警察もので人気の堂場氏が、現政権のメディア規制の動きに一石を投じた作品とのキャッチに共感して借りてきた。「小説すばる」2015年1~8月連載。394頁の大作。
物語:メディア議連に集う政権党の議員50余人に、IT企業から献金がばらまかれているというリスト付きの怪文書が出回る。それを予算委員会で取り上げた野党議員は、リストの中心人物から「ガセだ」としっぺ返しを受け窮地に立たされる・・・。
よくある筋書きだが、小説のテーマが、IT企業の献金疑惑とそれにまつわる与党族議員と野党の駆け引きに終始していて、それが政権全体のめざす基本政策とどう関連しているのよくわからない。
これでは、単に政界に巣くう魑魅魍魎のあれこれを描き出してみたに過ぎず、政治がどうあるべきかという基本テーマがはっきりせず、不出来との評価は免れまい。
また、全国紙の社会部の一記者が同社の社長に呼び出され、記事にせぬよう圧力をかけられるなど、合点のいかない場面設定などから、素直に読み進むことが難しい。
物語の構成も筆力も力不足で共感するものがなかった。期待して読んだだけに残念無念。