動画は、フィリピンが生んだ世界の歌姫、シャリース・ペンペンコであるが、歌っている場所はどうやらフィリピンのどこかモール内のようだ。
年格好、雰囲気などから推定すると、彼女が世界に飛び立つ直前くらいではないだろうか。後ろにいるすっとぼけた感じの女性はシャリースのお母さんのようだ。確実ではないが。
シャリース・ペンペンコ。本来はチャリース、は7歳くらいからフィリピン国内のコンテストを総なめにして、さらにYoutubeによって世界の注目を浴び、やがて第一線のエンターテイメントへと飛び出した。セリーヌ・ディオンやアンドレア・ボチェッリなどと競演を果たし、それも一歩も引かないパフォーマンスを魅せたのだが、そんな彼女も実は10歳くらいからジェンダー(性自認 Gender identity)の問題に悩んでいたらしく、とうとうカミングアウトして、それからの活動は断続的であるように思える。
それにしてもこの動画での歌唱である。必ずしも最高ではない機材、というよりも要はカラオケで歌ってこのレベルである。声の響き。伸び。艶。ダイナミクス。声量。この時16歳くらいだろうか。詳細はよくわからないが、彼女は正式な歌のレッスンを受けたことがないという。まったく天性の恐ろしさ強烈さをまざまざと私たちに見せつけるのである。
高い声が出る。声量がある。音程がしっかりしている。そんな人はいくらでもいる。しかしそれに加えて、人を魅了する声であることはなかなかない。人を魅了するということはそれが声の場合極めて微妙なことで、咽喉および頭蓋骨の形状や、出し方、響かせ方など、その要因と組み合わせは実に無数にあり、練習をすれば良い声にはなっても、人を魅了する声、もっと聴きたくなる声にはそう簡単になるわけではない。エコーのダイヤルをマックスにしても、このようにハーモニクスの効いた歌声には決してならない。
(追記)
歌っている曲は何か。というと、これは1993年の「IKAW」というフィリピン映画の主題歌であるらしく、その名も「IKAW」イカウ(あなた)という曲である。
私は最初、曲調からこれは賛美歌だろうと考えていた。まだ観てはないが、映画がかなりのメロ調なので、「あなた」とは、物語における夫のことのようだ。
それにしてもフィリピン人の歌の上手さは特筆するべきものがある。なぜこんなに上手いのかずいぶん考えたが、わからず仕舞いである。ずいぶん前には日本にもマリーンという歌手がいて、彼女もたしかフィリピンの人であった。と書いたばかりでなんだが、マリーンは現在も活動中である。
つづく。