劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

反田恭平+読響

2023-06-29 13:59:20 | 音楽
6月28日(水)の夜に、サントリーホールで読響を聴く。ほぼ満席。前半がラフマニノフのピアノ協奏曲3番で、反田恭平のピアノ。後半はアレクサンダー・ソディの指揮によるチャイコフスキーの交響曲4番。

反田恭平の人気かもしれないが、ほぼ満席のように見えた。反田のピアノは随分と昔に聴いて、ジャズっぽく崩した弾き方だなあと感じたが、ショパン・コンクール向けに弾き方を変えたようなので、どんな感じかなと楽しみにしていたが、以前とはすっかり演奏スタイルが変わり、楽譜通りにきっちりと弾いていた。もう少し崩しても良いのではないかと思えるほど真面目な弾き方で、コンクール向けに随分とスタイルを変えたのだなあと、思った。

指揮はアレクサンダー・ソディで、反田に合わせつつ、思いっきりメリハリを付けた指揮ぶりで、最後の盛り上げ方などすごい迫力を感じた。生誕150年ということもあり、このところラフマニノフの協奏曲3番を何回か続けて聞いたが、ソディと反田という組み合わせは、なかなか面白く退屈しなかった。

後半のチャイコフスキーの交響曲も、ソディの指揮は各楽器を引き立たせるような指揮ぶりで、バラバラになりそうなのをうまくまとめて、追い込むように盛り上げていく様は見ていても面白かった。まだ40歳と若いのでエネルギッシュな指揮ぶり。オペラも聞いてみたい気がした。

帰りは、いつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、しし唐のソテー、サバのクロケット、イカのフリットスなど。

ダンス・アーカイヴ in Japnan 2023

2023-06-26 13:28:17 | バレエ
6月25日(日)の昼に新国立中劇場で、「ダンス・アーカイヴ in Japnan 2023」を見る。カタカナと英語の混じった気持ち悪いタイトル。「日本の洋舞100年第4弾」と副題がついている。9割ぐらいの入り。マスク比率は6割程度と低い。内容は昔の日本のモダン・ダンスを復活上演するというというもの。踊りや演劇は今でこそビデオがあるが、昔の作品はなかなか見る機会がないので、こうした復活上演はありがたい。

3人のダンサーたちの作品が演じられた。最初は芙二三枝子の「土面」。20人ぐらいのダンサーによる群舞で、日本の太鼓などを使った音楽で、衣装は土器のような模様のついたレオタード。土着的な香りのする踊りで、日本テイストとモダンダンスの組み合わせ。今見て面白いかどうかは微妙な感じ。

15分の休憩を挟み折田克子の「夏畑」。音楽はドイツの前衛的な歌。どてらを着て踊ったり、脱いでレオタード風の服装になったりするが、大きな麦わら帽子を常に被って踊る。男性と女性の、やり取りが面白く、今見ても色あせていない。踊ったのは平山素子と島地保武。

主催者の話があり、3人のダンサーは、自分のメソッドを確立して作品を残したと説明するが、モダン・ダンスなので、一人一派みたいでメソッドも違うのはまあ、みんな(見に来るような人は)知っているだろうから、どういうメソッドだったのかを説明してほしかった。

その後15分間の休憩があり、アキコ・カンダの二作品。「マーサへ」は師のマーサ・グレアムへ捧げる作品だろうが、グレアムの舞踊団で踊っていた折原美樹が踊った。日本を強調する部分はなく、あくまでアメリカ風のダンス。音楽はショパンの曲をピアノとチェロの生演奏でつけた。昔、アキコ・カンダが振付けた宝塚の踊りを思い出した。

最後は、「バルバラを踊る」でアキコ・カンダの代表作。バルバラの歌に合わせて踊る。中村恩恵が踊ったので、踊り自体も見ごたえがある。ドレスも含めて、グレアムの影響が強いと改めて感じた。

4時過ぎに終わり、家に帰って食事。ビールを飲みながら、作り置きのなすカレーと鳥カレー、サラダなどを準備、カヴァと一緒に頂く。

庄司紗矢香+N響

2023-06-23 11:16:07 | 音楽
6月22日(木)の夜に、サントリーホールでN響コンサートを聴く。指揮はジャナンドレア・ノセダ。演目はバッハのコラールのレスピーギ編曲版があり、次いでヴァイオリン独奏の庄司紗矢香を加えて、レスピーギのグレゴリオ風協奏曲。20分の休憩の後はラフマニノフの交響曲1番。9割程度の入りで、マスク比率は7~8割。

ノセダはイタリア人なので、さすがに前半のレスピーギはお手のものという感じ。バッハのコラールの編曲版は、まるで教会のオルガンを聴くような音。グレゴリオ風協奏曲は、オーケストラもヴァイオリンも、音色で聞かせた。特に庄司のヴァイオリンの音は、弱い高音から低い音までどれも滑らかで美しく響いた。超絶技巧ではなく、美しい音にひたすら酔いしれる。アンコールで弾いたバルトークの無伴奏の曲も、いかにもバルトークらしい曲だが、これも音色の美しさで観客を魅了した。

後半のラフマニノフの交響曲は、今年がラフマニノフ年だから選ばれたのだろうが、あまりラフマニノフらしさのない曲。展開も音色も、いろいろと実験的で、若い時の修作という感じだった。45分ぐらいある長い曲だったので、聴いていてちょっと疲れた。あまり人気のない理由がわかったような気がする。

帰りは行きつけのスペインバルで軽い食事。ハモン、トルティージャ・エスパーニャ、ひよこ豆とほうれん草の煮込み、塩だらのフライなど。カウンターやテーブルのアクリル板がなくなったので、すっきりとした。


2023年のトニー賞

2023-06-13 13:29:00 | ミュージカル
6月12日(月)にアメリカのトニー賞の中継を見る。現地で日曜日の夜に開催されるので、日本で見ると月曜日の午前中になる。今回も昨年と同じで、プレショーがパラマウント系でネット配信され、本番がCBSでの中継だった。中継は昨年と同じだが、今回のトニー賞は「転換点」として記憶されるかも知れないという気がした。

先ず変わったのは会場で、従来は劇場街に隣接するラジオ・シティ・ミュージックホールだったが、今回はユナイテッド・パレスというマンハッタン北端に近いところにある古い劇場。主催者側は、会場変更の理由を発表していないが、従来は6000人の会場だったのが、3300人の会場に半減したので、見れない人が多数出たはずだ。また、場所がワシントン・ハイツという、ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」の舞台になったスペイン語地区というのも驚く。

中継の最初はいつものように「ブロードウェイ」という曲で始まったが、確かに住所を見るとユナイテッド・パレスもブロードウェイだった。曲は途中で「A列車で行こう」に代わったが、地下鉄A線の沿線にある。1930年頃に作られたアラビア風とアールデコ様式の入り混じる豪華な装飾だが、もともと映画館として建てられたので、舞台袖が狭いようで、次の出演者たちは、劇場外のテントが張られた場所で待機することを強いられていた。こんな会場で来年以降もやるのだろうかと、ちょっと心配になる。

次に例年と違ったのは、脚本家組合がストライキ中なので、台本なしの生放送だったこと。中継の最初に司会者がスクリプトと書かれた冊子を開けると白紙しかなく、それを示した。ただ、司会者は時間だけはきちんと守ることを求められ、アドリブで時間通りに喋った。いつもだと司会者がいろいろと話をするが、今回はそれもあってさっぱりしたもので、出番も少なく、その分ショーが充実した印象。それでも時間通りに中継は進み、ぴったりと終わったので、進行、演出はしっかりしていたのだろう。

もう一つ、大いに驚いたのは、助演男優賞、主演男優賞の二人が、ノンバイナリーで、二人ともイヴニングドレスを来て登場したことだ。最近のブロードウェイでは「ノンバイナリー」という言い方が多いようで、男性女性の二分法に該当せず、どちらでもないという主張らしい。日本のLGBT法のジェンダー・アイデンティティという言い方で、こうした多様性に対応できるのか、心配になる。このほかにも、「アンド・ジュリエット」に出演していたノンバイナリーの男優が、トニー賞の男優、女優という区分に該当しないとして、候補となるのを辞退する声明を出したので、今年のトニー賞のミュージカルの男優部門は、ノンバイナリー一色だったと言える。

さて、賞の内容は、演劇の作品賞が日本でも先日上演されたトム・ストッパードの「レオポルドシュタット」で、ミュージカルの作品賞は「キンバリー・アキンボ」。主演女優賞は、「キンバリー」のヴィクトリア・クラークと、下馬評通りの結果だった。

男性のノンバイナリー化が進んでいるのに、女性のレズはよく聞くが、ノンバイナリーの女性があまり出てこないのはなぜだろうかと考えた。男性の服装は、女性ほどバラエティに富んでいないので、面白みに欠けるのかも知れない。


新国立劇場の「白鳥の湖」

2023-06-12 13:17:26 | バレエ
6月11日(日)の夜に新国立劇場でバレエ「白鳥の湖」を見る。白鳥/黒鳥を小野絢子、王子は奥村康祐、ロットバルトは中家正博。18時30分開始で、2階の休憩を挟み、終演は21時30分頃。休憩時間のロビーで見ると、飲食をする人もいて、マスク比率は随分と下がった印象。全体では6割ぐらいがマスクか。

今回の「白鳥」は9回公演だがほぼ満席だった。白鳥を踊るのは、米沢、小野、柴山に加えて、アーティストの吉田朱里が入っていて驚いた。木村優里が怪我で出られない事情もあるが、これまでよく踊っていた池田理沙子は外れている。ランク的にはコールドと同じアーティストで、主役を踊るのはすごい抜擢でないかと思う。以前に「ジゼル」のミルタ役で踊ったのを見たことがあるが、ぜひ次の機会に見てみようと思った。

今回の配役では、ハンガリーやポーランドの王女が初役で、ファースト・アーティストが踊っていたが、正直なところまだこれからという感じで、今後の期待。ベテランの小野の表現力はさすがで、2幕の経緯説明のマイムも説得力があって、堪能した。しかし、ベテランだということもあり、3幕のグラン・フェッテになると、きちんと踊って入るのだが、迫力は感じられない。可能であれば、白鳥は小野、黒鳥は米沢といったキャストで見てみたい気がする。奥村は踊りに問題があるわけではないが、もう少し王子然としたところが欲しい。

ロイヤルのピーター・バラカン版は、今回が2回目だと思うが、どうも好きになれない。先ず、装置や衣装が良くない。王子は国王の死で喪に服しているためか、全身黒の衣装だが、背景も暗いので、脚の動きが見えにくいので困る。衣装も妙に豪華に作ってあるが、3幕の各国の踊りの場面では、それぞれの国のムードが出ない。特に各国の王女の衣装がどれも同じに見えるのは問題だ。

また、3幕で黒鳥が現れた後にスペインの踊りとなるが、それが始まるときに、王子と黒鳥が一緒に下手に引っ込むのもおかしい演出。ここはオーソドックスに、王子が黒鳥に近寄ろうとするのを遮る形でスペインの踊りが始まって欲しい。

「白鳥」に関して言えば、以前の新国立の牧阿佐美監修版の方が、全体としてよくできていた印象がある。無理にロイヤル版に変えるよりも先に、新作を持ってくるようなことにお金を使ってほしいと思う。結構観客が入っているのに、お金が足りなくなり、大劇場でのバレエ公演が年6回から5回に減ってしまったのは、お金の使い方に問題があるのではないかと思う。コロナの影響もあるだろうが、工夫を望みたい。

日曜日の夜なので、食べる店がなく家に帰って食事。イワシのオーブン焼き、キャベツのサラダ、アンチョビ・オリーブ、カマンベール・チーズなど。飲み物はカヴァ。