劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立の「くるみ割り人形」

2022-12-25 10:32:05 | バレエ
12月24日(土)の夜に、新国立劇場でバレエ「くるみ割り人形」を見る。クリスマス・イヴの夜だが、場内は満席。子供連れも多い。12月らしい演目といえば、歌舞伎ならば「忠臣蔵」、オペラなら「こうもり」、オーケストラなら「第九」だが、そのどれも見なかったので、今年は「くるみ」が唯一の12月らしい演目となった。

新国立での上演は、12月23日から1月3日までの13回公演。大晦日や元旦も休まずに公演する。毎年同じ演目をやらなくても良いような気がするが、人気演目で客が入るから、新国立劇場も稼ぎたいということだろう。キャストは5組あるので、どの踊り手を見るか迷う。ベテランの良さを取るか、若手の力量を見るか、両方にするかと迷うところだが、今回は若手のホープ木村優里と渡邊峻郁の回を取った。

新国立の「くるみ」は数年前にイーリング版になったが、複雑な振付なので、見るたびに新発見がある。2幕のディヴェルティスマンなどは、細かな技巧が満載といった感じだが、よほど注意してみていないと気付かない。だが群舞などはフォーメーションの変化が楽しく、無条件に楽しめる。特に1幕終わりの「雪の精」の踊りや、2幕の「花のワルツ」は何度見ても見飽きない面白さがある。「雪の精」ではコーラスが客席の2階の下手、上手側で歌う演出が久々に復活した。この場面のコーラスは音の響きが変わって面白いのだが、コロナのためここ数年は舞台奥で歌っていたが、それが復活したのはうれしい。ただ、まだマスクをして歌っているのはちょっと興ざめだ。

コロナの余波で、1階席の前2列は観客を入れていないが、どうしてこんなバカげたことを続けるのかと思ってしまう。バレエなので声を出すわけではなく、新国のオケピットはかなり広いので、オペラだって最前列まで入れて問題ないと思う。サントリーホールなどでは、とっくに最前列まで入れている。

木村優里は久々に見たが、デビュー当時の初々しい新鮮さはなくなって落ち着いた踊りになった印象。これからが実力が問われそうな気がするので、ぜひ頑張って大プリマになってほしい。渡邊峻郁は、王子然としたたたずまいが本当に良い。踊りもきちんとしているし、ファンを集める力があるように感じた。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。クリスマス・イヴだが、それほど混んではいなかった。トルティージャ、ハモン、クリーム・コロッケ、イワシのエスカベッシェ、牛ほほ肉の赤ワイン煮込みなど。

国立小劇場の文楽「本朝二十四孝」

2022-12-20 10:33:21 | 文楽
12月19日の夜に国立小劇場で文楽「本朝二十四孝」を見る。最終日だったせいか、ほぼ満席。今回の公演は二段目と四段目を上演する半通し。17時に始まり、25分の休憩を挟み、終演は20時48分。

12月はベテランの出ない、若手、中堅の公演なので、上演のレベルはあまり期待できないが、二段目と四段目を続けてみる機会は少ないので、楽しみにしていた。歌舞伎では四段目の「十種香」の場面がよく出るが、通しはほとんどないので、今一つ物語や人間関係がわからないが、半通しで二段目が付いていると、全体の人間関係がわかって面白い。ぜひとも初段からの通しを上演してほしいものだ。

人形も太夫も若手中心だから、正直言ってレベルが低い。それでも、前半の織大夫は立派に語り、籐太夫もそこそこの水準で楽しめた。問題は後半の四段目で、十種香の場面は呂勢太夫が語ったが、不調なのかあまりよろしくない。この人の持ち味は高い声の美しさにあるのだが、低い声が妙に聞き取りにくい発声で、声も出ていなかった。奥庭狐火の希太夫は相変わらず聞いていて不安になるような調子だが、それでもこの場面は人形が大活躍し、三味線の清志郎が気迫のこもった演奏をしたので、それなりに見れた。最後の道三最後の亘太夫もこの場を語るには力不足。太夫は本当に人がいない。

それでも、四段目の最初の景勝上使を語った碩太夫は、今後の伸びが期待できそうで、こういう太夫が何人か出てくれるとありがたい。まだ若く見えたが、発声がきちんとしており、声がよく出たのが良い。また、音程もしっかりしていて調子っぱずれにならない。情感を込めた語りという点ではまだまだだが、これからの伸びに大いに期待できると感じた。

寒いので、急いで家に帰り軽い食事。キャベツのサラダ、豚肉のロースト、チーズなど。飲み物はシャルドネ。

オペラ「ショパン」

2022-12-18 09:58:28 | オペラ
12月17日(土)の昼に、東京文化会館小ホールで、オペラ「ショパン」を見る。こんなオペラがあることは全く知らなかったが、珍しい演目なので、とりあえず見ようと思った。たった1回の公演なので、小ホールは満席だった。

ジャコモ・オレーフィチェというピアノのうまかったイタリア人の作品で、生涯に11作品のオペラを書いたが、その中では一番有名らしい。ショパンのいろいろな作品の旋律を使っており、これは聞いた記憶があるという旋律が出てくる。話の内容は、ショパンの生涯を描くものだが、中身は全くの創作のようだ。4幕構成で、1幕はポーランドがロシアに攻め込まれて脱出するまで。第2幕は亡命先のパリで人妻フローラと親密な関係になるまで。第3幕は体調を崩してマヨルカ島で療養するが、フローラの娘グラツィアが事故で亡くなる。第四幕はパリへ戻るが、病気が悪化して若くして亡くなる。

4幕もあるが、1~2幕を連続して上演し1時間、20分の休憩を挟み、後半は3~4幕で40分、という構成だった。ショパン役はテノールの山本康寛、守護天使的なステッラはソプラノで佐藤美枝子、恋人フローラ役がソプラノで迫田美帆、友人エリオ役はバリトンで寺田功治、修道士役がバスの田中大揮、だった。小ホールなのでみな声は良く響いて十分だった。歌も良かったが、テノールは弱い。日本には本当に良いテノールがいないと感じた。

伴奏はピアノとチェロとヴァイオリンで、指揮は園田隆一郎。ショパンのピアノ曲を聴かせる場面もあり、ピアノの松本和将が見事な演奏を聞かせた。もともと小ホールで十分な設備がない中、岩田達宗の演出もうまくやっていたが、何しろ台本が退屈なので、音楽を楽しむことに集中した。それでも全体の音楽的な水準は高く、オフ・ブロードウェイで新作のミュージカルを見ているような気分になった。
 
夜に雨が降るとの予報だったので、家にまっすぐ帰り、作り置いたカレーを食べる。サラミ、サラダ、ナスのカレーなど。飲み物は泡。

ファビオ・ルイージ指揮のN響

2022-12-16 11:11:08 | 音楽
12月15日(木)の夜にサントリー・ホールで、ファビオ・ルイージ指揮のN響を聞く。ほぼ満席。二日間早起きしてサッカーを見たので、ちょっと寝不足だったが、まったく眠くならない、良い演奏だった。

演目は、最初にグリンカの「ルスランとリュドミーラ」序曲、次いでラフマニノフのピアノ協奏曲2番で、ピアノは川村尚子。ここまではロシア・プログラムで、休憩の後はチェコのドヴォルザークがアメリカで書いた「新世界から」。

川村のピアノは初めて聞いたが、明晰な演奏で、ラフマニノフなどは普通の演奏だと、音の塊が飛び込んでくるような印象を受けるが、川村の演奏は一音一音が明瞭で、ニュアンスもよくわかった。高く評価されている理由がわかったような気がした。

ルイージの指揮も明瞭で、楽譜通りの音が出てくる印象。ラフマニノフもドボルザークの、暗さは全くなく、明るい演奏だった。やはり、太陽の国イタリア出身だからだろうか。明るい演奏というのが、別に悪いわけではなく、面白く聞いた。

帰りはいつものスペインバルで、軽い食事。カヴァを飲みながら、トルティージャ、ハモン、牡蠣のアヒージョ、イカのフリットなど。

北とぴあの「アルミード」

2022-12-10 11:13:48 | オペラ
12月9日(金)の夜に北とぴあのさくらホールで、リュリのオペラ「アルミード」をを見る。6時開演で、途中20分の休憩があり、終演は9時。25年ぐらい前から北とぴあでは、寺神戸率いる古楽オーケストラのレ・ボレアードによるバロック・オペラが上演されているが、今回もその一環で、舞台奥でオケが演奏し、手前で歌手が簡単な衣装と演出で演じる「セミ・ステージ形式」での上演。普段見慣れない古楽器を使った音色を聞ける。また、バロック・ダンスが入るのも楽しみだ。

何しろ、リュリの17世紀のオペラなので、キノーの台本も古色蒼然としたもので、「栄光」「英知」「憎しみ」などが擬人化して登場し、物語る。こうした話の運びに慣れていない現代人は、なかなか話に入り込みにくい感じもある。物語は、第一次十字軍の遠征時のエルサレムあたりの話で、十字軍兵士と、ダマスカスで魔法を使うアルミードの恋物語。アルミードは、相手に恋をしてしまうが、「愛」を振り切り、「憎しみ」で相手を殺すことが出来るかという心理的な葛藤が描かれる。

フランス語の語りをそのまま歌にしたような曲が大半で、単調というか、同じような曲が続き少し退屈するが、途中で飽きないようにオーケストラが途中で舞曲を演奏してバロックダンスを見せる。昔はフランスで豪華絢爛に上演されたのだろうが、今の貧しい日本では、かなりしょぼい上演だ。せめて十字軍のキリスト教徒と、イスラム側の衣装やムードに差をつけてほしいのだが、そこの区別がないので、見ていて面白くない。

主役の二人の歌手と、バロックダンスの3人をフランスから呼んでいるので、歌や踊りはそれなりになっているが、演出(ポーランド出身の振付家)は、感心しなかった。特に衣装と照明(日本スタッフ)は、良くない。日本人歌手はそれなりの水準で、小さなホールだし、歌うときの伴奏は通奏低音楽器だけなので、声もよく聞こえた。

会場の北とぴあのホール運営はお粗末そのもの。入場時に一人ひとり手首検温をしているが、測定器が2台しかないらしく、入り口で長蛇の列ができるだけでなく混雑し、事故でも起きかねない状況。そんな「密」な状態を作っているのに、なぜか退場時だけは「分散退場」などをまだやっている。典型的なお役所仕事だ。おまけにトイレは長蛇の列で、会場内の温度管理もなっていなく、やたらと暑く閉口した。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、生ハム、ネギのソテー、ブイヤベースなど。