労働基準法では、賃金の請求権の時効は、2年ですが・・・
⇒現在、時効は3年になっておりますので、2年→3年と読み替えてお読みください。
残業代の請求は、2年で時効にかかります。これは、労働基準法の115条の規定です。「賃金の請求権は、2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合は、時効によって消滅する」と書いてあります。これは、民法174条の「月またはこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」は、時効を1年間としたのに対し、その特例として考えられます。
労働基準法が適用になる、一般的な労働者にあっては、労働基準法の規定により、2年間は請求できることになります。それでは、労働基準法が除外になっている者は、だれかというと、同族の親族のみを使用する事業所と家事使用人ですので、これらの方は,民法174条により時効が1年ですが、それ以外には、労働基準法により2年間さかのぼって請求できることになります。なお、退職金は5年の時効です。退職金ですから、一応5年というのは、道理に合っているような気はします。
この時効の起算点はというと、毎月の給料日から(正確にはその翌日)になりますので、給料の支払いが、月給制の場合、毎月、毎月起算日があり、それに応じて、時効により月々消滅していくことになります。
例えば、時間単価が1000円、毎日1時間の残業、月20日の労働日、3人の労働者とした場合に、2年前からさかのぼるとすると
1000円×1.25×20日×24月×3人=180万円となります。
言いたいのは、労働者も使用者も、暗黙の了解の上で、1時間に満たない残業は、請求していない場合があるのではないかということです。
それが積り、積もれば、2年間では相当大きな額になります。最近では、会社を辞めてから請求する例が多くなっていますので、経営者の方には、リスク管理は、しっかりしましょうといいたかったのですが、今回は、そのテーマではありませんので・・・。
今回のテーマは、残業代請求の時効は、いつも2年なのかということです。
2007年9月4日の広島高裁判決の杉本商事事件というのがあります。これは、現場の営業所において、時間外実績を記載しておらず他に把握する方法もないところ、1日当たり平均3.5時間の残業と、所長が時間外を「黙示的に命令」したものとして、裁判所が認めるとともに、この会社代表者にも、出退勤記録の整備等の職務上の義務違反を認めたものである。そのことにより、民法の724条の不法行為による損害賠償として、時効が3年となり、約220万円の労働者の請求を認めたものです。
<不法行為も3年ですので、一般の時効が2年から3年となりましたので、今のところどちらをとっても同じ時効は3年となりました。>
会社は労基法2年の時効を持ち出しましたが、裁判所は、「不法行為に基づく損害賠償事件であって、その成立要件、消滅時効も異なるから、その主張は失当である。」とバッサリ、切り捨てています。この判例の評価は、今後に待たれるところでしょうが、少なくとも、時間外勤務時間を把握せず泊残業代を払わないなど、故意または過失によって、時間外の支払をしない場合は、不法行為の3年の時効になる危険性は大いにあるということであります。
その場合は、支払わなければならない額は、時効は2年でなく3年、単純計算で1.5倍になるということです。前の3人の毎日1時間の残業代は、180万円の1.5倍の270万円になります。結局は、最初に私が言った「リスク管理の問題」に跳ね返ってきますが・・・。
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