20201102
モーツァルト
心の空で
夢が結晶になり
それらの形が絶えず變るのは
それらが 限りないものに
絶えず引かれるためだ。
心の空で
夢の結晶が ひびき合ひながら作られ
それらの音が 一つの
圓屋根を作って その中で
雲々が 天使らに似
天使らは あるひは吹雪であり
あるひは虹である。
そして心の空の奥に
一つの靑い扉が押しひらかれる━━
新しく轉身した力の子らの
成長する透明な秩序の
うごきによつて 押しひらかれる。
片山敏彦 昭和詩集より 昭和29年 角川書店発行
片山敏彦Wikipediaリンク
いい詩です。抜粋はできなかった。
完成されているから省くところがなかった。
題名通りにモーツァルトの曲を詩的に表現しているのだろう。
「確かに確かに」と頷かせる箇所がいくつもある。
さてこの詩の中でもし一行だけ選べとなったなら、どの行を選びますか?
私なら、「一つの靑い扉が押しひらかれる━━」ですね。
なぜなら行の末尾に━━が引かれているのはこの行だけだから。
というのは冗談ですが、
まあどこでもいいんですよ。自分の好きなところを選べば。
ただ真剣に選びましょう。
真剣に書かれた詩なのですから。
なぜ一行選ぶのか?
僕の習い性です。
だから選ばなくたっていいんです。
E V O L U C I O