劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

バイグレ指揮の読響

2024-09-30 14:00:50 | 音楽
9月29日(日)の昼に東京芸術劇場で、セバスティアン・バイグレ指揮の読響を聴く。ドイツ・オーストリア・プログラムで、ウェーバーの「オベロン」序曲、ブルッフの「コル・ニドライ」、コルンゴルドのチェロ協奏曲、休憩の後でコルンゴルドのシュトラシアーナ、最後は、リヒヤルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲。午後2時に始まり、15分間の休憩を挟み、終演は3時50分頃。ほぼ満席で、日曜日の昼間だが客層は年金生活者と主婦層に限られている印象。

ブルッフの「コル・ニドライ」とコルンゴルドのチェロ協奏曲はエドガー・モローがチェロを弾いた。素晴らしく美しい音色で、チェロの音色を堪能した。弦楽器は、ある程度以上のレベルになると、音色の勝負というような気がする。チェロ協奏曲は1946年の作品で、コルンゴルドがハリウッドで映画音楽を書いていた時期でもあり、1940年代のハリウッド・サウンドそのものという感じ。懐かしいというか、重厚な映画音楽でこの時代の映画音楽は良かったなあと思った。モローのアンコールは、バッハの無伴奏組曲3番。重音を美しく奏でた。

後半は最初にコルンゴルドの編曲したヨハン・シュトラウスのワルツ曲。シュトラウスの滑らかさとは異なり、ちょっと現代的な響きがあって、面白い。コルンゴルドは第二次世界大戦中の米国でマックス・ラインハルトと組んで「こうもり」の改訂版を上演しているが、これを聴いてみたくなった。

最後は、「ばらの騎士」組曲。いつもはオケピットから聞こえてくるサウンドが、舞台上から直接耳に飛び込んでくるので、迫力があった。リヒヤルト・シュトラウスの一番美しい曲なので、大好きだ。メロディーを聴くと、舞台場面が目に浮かぶようで大いに楽しんだ。

帰りがけに買い物して、家で食事。小松菜のお浸し、きぬかつぎ、レンコンのはさみ揚げ、竹輪の磯辺揚げ、揚げ出し豆腐などを作って食べる。飲み物は福島県産の吟醸酒。

ファビオ・ルイージ指揮のベートーヴェン7番

2024-09-21 11:03:52 | オペラ
9月20日(金)の夜にサントリーホールで、ファビオ・ルイージ指揮のN響を聴く。今シーズンの開幕公演。9割程度の入り。相変わらず年寄り比率が高い。プログラムは、最初にシューベルトのイタリア風序曲、続いてシューマンのピアノ協奏曲、20分の休憩の後はベートーヴェンの交響曲7番だった。7時開演、終演は8時55分頃。

前半のピアノ協奏曲はエレーヌ・グリモーが弾く予定だったが、体調不良でキャンセルとなりアレッサンドロ・タヴェルナが代役で弾いた。まるで19世紀の音楽家を思い起こさせる風貌で、端正なピアノを弾いた。シューマンの協奏曲なので、あまり盛り上がらず、ひたすら美しく弾いた印象。アンコールでバッハを弾いたが、こちらは素晴らしい音色で、ピアノのソロで聴きたいと思った。

後半はルイージの渾身のベートーヴェンという感じで、最初から最後まで観客を引き付けて離さない名演だった。2楽章の葬送も良かったが、4楽章はこんなに早いテンポで演奏して破綻しないのかと思うほどの速度で演奏された。どのパートもめまぐるしいほどの速度で演奏したが、それで乱れないのが、さすがN響だと感心した。観客も熱狂的な声援を送っていた。ルイージはイタリア人だけど、ドイツ音楽もうまいなあと、改めて思った。

午後9時になっても、まだ熱波という感じで暑かったが、帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、ポテトサラダ、イワシのエスカベッシェ、タラのフライなど。ワイン各種。


チョン・ミョンフンの「マクベス」

2024-09-18 10:53:47 | オペラ
9月17日(火)の夜に、サントリーホールでチョン・ミョンフン指揮の「マクベス」を聴く。東京フィルで、演奏会形式の上演。客層は若めで、9割程度の入り。時間の関係で若干のカットがあるようだが、7時に始まり前半1時間20分、20分の休憩、後半は1時間という上演時間。終演は9時45分頃で、普通のコンサートよりも大分長かった。まだ気温は高っかったが、中秋の名月が出ていて、サントリーホール前のカラヤン広場から、大きな満月が明るく見えた。

歌手は主要な4人が来日組で、その他の役は日本人。合唱は新国立合唱団だった。ステージを全部フラットにして70人編成ぐらいのオーケストラを、後ろ2/3に押し込んで、ステージの前方1/3を使って、簡単な演技付きで上演された。合唱はステージ後ろのP席に70人ぐらい並んでいた。

ヴェルディの「マクベス」は、「アッティラ」の次に書かれた作品だが、上演機会が少ないのか、ビデオでしか見たことがなかったので、演奏会形式だが、生で聴けて良かった。演奏会形式はあまり好きではなかったが、最近流行している、変な読み替え演出や抽象的な演出で見るよりも、純粋に音楽を楽しめる利点もあるような気がする。セットや衣装はないが、こうした上演機会の少ない作品も聞けるのはありがたい。

総じて来日メンバーの歌手陣は充実していて、聴きごたえがあった。合唱も良かったが、脇役を務めた日本人歌手は来日組の迫力に付いていけない印象だった。主演のマクベスを歌ったバリトンのセバッシャン・カターナは、迫力のある巨体で、体に似合ったすごい声だったので、これを聴くだけでも価値があると思った。

オペラを演奏会形式で聴くと、普段はオケピットの中に入っているオーケストラが舞台上に乗っているので、すごい迫力の音がする。今回の公演でも、管や打楽器が力強く演奏すると、通常のオペラでは感じられないほどの迫力があり、たまにはこういうのも良いなあと思った。チョン・ミョンフンは熟達の名人芸的な指揮ぶりで、物語に沿ってドラマティックな演奏を聴かせた。

演奏会形式だったが、美しい声を聴いて気分がよくなり帰宅。遅いのでレストランは諦めて家で軽く食事。サラダ、生ハム、チョリソー、ポンデケージョなど。飲み物はイタリア産の白ワイン。




プリティ・ウーマン

2024-09-16 13:13:50 | ミュージカル
6月15日(日)の夜に、新国立劇場で米国ツアー・キャストによるミュージカル「プリティ・ウーマン」を見る。5時開演、1幕1時間10分、20分休憩で、2幕1時間。終演は7時半ごろ。30~40代の観客が多いが、満席ではなく、7割程度の入り。中劇場ではなくオペラパレスの大劇場の方なので、2000席ぐらいあるため、ミュージカルには少し大きすぎる。日生劇場ぐらいの1200席ぐらいの方が、ミュージカルらしい雰囲気だ。劇場が作品に合っていないためか、ムードが出にくい印象だった。

題名からわかる通りに、1990年に大ヒットした映画のミュージカル版。東京で1週間、立川で1週間、大阪で1週間というツアーになっている。キャストは一流ではないが、米国のツアーカンパニーの水準は高いから、安心してみることができた。

物語は東部の大実業家が企業買収のために西海岸に1週間出張する時の話。ハリウッド大通りで仕事する街娼の若い娘の天真爛漫さにひかれて1週間借り切ってエスコートさせるうちに、孫氏の兵法ではなく、シェイクスピアののソネットを読むようになり、最後はプロポーズする。二人の出会いは、実業家が慣れぬ車を運転して路に迷って、案内を受けるというもの。高級ホテルのペントハウスを借りているのだから、当然運転手付きリムジンを利用しそうなので、現実感のない話だと感じた。

現実離れしたおとぎ話の様で、最初に映画を見たときから違和感があったが、30年以上たって改めてこの話に接しても、時代が代わっただけにさらに違和感を感じた。物語は別に面白い展開があるわけではなく、単にうぶな娘が喜ぶのを楽しむオジサンみたいな話だから、映画で見せ場になった名場面を舞台上で再現しただけという形。その中でも、ベバリーヒルズのホテルのコンシェルジェとメッセンジャーボーイの描き方に工夫があった。

歌は皆うまかったが、音楽はいささか単調。100名は入る新国のオケピットに、キーボード、ギター、エレキベース、パーカッションと4~5人のオーケストラで、弦も管も使っていないから音が貧弱だった。最近は費用節約なので、オーケストラの人数が少なく、音を大きく、リズムを強くして、誤魔化すので歌も当然単調となる。踊りもあまり工夫がなく、つまらない動きの繰り返し。メッセンジャーボーイ役だけはちゃんとしたダンサーで、動きがきちんとしていた。出演者も20人という最低の人数で頑張っていた。

それでも、早い展開で飽きさせず、映画のエピソードを一通り入れて盛り上げ、カーテンコールでは映画の主題歌も歌って観客サービスしていた。一夜の娯楽としては、それなりに楽しめる。

新国立劇場は、いつも館内が暑くてうんざりするが、今回は貸し小屋公演なので、キチンと冷房が効いていて、すこぶる快適だった。いつもこのくらいきちんと効かせて欲しいものだ。

家に直帰して軽い食事。キャベツとトマトのサラダ、生ハム、田舎風パテ、鳥のパテなど。飲み物はフランス産のスパークリング。

読響のロシア・プログラム

2024-09-14 11:13:55 | 音楽
9月13日(金)の夜に、サントリーホールで読響のロシア・プログラムを聴く。7時開演、15分の休憩を挟み、終演は8時45分頃。客席はほぼ埋まっていた。コンサート・シーズンとなったのに、まだ真夏のような暑さが続き、真夏の装いで聴きに行った。

指揮はまだ若いロシア人のマクシム・エメリャニチェフ。トランペット独奏がセルゲイ・ナカリャコフだった。長く読響のコンマスをやっていた長原幸太の退団が発表されていたので、誰がコンマスかなと思っていたら、ゲストの伝田正秀だった。

曲目は最初に、リムスキー=コルサコフの序曲ロシアの復活祭、続いてアルテュニアンのトランペット協奏曲、休憩の後にリムスキー=コルサコフのシェエラザードだった。ロシアの復活祭は初めて聞いたが、リムスキー=コルサコフらしい楽器の音色を楽しむような曲。続くトランペット協奏曲も初めて聞く曲だが、ナカリャコフの吹く音色が素晴らしかった。トランペットの高音をこれほど軽やかに滑らかに吹くのは初めて聞いたような気がする。かなり難しい技巧的な曲だと感じたが、読響のトランペット奏者も食い入るように演奏を見つめていた。柔らかい音色の秘密は楽器にもあるようで、古そうなまったく光っていない楽器を使っていた。何となく1940年代のハリウッド映画の音楽を感じさせる曲調。協奏曲は17分程度で短かったので、アンコールでバッハのG線上のアリアを吹いた。これも少し大型のコルネットのような楽器で吹いたが、実に柔らかい美しい音色だった。

後半のシェエラザードは散々聞いた曲だが、聴く度に新しい発見もあり飽きさせない曲だ。エメリャニチェフは指揮棒を使わずに素手で指揮をしたが、丁寧に各パートに対してキューを出していた。演奏は随分とゆっくりとしたテンポで始まったが、途中で早くなる部分もあり、緩急自在の面白い演奏で、新しいシェエラザードを聴いたと感じた。

ホールの前にあるカラヤン広場で、珍しくイベントが開かれていて、盆踊りの太鼓や屋台の店が出て賑わっていた。帰りがけにビールの一杯でも飲もうかと思ったら、すでに終了していて、東京の夜はなんて早いのだろうと呆れた。あまりに暑いので、スーパーで買い物して帰宅して、家で軽い食事。トマトサラダ、フランス産生ハム、スペイン産チョリソー、ブルーチーズのディップなどをつまみながら、トスカーナ産の赤ワインを飲む。