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マディなテイストグー

2016-06-10 19:05:51 | コーヒー
つづき。

ため息をついた後、私は考えた。

「フレンチ・プレスならブレンドなんかを注文するのではなかった」

フレンチ・プレスはその素朴かつ簡易な抽出方法が実は
コーヒーのテイスティング、つまりカッピングの方法に一番近いのである。

まあ私はそんなカッピングの経験はまったくないのだが。

だからどうせならブレンドではなく、
シングルの気になる銘柄を注文すれば、カッピングをしに来たと思えることもあり、
少しは気の重さも晴れるような気がした。

しかし後の祭り。

そんなことを3分ほど考え込んでいたら、店員が近づいてくる気配がした。

私の前にカップが置かれた。

小さなステンレス製のミルクピッチャーのクリームは断った。

やはり濁っている。

やはり油が浮いている。

思った通りの、頭に描いた通りのコーヒーから僅かな湯気が上っている。

香りは、なんというか表現しにくい。

コーヒー豆の丸ごとの香りといえば良いか。

とはいっても、コーヒー豆の袋に直接、鼻を突っ込むと感じるあの香りではなく、
コーヒーをドリップしている時のドリッパーの上に立ち上る香りというか、
くれぐれもカップに落ちたコーヒーの香りではなく、ドリッパーからの香りに近い。

香りはもういいだろう。

茶色いコーヒーの表面にあからさまに浮いた油分を気にしつつ、ひと口を含む。

「おっ」

悪い期待をあっさりと裏切るかのように飲み口はそんなに重くない。

ふた口目。

すぐに感じるのはコクで、同時に明るい酸味が広がり、
酸味が消える頃に甘みも静かにやってくる。
苦みはごくごく僅か。
そして全体的に味が濁っている。

これは濁っていると書くとネガティブな表現ではあるが、
その分、濁っている分だけ味に広がりというか、深みがあるというか、
私の低能力の味覚では感じ得ない多くの成分がその濁りに隠されているのではないか、
という前向きな表現の方が正しいだろう。

そして面白いのは飲んでいるうちにも温度が下がり、
カップ内の熱による対流が収まると、
上澄みと沈殿、その中間、という区分が出来てくるのだ。

そこを混ぜないように飲み進めると、
上澄みは明るい酸味のある軽い味に、
中間層はコクも十二分で、時間の経過による酸味も強く、
もしかするとこの中間層からは砂糖を少し加えるほうが良いかもしれない。

そして最後の沈殿層は、その名の通り、微粉が溜まっているから、
まるでターキッシュコーヒーのように皿にあけて占いをやってもいいが、
私はそこに砂糖を入れて、くっと飲み干した。

「悪くないじゃないか」

これが私の素直な感想である。

つづく。
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