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9/16 大菩薩峠(映画)の感想

2019-09-16 17:38:59 | 映画



昨夜CS放送で、もう観るものもないな、と思っていたら、古い日本映画「大菩薩峠」が始まり、こういったのも嫌いではないので見始めたらこれがけっこう面白く、最後まで観てしまった。

主役に市川雷蔵の1960年製作版である。

「大菩薩峠」は中里介山の書いた小説で、私はまったく一行も読んだことがないが、異常に長いギネス級の長編小説であることだけは知っていた。しかし内容というか話の流れなど当然まったく知らず、想像では、おそらく武士とか和尚とかが出てきて、内容はしっかりとあるのだろうが地味で暗く重くて、きっと読む気がしないものだろうな、と長らく私の心にラベリングされていたわけだが、今回この映画を観たら、けっこうなエンターテイメント性があり、しかもなかなか人の心の奥深くまで入っていくような話なので、すっかり裏切られたようで面白かった。なんといっても主役がとんでもない頭のおかしい殺人鬼なのだから。

とにかく主役の市川雷蔵━━虚無に取り憑かれた魔剣を操るニヒルな剣士━━が冒頭でいきなり行きずりの善良な老人を斬り殺すところから始まるのだが、私はそれを見ながら、ははあ、これは悪の極限までを果たした人間の逆説的な<悟り>を描いているのだな、と早合点したのだが、まったく見当外れで、この市川雷蔵扮する<机竜之介>はもうなんだか夜になると「うーん、うーん」うなされちゃうし、幽霊が見えるとか虚ろな目で騒いで宿屋で暴れてしまうし、だいたい自分の対決する相手の奥さん(中村玉緒)が何卒手加減して下さいと頼みにやってきたら、さっそく手篭めにしてしまって、しかもその奥さんがその件で離縁をされると、竜之介はその旦那を木刀で打ち殺した挙げ句、二人連れだって京都に行くのだが、いつの間にか子供が出来て、そうするとなんだか尻に轢かれたようなことになり始めたりして、ところがニヒルな感じはそのままなので、悟りなんかは全くなく、なにしろ笑っちゃう。めちゃくちゃなんですよ。

その手篭めにされた中村玉緒(お浜)なのだが、これがまたかわいいこと。撮影当時21才のようで、現在の彼女のかわいさとはまた違って、本当にかわいい。それが手篭めにされる前はいかにも武士の妻といった操を守る女を演じるのだが、連れられて京都に出て、子供が生まれると、これがもうすっかり「アナタ、どこへ行くの。いついくの」とか「浮いた生活がしたい」などと言い出して、もちろんこのアナタはニヒルな市川雷蔵のことで、さすがの虚無も生活には勝てなかったというような話に流れたりして、しかし何を演っても言っても中村玉緒のかわいさに陰りはなく、私は彼女の場面はずっとニヤニヤしながら観通した。まあ映画「悪名シリーズ」の全部を観ているから中村のかわいさは知っていたのだが。

それで最初に書いたように私は「大菩薩峠」について何も知らなかったから、wikipediaで概要を読んだわけだが、これがまた面白い。

なんといっても28年間(1913〜1941)も新聞で毎日連載されていたわけだから、もちろん私の生まれるずっと前であるが、最初は机竜之介の物語であったはずが、年月が経つうちに登場人物のスピンオフにどんどん変わってゆき、そのうち作者の境遇の変遷によって主題も変わり、wikipediaのそこのところの記述(誰が書いたか知らないが)が少し揶揄を含んでいて、声を出して笑ってしまった。

たとえば最初の2年くらいで机竜之介が主役の話は終わるらしいのだが、その後2年間くらいは各登場人物にライトを当てて、いわゆるスピンオフ的に、おそらく話は飛び飛びになるのではないか。机竜之介はあまり登場しないらしい。

そして弁信という人物が登場すると、話は説教臭くなり、一般的にはこれを<大乗仏教小説>と呼ぶらしい。

連載開始から12年も経つと小説内の時空に作者が感心を持たなくなったようで、慶応の3年に固定されてしまい、wikipediaの記述によれば、

“小説は四散した登場人物全員の旅路を詳細に描いていく。数多の登場人物は慶応3年秋の日本各地をいつまでもいつまでも彷徨い続ける。(未完)”

だそうだ。

しかも、現実から夢の中へと登場人物たちが迷い込み、なんと「愛の闘争」が繰り広げられるのだとか。

それにしてもそのさらに後16年間もいったい何を書いたのかと想像すると面白い。どうやら当時の満州国に作者が希望を見つけ、小説もユートピア建設に主題を変えたらしいが、自分の衆議院選挙落選にがっくりして、ユートピアもどうでもよくなったらしく、その後、主題は「農耕主義」に変わっていったようだ。

 全41巻。よく続いたものだが、しかし新聞で28年間読み続けた読者も、未完に面食らったのか、それともほっとしたのか、つくづく日本人て面白いなと昨夜は考えた。私も今回興味が湧いてちょっと読みたいなと思うが、まあ読み切れないだろうな。それに、おそらく41巻を読了しても、「読まなくてもよかった」と思うに違いない。読みたいけどね。終

※以上、書き散らかしなので、間違いがあれば、ご容赦を。

※動画は、基地外なことをきっぱりと言い放って、何度見ても大爆笑のシーン。
(中村玉緒は3部作の中で3役を演じている)

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