央の、繊細な演奏とは正反対の弾き方だが、これはこれで面白かった。

休憩の後はシベリウスの交響曲2番。シベリウスの曲らしく、金管楽器が活躍する曲だが、弦楽器もなかなか面白い。プレトニョフは60歳代半ばだろうが、あまり身体を使わずに、大事なところだけキューを出すような落ち着いた指揮。しかし、演奏は結構メリハリがあって、東フィルがエネルギッシュで迫力ある演奏を行った。よく言えばエネルギッシュ、悪く言うと粗雑な感じもある。それでも、長い曲を退屈させずに聞かせたのはさすが。

15分の休憩を挟んだが、終演は9時20分頃で、少し長めのコンサートだった。雪が降るかも知れないという予報だったので、スーパーで買い物して家で食事。生ハム、サラミ、ブリー、クリームチーズ、ブルーチーズ、イワシのオーブン焼きなどを肴にして、ヴァン・ムスーとシェリーを飲む。