劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

オーケストラ・アンサンブル金沢

2020-10-26 13:21:06 | 音楽
10月25日(日)の午後に文教シビックセンターで、オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏会を聴く。原田慶太楼指揮、ヴァイオリン独奏大谷康子、ピアノ独奏横山幸雄という顔合わせ。15時開演で、15分間の休憩をはさみ、終演は17時15分ごろだった。千鳥格子の配列の座席で、9割程度の入りか。

前半の1曲目はヴィヴァルディの四季から「春」と「冬」を弦楽アンサンブルと大谷康子のヴァイオリン独奏。2曲目はメンデルスゾーンの交響曲「イタリア」。休憩の後、メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」のスケルツォがあり、最後は横山幸雄ピアノによるショパンのンピアノ協奏曲2番だった。

大谷康子のヴァイオリンはヴェテランで、さすがに美しい音色でヴィヴァルディを聞かせた。メンデルスゾーンの「イタリア」は唯一アンサンブル金沢だけの演奏。この楽団は40人弱の室内オーケストラで、本来ならばもっと小さな会場のほうが良いかもしれないが、頑張って大きな会場でも十分な音色で聞かせた。

横山氏のショパンは初めて聞いたが、うまくメロディを歌わせて、酔いしれるような演奏でなかなか良いと思ったが、銀ラメみたいな上着で演奏するので、なんとなくナイトクラブの演奏を聴いているような気分になった。ここでのオーケストラは伴奏に徹していた。

オーケストラ金沢というのは、石川県や金沢市がサポートする小規模なオーケストラとして活動しているらしい。規模的には紀尾井ホールの室内オーケストラと同じぐらいの規模で、小ぶりの会場で聞くならば十分だと感じさせる。100名編成のオーケストラを抱えるのは大変だろうから、地方でこうした規模のオーケストラが活躍するといいなあと思った。

最後のアンコールでは、横山氏大谷氏によるチャールダッシュの演奏で盛り上がった。結構サービス精神旺盛な演奏会を楽しんだ。帰りがけに後楽園のラクーアを覗くと、日曜日の夕方なので子供を連れた家族で結構混んでいたので驚いた。コロナなどどこ吹く風といったムード。久しぶりの晴れた休日を皆楽しんでいた。

帰りがけには行きつけのフランス料理店で夕食。サーモンの低温調理、牛ほほ肉の赤ワイン煮込み、ヌガーグラッセ、ワインはプロヴァンスの赤を選んだ。

新国立劇場の「ドン・キホーテ」

2020-10-25 10:00:08 | バレエ
10月24日(土)の昼に、新国立劇場でバレエ「ドン・キホーテ」を観る。最初は千鳥格子の座席で発売され、その後に間の空いた席が発売されたので、今回も二人で行くと間に知らない人がいるパターン。仕方がないので、席を変わってもらった。今回は人気演目ということもあるのか、劇場全体では8割ぐらい埋まっていた。1階席前方3列は今回も発売していない。連絡先を書く紙が事前に送られてきており、連絡票の提出、サーモカメラによる検温、手の消毒、チケット確認という順序で、比較的スムーズに流れていた。とにかく、通常公演のスタイルに戻りつつあるのはありがたいことだ。間に25分間の休憩が二回あり、1時30分開演で、4時20分ごろ終演。

通常の公演体制に戻ったとは言え、演目は当初の計画通りにはいかず、今回の「ドンキ」も昨シーズンの持越し、来年予定していたニューイヤーバレエ、吉田都セレクションなどの新規製作はいずれも実現できず、旧作への差し替えが発表されている。残念なことだが、外国との交流が止まってしまったり、十分な練習時間が取れないなど、いろいろな課題があるのだろう。それでも本格的なバレエを観るのは、7か月ぶりだったので、うれしかった。

今回も新国立のプリマが5人ほどキトリを踊るのだが、だれで見るのか困ってしまう。熱心なファンの中には全員を観る人もいるようだが、日程が続いているのを観るのはつらいので、今回は木村優里と渡邊峻郁という若手のホープを観ることにした。この演目は最後に32回転の見せ場があるので、ベテランならば米沢唯だろうが、彼女のキトリは何回か見ているので、今回は木村優里にしたわけだ。

木村優里の踊りは、表現力はまだ工夫の余地があるのかもしれないが、華やかさがあって、見ていて楽しい。特に回転に関してはすごい。今回も最後のグランフェッテは、1回転1回転3回転というパターンを繰り返し、おまけに3回転の時に扇を広げて見せるという離れ業を見せ、しかも安定しているので驚いた。最後の締めくくりの回転も高速なので、音楽が追い付かないくらいだった。

渡邊峻郁は立ち姿が美しく、背も高いので、木村優里と組むにはとても良い感じ。最初の登場の時のジャンプがとても高かったので、それだけで感動してしまった。リフトも高く、日本でもこうした水準の公演が楽しめるのは本当にありがたいことだ。

そのほかでは、闘牛士役の井沢駿も印象に残る踊り。凛々しい漫画の王子のような美しさで踊る。普段はサポート役が多いが、こうした役で踊ると個性が光ると感じた。

オケは、冨田実里指揮の東京フィル。冨田実里はバレエを得意としているだけあって、実にピタリと踊りと合わせた音楽で気持ち良い演奏だった。

すっかり気分を良くして、帰りに買い物して帰り、家で食事。サラミ・ソーセージ、大根のサラダ、メインは真鯛のポワレを作った。ワインはポルトガルの白。ポルトガルは小さな国だが、地形が複雑で、ワインの水準も高い。

辻井伸行のベートーヴェン

2020-10-16 11:00:54 | 音楽
10月15日(木)の夜に、紀尾井ホールで辻井伸行のオール・ベートーヴェン・プログラムを聴く。ソーシャル・ディスタンス公演と銘打って、50%しか入れない千鳥格子の客席で、ほぼ満席。辻井氏の公演は人気があって、チケットが手に入れにくく、発売と同時に売り切れてしまうが、今回は何とか手に入れた。7時開演で、途中20分の休憩を挟み、終えんは9時ごろだった。客層は女性比率が高く7割近い印象。年齢層も年金生活者層ではなくもう少し若い40歳ぐらいという感じだった。

入り口では、検温、チケット確認して自分で半券を箱に入れ、手の消毒という順序。チケットをもいでから手の消毒のほうが、手が空くので順番としてはスムーズな感じ。座席番号と連絡先は今回は書かされなかった。チケット発売時の情報で十分なのだろ。

プログラムは、前半が「月光」と「ワルトシュタイン」、後半が「ハンマークラヴィーア」だった。プログラムによると、辻井氏は2009年に優勝したヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの予選でもこの曲を弾いたという。どの曲も聞きごたえがあり、ベートーヴェンは思いのほかいいなあと、改めて感じる。

ソロ・リサイタルを聴くと、なぜ彼がこんなに人気があってチケットが取りにくいか、わかるような気がした。音がきれいに澄んでいるというか、一音一音がクリアに聞こえて、心まで洗われるような気分になるからだ。音の強弱も明確で、演奏に思わず引き込まれる。もちろん弾き方がよいのだろうが、ペダルの使い方がとても控えめなので、クリアな音になるのではないかという気もした。

どの曲もよいが、ハンマークラヴィーアの第4楽章後半のアレグロ部分の対位法的な展開が、右手と左手だけでなく、3声、4声のメロディがそれぞれ独立してくっきりと聞こえるのは、素晴らしいと思った。

チケットが入手出来たらまた聴きたいと感じたのは言うまでもない。

すっかり気分がよくなり、帰りはいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、バスク風のカニグラタン、サーモンのシードル・ソースなどをいただく。

国立劇場の菊五郎

2020-10-14 13:37:43 | 歌舞伎
10月13日(火)の夕方から国立劇場で歌舞伎を観る。菊五郎の「魚屋宗五郎」と、松緑の「太刀盗人」の二本立て。久々の歌舞伎で楽しみにしていったが、あまりにもガラガラなので驚いた。

例年この時期の国立劇場の歌舞伎は、復活狂言などの通し演目が多く、12時開演で16~17時ごろに終演というパターンが多いが、今回はコロナの影響から、ミドリでの上演で1部が梅玉の「ひらかな盛衰記」と常磐津の所作物。そして2部が「魚屋宗五郎」と「太刀盗人」となっている。

1部も2部も、前半の芝居が1時間15分、食事休憩が30分あって後半の所作芝居が45分となっている。今回の2部は、3時30分に始まり、終演は18時だった。入口で手の消毒、検温を受けて、入場券の確認と自分で半券をちぎって箱に入れるいつものパターン。座席は千鳥格子だから、全部入っても5割だが、ざっと見たところ2割も入っていない印象。これでは演じる方も張り合いがないだろうという気がする。

それでも「魚屋宗五郎」は菊五郎のお家芸だから、安心してみていられるし、やはり菊五郎はうまいと堪能する。女房役の時蔵もうまい。この二人が演じれば、後はまあそれなりでよいという感じ。左団次も出てきたが、体調が完全ではないのか、声に力がない感じ。

後半の「太刀盗人」は狂言を歌舞伎にしたものだが、踊りが中心なので、松緑の良さが光った。

久しぶりの歌舞伎でうれしかったのだが、歌舞伎座も4部制の細切れで客の入りは悪そうだし、通し狂言で見せる国立劇場も何となく歌舞伎座みたいな演目になってしまい、このままだとちょっと心配だ。

コロナの時代となって見直すのは、演目というよりも、食堂営業の方ではないかという気がする。なまじっか国立劇場に食堂を維持しているがゆえに、今回も11時開演と3時半開演の2部制となっているし、30分もの食事休憩を作らねばならないのだろう。いっそのこと、2時開演で6~7時ごろに終わる形で、通し狂言を上演したらよいのではなかろうか。

新国立は早々と千鳥格子の座席配列を止めたが、国立劇場の歌舞伎は11月も千鳥格子配列の売り出しとなっている。どおせ人が入らないから、そのままという判断なのだろうか。早く、きちんとした公演に戻ってほしい気がする。

家に戻って食事。キャベツとソーセージなどのトマトスープ煮込みで、お酒はイタリアのスプマンテの辛口。

新国立劇場の「夏の夜の夢」

2020-10-09 10:45:12 | オペラ
10月8日(木)の夜に、新国立劇場でブリテンのオペラ「夏の夜の夢」を観る。18時30分開演で、25分間と20分の休憩をはさみ、終演は22時5分ごろだった。チケットは最初に千鳥格子の席で売り出されたが、その後フルに入れるようになって追加発売されたので、一緒に行った連れとの間にほかの人が入るという珍妙な状態になったが、席を代わってもらい並んでみることができた。新制作のオペラだが、来日キャストが全部キャンセルになって日本人キャストになったにも関わらず、チケットの値段が下がるわけでもないので、客席はガラガラというか、半分ぐらいしか埋まっていなかった。

入り口では相変わらず、連絡先の記入、体温測定、手のアルコール消毒があり、劇場内の飲食の売店も全部閉まった状態。客席は全部入れてもよいことになったようだが、男性用トイレの小便器は一つ置きに使うように半分は使用禁止となっていた。いろいろと問題はあるが、ひとまず普通にオペラを観れるようになったのはありがたい。

合唱も含めて、特にフェイス・シールドなどなしで演じていたが、普通だったら対面で歌う恋人同士の場面も、二人とも正面を向いて客席に向かって歌うなど、演出はそれなりに工夫している様子だった。劇場の1階席前3列は空けていたが、オーケストラピットもあるので、3列も空ける必要はないように感じられる。

さて、「夏の夜の夢」はシェイクスピアののオペラ化だが、メンデルスゾーンの音楽のバレエ作品を何度も見ているので、何となくそれと比べてしまうが、オペラ版はよりシェイクスピアの原作に忠実で、歌詞もシェイクスピアの書いたセリフをそのまま使っている部分が多いような印象だった。ブリテンの音楽なので、メンデルスゾーンなどよりはるかに現代的で、変な音だなと感じる箇所も多いが、まあ作曲家の個性だろう。

演出はイギリスのものをそのまま持ってきたようで、演出家も来日せずにオンラインで接続して演出したようだ。日本側のスタッフが頑張ったせいか、まったく違和感のない演出でよかったが、ほとんどが夜の森の中の場面ということもあり、全体的に照明が暗く舞台が観にくいという問題はあった。舞台の縁には、昔風の貝殻型のフットライトがいくつか置いてあって、何か効果的な使用があるのかと期待していたが、結局、ほとんど使われなかったのは、当初の演出プランと変わったためなのだろうか、ちょっと気になる。

肝心の歌唱だが、日本人キャストは頑張ったのだろうが、大劇場で歌うと弱さを隠し切れない印象だ。全体的に女性陣の方がよく、男性陣は負けていた。それでもベテランのバス妻屋秀和などは安定した歌唱で安心できる。女性で一番良かったのはヘレナ役の大隅智佳子で、よく声が出ていた。全体的にこのレベルで歌ってくれれば良いのだがと感じる。男性ではパック役の河野鉄平が演技も歌もよかった。

妖精の王オベロン役はカウンター・テナーの藤木大地だが、声が弱すぎて大劇場では不満が残る。カウンター・テナーはもともとカストラートの代用みたいなものだから、高い声が女性よりも強く出なければ存在価値はないのだが、こんなに弱弱しい声で歌うならば、女性歌手がズボン役で演じた方がましだという気がする。オペラなのだから、珍しいカウンター・テナーというだけではだめだろう。

ブリテンのこの作品は初めて見たが、正味3時間ぐらいあり、ちょっと長すぎると感じた。3幕の職人たちの芝居部分が長すぎて退屈する。シェイクスピアの元の芝居に忠実に書いたのだろうが、この部分は職人芝居が退屈で、それを見ているカップルたちの会話が逆に盛り上がるという場面ではないかという気がする。それをうまく音楽的に表現できていないために退屈してしまうのだろう。

もともと、妖精たちの話、二組の恋人たちの混乱、職人芝居の話と、3つの要素が絡み合っているので、台本の整理が難しいのだろうが、バレエのように大胆に話を簡略化しないと、かえって面白みが損なわれるような気がした。

雨が降っていて夜も遅かったので、家にまっすぐ帰って軽い食事。サラダ、カボチャのスープ、アラブ風の炊き込みご飯などを食べる。飲み物は白ワイン。