劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立劇場の「ドン・キホーテ」

2023-10-29 10:34:31 | バレエ
10月28日(土)の夜に新国立劇場のバレエ「ドン・キホーテ」を見る。10日間で10回公演、5人のプリマが交替で2回ずつ踊る。誰の踊りを見るか迷うし、何人か見たいが10日間に何回も見るのも気乗りしない。こんなに集中せずに、2か月間ぐらいで公演してほしい気がする。今回は木村優里と渡邉峻郁の回を見に行った。木村優里が今年の初めから体調を崩して休演していて心配していたので、回復した元気な姿を見たかったからだ。土曜の夜だったが、ぎっしりと満席で子供連れの姿も多かった。

「ドン・キホーテ」は数あるバレエの中でも、文句なしに楽しさに溢れた作品で大好きだ。見どころも多い。こんな風に無条件で楽しめる作品は、この作品と「ラ・フィーユ・マルガルデ(リーズの結婚)」ぐらいではないかという気がする。

今回の公演では、木村優里のほかにも町の踊り子役で柴山紗帆が、エスパーダ役で井澤駿が出演、ガマーシュは奥村康祐という豪華な顔ぶれなので、とても充実した舞台だった。

木村優里はすっかり回復したようで、出てくるだけで華やかな可愛さを振りまき天性のスポンタニティを感じた。上背があり、サポート役の渡邉も長身なので、高くサポートしてポーズを決めると、本当に美しく、迫力も満点だ。相変わらず木村の回転は素晴らしく、最後のグランフェッテでは3連続回転を何度も盛り込んでいた。渡邊も負けてはいない。素晴らしいジャンプを見せて観客を魅了した。

柴山と井澤の踊りも美しく、本当に充実した舞台だと思った。キトリの二人の友人を踊る山本と花形はまだ若いアーティストだが、二人ともよく踊っており、新国立バレエ団の層の厚さを感じた。

オーケストラは冨田美里指揮の東京フィル。今回の公演ではオランダから招聘したマシュー・ロウが8回、冨田が2回振ったが、冨田もバレエを専門にしているだけあって、なかなか良い指揮だと感じた。

充実した公演を見て大満足となり、帰りは居酒屋で軽い食事。冷ややっこ、ポテトサラダ、エビの刺身、焼き鳥などを食べながら、ビールと日本酒を飲む。

読響と宮田大

2023-10-28 14:26:51 | 音楽
10月27日(金)にサントリーホールで読響を聴く。前日もN響のコンサートがあったので、二日続けてのサントリーホール。N響と比べると、読響の方が観客は随分と若い気がする。9割程度の入り。セバスティアン・ヴァイグレの指揮で、宮田大のチェロによるプロコフィエフの「交響的協奏曲」、15分雄休憩の後にハチャトリアンのバレエ音楽「ガイーヌから」と、ストラヴィンスキーの「火の鳥」というロシアプログラム。なぜなのかわからないが、この日の読響はホワイトタイの燕尾服姿。N響はいつもホワイトタイだが、読響は黒シャツと黒ズボンという軽装が基本となっていたのに、急に変わったので驚いた。

前半のプロコフィエフは、宮田大が弾きたかった曲らしいが、スターリン時代の末期に書かれた音楽で、何か重苦しい雰囲気がある。チェロの独奏部は超絶技巧的な部分が多く、宮田大の腕を見せるのには良いかも知れないが、曲としてはちょっと退屈した。アンコールにはラフマニノフの「ヴォカリーズ」を弾いたが、これは美しい旋律を音色で聴かせる曲なので、堪能できた。

後半はバレエ音楽が二つ。ハチャトリアンもスターリン時代の音楽だが、バレエ曲でリズムがしっかりしているし、民族音楽的な部分もあり、にぎやかで無条件に面白い。特に「剣の舞」の木琴を女性が担当していたが、見ているほうが心配になるぐらいの高速演奏で、技を見たという感じ。楽団員ではなさそうで、木琴の専門家かなと思った。

最後はストラヴィンスキーで、バレエ曲の割にはリズムがしっかりしておらず、踊りにくい曲なのではと思う。ロシア革命前の曲なので当時の前衛的なムードがあり、聴いていて退屈はしない。ヴァイグレの指揮は何を演奏しても飽きさせずにうまいと思う。さすが常任指揮者だけのことはあると思った。丁寧な観客へのあいさつぶりを見ていると、真面目そうな性格が感じられた。

金曜の夜でハロウィン直前ということもあり、食事をするところは何処も混み合っていたので、家に帰って食事。高いトマトを入れたサラダをたっぷり食べ、生ハム、サラミ、ソーセージなどを食べながら、カヴァを飲んだ。

N響のベートーヴェンとブラームス

2023-10-27 11:16:34 | 音楽
10月26日(木)の夜にサントリーホールでN響を聴く。9割程度の入りで、マスク比率は2割程度か。プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」とブラームスの交響曲3番。

スウェーデンの指揮者ブロムシュテットが振る予定だったが、直前に来日がキャンセルされたため、ベテランの尾高忠明に代わった。ブロムシュテットはもう90歳代半ばで、昨年ぐらいから椅子に腰かけて指揮するようになり、日本だけでなく欧州でも腰かけて指揮しているようなので、体力的に大丈夫かちょっと心配だ。本人からのメッセージでは、来年は来日したいとのことだった。

前半のピアノ協奏曲はノルウェイのレイフ・オヴェ・アンスネスがピアノを弾いた。53歳のピアニストだが、若々しい演奏で、正確に透明感のある音で演奏した。きっちりと端正な感じで、崩れたところがなく、楷書体の演奏。気持ちよく聞けるが、あまりにきっちりしていて、途中でちょっと退屈する印象。カデンツァ的な部分はもう少し個性を出しても良いのではないかと思った。アンコールもベートヴェンのピアノソナタを弾いた。

20分の休憩後、尾高指揮によるブラームス。これも生真面目な演奏で、盛り上がりを欠いた印象。それでもブラームスらしい曲なので、それなりに楽しめる。

帰りがけにいつものスペインバルで軽く食事。トルティージャ、ハモン、ナスのコルドバ風天ぷら、生ハムのクリームコロッケ、秋鮭のリンゴ酒ソースなど。

太陽劇団の「金夢島」

2023-10-25 15:18:08 | 演劇
10月24日(火)の夜に池袋の東京芸術劇場プレイハウスで、太陽劇団の「金夢島」を見る。午後6時開演で、15分の休憩を挟み、終演は9時半ごろ。ほぼ満席で、演劇関係者ばかりという印象。太陽劇団はフランスで1960年代から活躍する劇団で、世界的な注目を浴びているが、今回は22年ぶりの訪日公演。前回は新国立中劇場で「堤防の上の鼓手」を上演した。主宰しているムヌーシュキンがもう80歳を超えているので、今回の来日が最後ではないかと思い、見納めのつもりで見に行った。

太陽劇団の作劇法は、世界の各地を訪問してその地の芸能を取り入れた作品を作ることで知られており、前回の「堤防の上の鼓手」では文楽の技法を取り入れていた。今回も日本をテーマとして日本の仕舞などを取り入れた舞台となっている。

フランスの高齢の女性が、病を患い自分が日本にいると思い込んで日本の夢を見る。日本の金夢島では、女性市長が世界各国から劇団を招いて演劇祭を開催しようと準備しているが、予算の確保に苦労している。そこへフランス人やブラジル人の大金持ちが現れて、スポンサーになりたいと持ち掛けるが、実は彼らは港を埋め立ててリゾート付きのカジノを建設しようとしている開発業者の手先であり、自然を守ることや漁業者の生活には関心がない。

演劇祭のために、世界各国から一風変わった人々が集まり、アラブとイスラエル、香港や中国、コロナ、アフガニスタンの問題などが取り上げられるが、最も鋭い矛先は中国に向けられていた。いろいろと世界の課題が提示されるが、問題の根本はバベルの塔で世界の言語が多くに分かれたために意思疎通が難しくなったと暗示され、希望を失わずに、明日に希望を持とうという形で締めくくられる。最後の場面は、出演者全員が、ヴェラ・リンの歌う「いつかまたどこかで会いましょう」という歌に乗せて、仕舞を舞いながら終わる。

ヴェラ・リンの歌う「いつかまたどこかでお会いしましょう」という曲は、スタンリー・キューブリックの映画「博士の異常な愛情」の最後で、原爆が次々と爆発する場面の背景に流れた曲として有名。もともとは第二次世界中の1943年に作られた英国映画「また逢いましょう」の曲だが、1939年に大ヒットしたもの。第二次大戦に出征した兵士たちが愛唱したという。今回の舞台ではヴェラ・リンの歌の後に男性コーラスが流れたので、恐らくは映画のサウンドトラックからとられた録音ではないかという気がした。

日本をテーマにしたとの話だが、本当のテーマは世界の分断と、いつかまた逢いましょうと言う希望だったような気がした。演劇祭の劇団の演技がたくさん詰め込まれたので、全体的に整理が悪く、統一された物語がないので、面白みを欠くが、舞台の作りは60年代末から70年代の前衛劇の熱気を持ち続けており、いかにも太陽劇団らしい面白さがあった。

帰りにスパイス料理屋で軽い食事。スペインのテンプラニーニョを飲みながら、ニンニクポテトサラダ。チョリソーときのこの炒め物、鶏肉と野菜のガラムマサラ炒めなど。

東京フィルのラフマニノフ

2023-10-22 15:01:29 | 音楽
10月21日(土)の昼に、文京シビックセンターで東京フィルのラフマニノフ・プログラムを聴く。9割以上の入りで、年金生活者が多いが若い人もちらほら。15時開演で、20分の休憩が入り、終演は17時5分頃。指揮は角田鋼亮、ピアノ独奏は森本隼太。

最初にチャイコフスキーの「眠りの森の美女」のワルツがあり、続いて森本のピアノが入り、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。「狂詩曲」と名前が付いているが、実質はパガニーニの主題を変奏していくオケとの協奏曲。ピアノの森本はまだ19歳という若手。指はよく動くが、オケとの掛け合いなどの面白みがあまり感じられなかった。テクニックは優れるが感情表現等はこれからなのかも知れない。アンコールでスクリャービンを弾いたが、その方がずっと面白かった。得意な曲というのがあるのだろうか。

今年はラフマニノフ年ということで、良くかかるが、後半は珍しい大曲「交響曲2番」。1時間もかかる大曲だが、繰り返しも多い。角田の指揮は生真面目というか、端正だが、ラフマニノフらしい響きがオケから聞こえてこない。ラフマニノフを聴いた気にならずに終わってしまった。角田もサービス精神旺盛で、オケでは珍しくアンコールでチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」を演奏した。こちらの方が魅力的に感じたのは気のせいか。

寒風が吹き始めたので、ちょっと気が早いが帰りがけにフグ屋で食事。湯引き、てっさ、白子焼、鍋などを食べる。飲み物はビールとヒレ酒。