劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

東京文化会館のピアノ三重奏

2020-01-30 10:55:56 | 音楽
1月29日(水)の夜に、上野の東京文化会館小ホールで、ピアノ三重奏のコンサートを聴く。19時開演で15分間の休憩を挟み、終演は21時頃。満席で、中年から高齢者といった客層。

ピアノは伊藤恵、ヴァイオリンは徳永二男、チェロは向山佳絵子というベテランの三人。曲目は前半がシューベルトのピアノ三重奏曲第1番、後半チャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」。

前半のシューベルトは、抒情的で美しい曲。三重奏曲だが、ピアノが大きな音を出すとチェロの音は殆んど聞こえなくなってしまう印象だった。後半のチャイコフスキーは、ニコライ・ルビンスタインが亡くなった時に書かれたというだけあって、叙事的な印象があり、楽しい時代や活躍の時代を経て、最後は葬送のムードとなって終わる。チャイコフスキーの編曲は、各楽器の特性を踏まえて、それぞれの聞かせどころもうまく組み込んであり、さすがにうまいなあと感心した。

ベテランの三人だが、特に徳永二男は70歳代半ばなのに、元気そうで演奏もまだまだ若々しく、立派なものだと感心した。

帰りはいつものスペインバルで軽い夕食。ほうれん草のソテーのカタルーニャ風や、ピキージョの肉詰めなど。

読響のベートーヴェン・コンサート

2020-01-28 10:36:58 | 音楽
1月27日(月)の夜に、東京芸術劇場でベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」と、交響曲「運命」を聴く。午後7時開演で、15分間の休憩を挟み、終演は8時45分頃。客席はほぼ満席。相変わらず年配者が多い。

若手の指揮者横山泰の指揮による読響の演奏。ピアノはベテランの横山幸雄。

前半は横山幸雄のピアノで「皇帝」。いつものスタインウェイのピアノだが、横山の弾く音は随分と柔らかく聞こえた。これが同じピアノかと思うほど違う音色なので驚いた。

後半の「運命」は久々に聴いた。今年はベートーヴェン生誕250周年ということなので、ベートーヴェンの演奏会が多いようだから、何度も聞かされる知れない。横山の指揮は、若々しく軽快なテンポと感じた。特に第3楽章などは、もっと重々しい演奏になれていたので、思いのほか軽やかだった。

読響の弦は美しく響き、その音色を堪能した。特に、ヴァイオリンが高音を弱く弾くところなどは、美しく澄んだ音色で、こういう音をいつも聞きたいものだと思ったし、何度も聞いた「運命」だが、こんな音があったのかと、ちょっと新発見があった。

終わったら冷たい雨が降っていたので、まっすぐ家に帰って軽い食事。キャベツのサラダと、鶏肉のカレーを食べる。ワインはカヴァ。

文京シビック・センターの「ニューイヤー・コンサート」

2020-01-26 10:38:33 | 音楽
1月25日(土)の昼に、文京シビックセンターで「ニューイヤー・コンサート」を聴く。15時開演で、15分の休憩を挟み終演は17時15分頃。会場はほぼ満席。客層の中心は年金生活者世代。

プログラムは2部構成で、前半はオペラの有名アリア。後半はチャイコフスキーの管弦楽曲。東京フィルで指揮はアンドレア・バッティスティーニ。プログラム構成もバッティスティーニによるものだと語っていた。新年コンサートでは、ウィーンのシュトラウスを聴く物が有名だが、さすがにイタリア人だから、オペラのアリアを聴くというプログラムで、こういうのもなかなか良いという気がする。

アリアを歌ったのはソプラノの木下美穂子、メゾソプラノの清水華澄、テノールの小原啓楼の3人。それぞれのソロとデュエットがある。

最初は、「ラ・ボエーム」の1幕から、「カルメン」の「ハバネラ」、「ホフマン物語」の「舟歌」。「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」、「フィガロの結婚」の「恋とはどんなものだろウ」、最後は「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」。有名な誰でも知っていそうなアリアを聴かせた。女性二人の歌声はなかなか立派で感心。テノールはちょっとはらはらしたが、きちんと高音まで出していた。

後半のチャイコフスキーは、「ロメオとジュリエット」序曲と、「1812年」序曲。どちらも「序曲」と名前がついているが、オペラなどの序曲ではなく、独立した管弦楽曲。ただし、どちらも物語性があるので、聴いていてなんとなくイメージが浮かびやすい。

バッティスティーニは、ヴェローナ出身だと言っていたので、そうしたことから「ロメオとジュリエット」が選ばれたのかも知れないという気がした。最後の「1812年」はナポレオン戦争に勝ったロシア国を賛美する内容の曲。最後は華々しさは、ロマノフ朝の壮大な美しさを感じさせるが、賑やかな曲なので、新年のコンサートで気分が盛り上がった。

ちょうど夕方になったので、フランス料理店で食事。フォアグラとトリュフと菊芋のテリーヌを前菜に、メインは寒い季節なのでカスレを作ってもらう。ワインはアルザスの白と、ラングドックの赤。カスレの白いんげん豆も残さずに食べたので、苦しいほど腹がいっぱいになった。

ミラノ・スカラ座の「トスカ」

2020-01-24 10:30:39 | オペラ
ミラノ・スカラ座の今シーズン開幕公演の「トスカ」を衛星放送の録画で観る。オペラシーズンは秋口から始まるところが多いが、スカラ座はミラノ聖人の日とされている12月7日に開幕する。イタリアの大統領が臨席して、イタリア国歌から始まるのは毎年のことだ。

今年のシーズン開幕は、アンナ・ネトレプコの歌う「トスカ」ということで、楽しみにしていたが、期待どおりの素晴らしい公演だった。

ネトレプコの声は、以前よりも強く太く感じられたが、高音まできれいに出ている。カラヴァドッシ役はフランチェスコ・メリで、恐らく30歳ぐらい。ドニゼッティやロッシーニを得意とするイタリア人テノールだが、素晴らしい歌声だった。敵役のスカルピオにはイタリアのバリトンであるルカ・サルシで、今人の声も聞き惚れた。歌手が揃っているというだけで、うれしくなってしまう。

演出はダヴィデ・リーヴェルモルの新演出で、これもなかなか良い。以前のスカラ座の演出はオーソドックスではあるが、舞台装置がねじ曲がったような表現主義的なセットで、あまり面白みのないものだったが、今回の演出は飽きさせない。1幕と3幕は舞台装置を回転させて、装置の変化を楽しませるだけでなく、プロジェクションマッピングもうまく使っている。

2幕は、部屋の上のレリーフのような宗教画がすべて活人画になっていて、生身の人間が演じている。ただじっとしているだけでなく、時々動いたりするし、舞台の競り上げの機構もうまく使っていた。

3幕最後の、トスカがサンタンジェロ城から身を投げる場面も斬新な演出で、詳しくは書かないが、これは聖母マリアの被昇天をイメージしたのではないかと強く感じた。

もう一つ特筆すべきなのは、ネトレプコ以外はイタリア人が演じているせいか、レチタティーヴォのイタリア語が明瞭で、歌うというよりも演劇の台詞を語るようにドラマチックに聞こえたことだ。トスカの台本の強い演劇性を始めて実感した思いだった。

すべて良いことずくめのようにも思えるが、衣装はちょっと好きになれなかった。その理由は、色使いに美しさが感じられなかったことによる。

しかし、全体としてみると、これまでにたくさん見てきた「トスカ」の中では一番面白く、一番好きな公演だと思った。

ヤマハ・ライジング・ピアノスト・コンサート

2020-01-22 10:45:52 | 音楽
1月21日の夜にヤマハ・ホールでライジング・ピアニスト・コンサートを聴く。18時30分開演で、20分の休憩を挟み、終演は21時20分頃。客席は9割程度の入り。子供から年配者まで、客層はヴァラエティに富んでいた。

恐らくはヤマハがピアノのPRも兼ねて、若手のピアニストを集めて聴かせるコンサートで、Vol.2となっていたので、去年から始まったのか。12人の若手が2日間に分かれて6人ずつ演奏する。一人当たりの持ち時間は30分弱程度。国籍は日本だけでなく、韓国、ロシア、フランス、中国、ドイツなど。男女比はほぼ半々程度。16歳ぐらいから25歳ぐらいまでという印象。

曲目はショパン、リスト、ストラビンスキー、プロコフィエフ、ラフマニノフ、ラヴェル、スクリャービン、モーツアルト、シューマンなどだが、一番多いのはやはりショパンか。

どの出演者も優れた技術でバリバリ弾いていたが、続けて聴くとストラヴィンスキーやスクリャービンのように音が多い作品はなんだか疲れてくる。そこでバッハの主題でリストやラフマニノフが編曲した作品が出てくると、対位法的な作品でほっとした。近年の作品ではラヴェルも音が多過ぎずに、リラックスして聴ける。

ラフマニノフも、和音の使い方が独特で、民族的なムードもあってなかなか良いなあと感じた。

作曲家の違いだけでなく、やはり若い人もそれぞれの弾き方に個性があるなあというのが、続けて聴くとよく判る。誰が良いとまでは判断が付きかねるが、個性はやはりあった方が面白いと感じた。

ヤマハ・ホールはこじんまりしていて、ピアノを聴くのにはもってこいという感じがするが、舞台の後方が狭まっていて、後ろの反響板が上に行くほど少しせり出しており、側面の壁の模様もあってか、ずっと舞台を注視していると、反響板が天井に見えてくるような錯覚を起こして、平衡感覚が失われて倒れそうな気がしてくる。僕だけかと思ったら、隣で観ている人もそうした感覚を感じたというので、恐らくは目の錯覚によるものだろう。座席に座っていながら、倒れそうな感覚というのは初めて経験した。

遅くなったので家に帰って軽い食事。たっぷりのサラダとボルドーの赤ワイン。パンとブルーチーズ3種類。ロックフォール、スティルトン、ゴルゴンゾーラの食べ比べ。