この夏の暑い日にブラームスの交響曲でもあるまいと思いながら、第一番のあの重厚な出だしを聴いたら、そのまま最後まで聴き通してしまいました。
そして、この時期なりにブラームスの音楽の持つ生命力に感心したのでした。
ブラームスの音楽の魅力は、何と言っても、推敲に推敲を重ねた執念の魅力だと思うのです。
つまり、交響曲という巨大な音の森に深く分け入って、この音はこれで良いのか、こうではないかと繰り返し吟味し、何十年もかけて曲を完成させた彼の執念を感じさせるところにあります。
そうした背景を知るにつけ、彼の音楽を聴く場合は、聴く側もそれ相応の態度(覚悟)で臨むことになり、真剣さが違ってきます。それが、彼の音楽を特別の位置におくのだと思います。
もうひとつは、古き良き時代のドイツ的テイストですね。
あれこれの旋律ではなく、音楽全体が醸し出すドイツ的雰囲気のすばらしさです。
これは、理屈ではなく、ある種の「匂い」のようなものなので、実際にお聴きになって感じ取っていただく以外ないように思います。
いずれにせよ、夏の暑い日にもブラームスのドイツ味満載の交響曲をお薦めします。
ブラームスの4つの交響曲の中では、やはり第一番が最もポピュラーで耳に馴染んでいます。この曲は、曲想を得てから完成までに21年を要したという、いわばブラームスの真骨頂を地で行く曲なのですが、ドイツの精神文化を代表しているように思います。
第一番と言えば、朝比奈隆氏(故人)と大阪フィルによる演奏が忘れられません。
何年前になるのか記憶も定かでありませんが、渋谷文化村のオーチャードホールでの演奏会だったのですが、終演後、楽団員が退場してしまっても尚、興奮した聴衆が舞台を取り囲んでスタンデングオベイションを続けるので、同氏が2度、3度と、無人の舞台に出てきて挨拶するという場面がありました。
それ程、この曲の演奏としては白眉のものだったのですが、小生らはまだ、ブラームスを聴き始めて間がなかったこともあり、それほど心を揺さぶられるということでもありませんでした。音楽も、年齢や聴き方で受け止め方が随分異なって来るようです。