劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

国立劇場50周年の仮名手本忠臣蔵

2016-12-30 14:20:31 | 文楽
今年は三宅坂の国立劇場開場50周年ということで、歌舞伎と文楽で仮名手本忠臣蔵の通し上演があった。

大序から11段目までの通し公演だが、歌舞伎は10月から12月までの3か月間。文楽は12月だけでの通しだ。歌舞伎の方は3か月間あるので余裕があり、完全なうえに余分なところまで付け足しての上演。文楽の方は、いつもは11時開演のところを30分早めて10時半二開演するが、終わりもいつもより遅く21時半の終演だった。

朝から夜までなので、観る方も大変だが、演じる方も大変だろう。だが、文楽公演は東京で4か月、大阪で4か月、地方で4か月とパターンが決まっているから、東京での2か月連続公演はちょっと難しいのかもしれない。何しろ11段構成で長いから、途中の休憩時間なども短くして、トイレも長蛇の列だ。そのため、大劇場のトイレも抜け道を通って使わせてくれた。

戦後すぐに東横劇場で忠臣蔵の通しを文楽でやったときに、夜中の12時を過ぎても終わらずに大変だったというのを本で読んだことがあるが、仮名手本の通しは、大阪文楽劇場などの記念でもやっているので、さすがに時間通りにピタッと終わった。

今回は歌舞伎の完全上演と一緒にやったので、文楽と歌舞伎の違いが良く分かってよかったのだが、文楽の方は、何とか上演時間内に収めるために、何か所かカットしているのに気づいてしまった。

二段目の桃井若狭助館の段は歌舞伎でもほとんど出ない場だが、文楽の方では前段の力弥が上使となって口上を伝えて、加古川本蔵の娘小浪が受ける場面がカットされてしまった。後半の八段目、九段目で二人のエピソードが描かれるわけで、その背景となる場面なので是非とも入れてほしかった。

四段目の切腹の後も、評定がなくて、直接城明け渡しとなる。この評定の場面は侍たちの葛藤だけでなく、悪役として描かれる斧九太夫の性格がよく出るところなので、抜けるとちょっと寂しい。

もう一つ十段目でもカットが気になった。十段目は天川屋の場面で、商人が体を張って武士を助ける場面で、死を覚悟して天川屋は女房を離縁して実家へ戻すのだが、その女房のエピソードがカットされたので、大星由良助の最後の台詞が意味不明になってしまう。

時間の制約があるのはよくわかるが、あと1時間早く朝の9時半から始めれば、カットなしの上演もできるのではないだろうか。ぜひそうした完全上演を見てみたいものだ。

前半の山場は四段目の塩治判官切腹の段で、咲太夫が切りを語る。高齢の大夫がみな引退してしまったために、後半は若手中心となるが、こちらもなかなか良い。特に六段目の一力茶屋は呂勢太夫のおかると咲甫太夫の平右衛門という組み合わせに勢いがある。人形も蓑助のおかるに勘十郎の平右衛門という豪華メンバー。九段目の山科閑居の段の千歳太夫、文字久太夫も熱演だった。

やっぱり、12月に仮名手本忠臣蔵は欠かせない。