元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

年金は背景を読め~その経過措置の継ぎ合わせです。<社労士試験を間近に控えている受験生へ、その2>

2011-08-19 04:37:46 | 社会保険労務士
 社労士試験を4回も受験した還暦社労士からの一言・その2

 
 前回読まれた方で今回その「続き」をという方で、今年の受験をされる方に申し上げます。今「知識の確認」と「五者択一の問題での解法のコツ」をつかむのに必死でしょうから、余程時間のある方以外は、これから先は、読まないでください。時間のロスです。しかし、不幸にも合格できなかったときには、読んで参考にしていただければありがたいですね。また、来年の合格を目標に頑張っている方は、このまま是非お読みください。

 今週までは、社労士受験時代を思い出して、いろいろ書かせていただきます。最近、よく社労士の受験の勉強の触れ込みとして、私は暗記から解放されたときに、受かりましたというような、本当かなあと思うような「広告」にお目にかかれます。

 その方の何かを読んだわけでもないんですが、一理あるような気がします。例えば、暗記科目と思われている厚生年金保険法にしても、従来からの旧制度がどうだったのかとか、国民年金と厚生年金との制度を横断的に見ていくなどをすると、覚えられるし理解できるなあという気がします。ただし、時間はかかります。

 例えば、国民年金の老齢基礎年金には、夫婦、子供であれ、個人個人別々ですので、基本的な年金だけでなんら加算されませんが、老齢厚生年金では、夫が働いている場合で、「国民年金が出るまでの」65歳までの妻、子の「生計を維持」しているようなときには、一定条件の下で、加給年金額が加算されます。厚生年金には、労働者のための年金として、昔の「主人が外で働き、妻が家庭を支える」といった、まだ「扶養」の考え方が残っているのです。もちろん、規定上は、「配偶者」となっていますので、妻が働き夫が主夫でも構いません。そして、昔は、60歳から本来の年金額が満額出ていたので、その少なくともその穴埋めとして、その減額分を補てんするものとして、加給年金額にさらに一定の特別加算額が出ていると考えられます。

 
 また、国民年金の障害基礎年金では、子の加算額は付いていますが、妻には付いていません。予算が厳しい中で、最低でも子の「養育費」の足しにしてくださいとの思いやりだとは思います。厚生年金の障害厚生年金(1級、2級に限ります)では、受給権者が夫であるとすると、それによって生計を維持している、65歳未満(65歳以上になると本人が年金がもらえる年齢です。)の妻には、老齢厚生年金で出てきた加給年金額が加算されますが、子には付きません。国民年金は、子に、厚生年金は妻にという形でバランスを取っています。

 そして、被保険者の資格取得届や喪失届は、一般的には事実があった日から5日以内ですが、船員被保険者の場合は、10日以内です。もともと船員には法律が別でしたが、船員も厚生年金保険法に吸収されたため、その名残だといえば、それまででしょうが、さらに考えると、船員の場合は、船に乗っているのが長いため、それに合わせて長くなっているとも考えられます。あくまでの私論ですが、そういった理屈をつけて覚えられます。なななか、受験時代は、そこまでは、考えられませんので、暗記に走ってしまいがちです。
 

 ちなみに、TACさんの「ナンバーワン社労士必修テキスト」でいいますと、各単元ごとの最初に「各項目の学習ガイドライン」が出てきます。受験時代は読み飛ばしていたような気がしますが、特に厚生年金保険法を読む際には、ここのところをしっかり読んでから各単元の本論に入っていくと、先ほど言った、旧制度のからみの経過措置や横断的な関係が分かるように説明されています。将に急がばまわれです。

 
 そこで、科目数が10科目あり、多くのことを把握しなければ対応できないというのが、社労士試験の特徴です。理解できるところは、理解して、まる暗記の分をできるだけ少なくして、そして、理解そのものに相当時間がかかるところは丸暗記でやるといったバランスで勉強することも必要だと思われます。一部丸暗記は、受験勉強の時間が限られている場合には仕方がないのかもしれません。

 今年、ダメだった方は、屁理屈でもいいので、法律がどう考えているのか、法律の背後にあるものを考えながら、理屈をつければ、案外覚えられるのではないかと思いますので、ためしてください。それができなかった場合に、まる暗記ですが、まる暗記は、私としては、ごろ合わせで覚えました。いろいろ今では、本が出ていますが、私の受験しているときは、そんなに出回っていなかったので、今の人は幸せです。でも、これって、またまた、みんな同じ土俵に立っただけとも言えますが・・・。ごろ合わせも、自分に合って、一回読んだだけで覚えてしまうような、自分に合った、しっくりいく、ごろ合わせとそうでないごろ合わせがありました。ときには、仕方なく自分で作ったときもありましたね。

 なお、「資格の大原」さんが、インターネットで無料で公開していた「年金3大難所克服講座」の「合算対象期間」「基本手当・高年齢雇用継続給付との調整」「併給の調整」の講義がありましたが、これはさすがだあと思いました。私、正直言って、高年齢継続給付と特別支給の老齢厚生年金との調整は、全く何を言っているのかわからなかったのですが、講座の説明を受けてわかりました。また、国民年金と厚生年金の調整については、旧法が入ってくるとごちゃごちゃになって、分からなくなるというのが本当のところですが、これもよく理解することができました。ここは、丸暗記するところですが、理解すれば、丸暗記は必要ないと考えられるところです。私みたいな屁理屈ではなく、ちゃんとした講師(金沢講師だったと思います。)による解説がなされ、理解できますので、まずは、機会がありましたら見てみてください。



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社労士試験の五者択一の解き方のコツについて<社会労務士試験を間近に控えている受講生の皆様へ>

2011-08-17 05:17:22 | 社会保険労務士
 社労士試験を4回も受験した還暦社労士からの一言 

 社労士試験を4回という複数回というか、多数回も受けると、受験のコツをつかんだような気がします。まずは、コツでもなんでもないんですが、今の時期は、前回申し上げたとおり、知識の確認作業といいましたが、「皿回し」ということばがあるように、10皿=10科目の同時回しを、落ちないように、前の知識がなくならないうちに、次の回の分を回していくといった、出来るだけ次の皿回しに入っていく時間を短縮して行うということです。

 また、ご存じのように、過去問は「知識の確認作業」となるわけですが、最初に行う場合は、「知識に習得」にもなるわけです。講師によっては、過去問を10回やりなさいともいわれますが、その回数というよりは、何回かやるうちには、全くやらなくてもいい、理解できた問題には○、まだまだ理解できていないもの×、やっと理解できたもの△にして、△は再度のダメ押しで確認、○は見ないということで、×を少なくしていきました。結局、5回前後はやったことになるんでしょうか。

 また、五者択一の選択肢で、その選択肢の誤りについて、なんで間違っているのか、その理由を書いて覚えなさいという講師もいましたが、確かに実力は付きますので、時間のある方は試してもよいのですが、私、仕事もしていましたので、そこまでするのはどうかということで、誤っている文章のどの部分が間違っているのかのポイントとなる部分にマーカーで下線を引きました。黄色で線を引き、答えがあっていたら、その部分があっていた場合は、下線を今度は塗りつぶす、違っていた場合は、次の時は青のマーカーで同じ作業を行っていくことにしました。

 コツでもないことを前置きとして書いてしまいましたが、コツとして書きたかったのは、今の時期は、五者択一問題には、次のような解き方の感覚を研ぎ澄ますことが必要です。(1)まずは、初めから5者とも全部読んで一つずつ○×を判断し、解答を導き出すという、正攻法の方法です。ですが、中にはどうしてもバッチリを出てこないものも必ずあります。(2)その時は「消去法」です、これは、はるか昔に学生時代を送った方でもやり方は分かると思います。(3)意外にというか、最後の手段というか、時間が限られた中での答えを見つけ方として、他の選択肢の意味等が分からなくても、これが絶対に間違っている文章だとか、完全に合っている文章だというパーフェクトな選択肢を見つけられることだと思います。

 そして、限られた時間の中で、この(1)(2)(3)のどれを適用するか、迷っているうちに時間を浪費してしまったということのないように、即座に判断することも求められます。そして、その上で、この(3)のパーフェクトなものを見つける能力を確信したとき、合格できたような気がします。私、この(3)の答えの導き方について、偏見を持っていましたが、いくら勉強しても、やはり(1)(2)では解けない難問奇問、自分だけの難問というのは、必ずあります。そのときに(3)の解き方が出てくるのです。場合によっては、捨てる問題で最後の解答の見つけ方かもしれません。しかし、選択肢の1問目を読んだときに、本当に確信が持てれば、時間の節約にもなります。私、還暦社労士としては、長い試験時間の中では、必ずトイレに行きたくなります、少なくとも3分=1問分はロスになりますが、幸運にもそのころに確信の持てた問題に当たっており、予定時間を取り戻したことを覚えております。そんな積極的な解き方にも通じるのです。

 私の尊敬する講師(私、仕事上、生講義の時間に行くのが無理だったので、ウェブによる動画サイトで勉強しました。)が言う「石ころの中にダイヤモンドの原石をきらりとした見つける」という作業方法です。コツと書きましたが、コツではなくて、はたまたごめんなさい、むしろ、そんな感覚を見つけたときに、試験に受かるのが叶うのではないかと考えます。少なくともいえるのは、五者択一には、そんな感覚が必要ですので、単に知識の確認作業をするだけでなく、少しは五者択一(何回かやった問題でなく、予想問題等の初めて当たる問題です)を解いてみて、五者択一に時間を割いてその感覚を研ぎ澄ましてください。少なくとも、今の時期は、一問一答(知識の習得・確認)ではなく五者択一で、その研ぎ澄ました感覚を維持育成することが必要と思われます。





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任意継続被保険者(第4種)について<社会保険労務士試験・受験 の問題としての出題!!>

2011-08-15 06:08:45 | 社会保険労務士
 第43回社会保険労務士試験が8月28日行われますが、受講生、今の時期何をしますか?

 
 43回社労士試験が、8月28日(日曜日)に行われます。今年は、第5週の日曜日となったようで、一週分遅くなりました。4回も受験している身としては、この一週間伸びたということは、知識の確認作業の時間が長くなり、助かったという方もいるかもしれませんが、私としてはその実感がひしひしと感じられます。しかし、これは、考えてみるとみんな同じ条件なんですけでもね。そう、今は、新たな知識よりはまずは知識の確認作業です。どうしても気になるところがありましたら、精神上よくないですから、ちょっとだけの時間であれば、それを片づけることも必要でしょうが・・・。

 
 そこで、よく受験生を悩ますのが、厚生年金の「任意継続被保険者」です。あまり意味をなさなくなった、1種(男子)、2種(女子)、3種(坑内員・船員)、第4種(任意継続被保険者)の種別の、「被保険者の種別」の第4種に位置付けられており、やはり受験に必要な知識かなあと思ってしまいます。そして、ほとんどの「教科書」では、出てくる項目になります。最近の問題としては出てこなくなったものですが、過去問(そのまま出題されたものとして、平成15年第1問)には当然のごとく必ず出てまいります。

 
 受験に必要な知識かと問われれば、制度としてある以上は、出るかもしれないので、覚えておかざるを得ないというのが実情でしょうが、もしも出た場合には受験生には恨まれるかもしれませんが、捨ててもいい問題だと思います。出た場合であっても、その1問で合否が左右するとは思いません。しかし、すでに覚えている方は、知識の確認をされてもいいでしょう。

 
 前置きが、長くなってしまいましたが、整理をしますと次のとおりです。この第4種は、制度としては、昭和61年の新法改正により廃止されたものですが、現在も経過措置として残っているものです。以下「平成23年度版ナンバーワン社労士 必修テキスト」からの引用です。

 
 次の全ての要件を満たす者は、現在でも、第4種被保険者になることができます。
1 昭和16年4月1日以前生まれで、施行日(昭和61年4月1日)に厚生年金保険の被保険者であること
2 施行日の属する月から資格喪失日の属する前月までのすべての期間厚生年金保険又は共済組合等に加入していたこと
3 厚生年金保険の被保険者期間が10年以上20年未満(中高年者の特例に該当する場合は15年)未満であること
4 資格喪失日から起算して6か月以内に厚生労働大臣に申し出をすること
とあります。

 
 旧法が出てくるときに、よく出てくるのが、1の「昭和16年4月1日生まれ」です。新法の施行当時の昭和61年には、45歳です。国年の被保険者を卒業するのが60歳ですから、新法施行時に、最低であと15年しかなかった者が対象になります。さらに、旧法との絡みとしては、3の被保険者期間20年未満です。今は、公的年金の受給要件としては、被保険者期間25年ですが、昔は(アバウトにごまかします)20年とされていましたので、その受給期間を満たす20年ということなんでしょう。受講生時代は、時間の余裕がないので、丸暗記で覚えていましたが、余裕のある今となっては、関連付けて覚えられます。

 
 さて、昭和16年4月1日生まれの人は、現在70歳すでにリタイヤーされて、年金暮らしという方も多くいらしゃるでしょう。年金暮らしという方は、その基礎年金の被保険者期間が25年を満たしていないと年金をもらえませんから、そんな方は、すでに3の厚生年金の被保険者期間20年未満の条件にも該当しなくなるともいえます。そこで、この第4種被保険者には、基本的にはなれない方がほとんどでしょう。(第1の関門)

 
 さらに、2でいえば、少なくとも最近まで企業や役所等で、継続して、途中で職を変えたとしても被保険者期間を切らすことなく、現役で働いていたことが条件となります。最近までといいいましたが、4の資格喪失日から6か月以内に申し出をしなければなりませんので、やはりその「最近まで」働いていることが条件となります。そこで、それ以上伸ばす方策を国では考えてはいますが、現在の60歳定年の時代で、継続して辞めずに70歳まで再雇用でも働ける人は、幸せな方でしょう。そんな人が対象になるということでしょう。(第2の関門クリアー)

 仮に、60前後の定年を過ぎ、一か月の被保険者期間を空けることなく継続して働いていた方で、現在まで働いている方は、新法施行日の昭和61年4月1日から計算しても、すでに25年経過しています。少なくとも25年雇用されて、被保険者期間が25年になります。ということは、3の厚生年金保険の被保険者期間が20年たっていることになり、ここで、ほとんどの方は、第4種の資格要件を満たさなくなってしまいます。(第3の関門クリアーの条件、というよりは、まるまる厚生年金で働いた場合は、厚生年金の支給の条件としての被保険者期間25年をクリアーしていますので、3種に入る必要性もないことになります。)

 
 考えられるのが、そのうち、役所等で働き、共済に加入していた方でしょう、厚生年金で20年経過する前まで働き、そのあと役所等に働いた方といった方で、その対象はかなりしぼられてくると思われます。これもよく考えると、公務員で60歳で再雇用になったとしても、公務員は一般的に再雇用(公務員の場合は再任用といいますが)でも65歳までが限度です。そこで65歳まで勤めた方でも、現在から5年ごろ前には、昭和16年生まれの方は、すでに退職されている形になります。辞めてから、4により6か月以内に申し出をしなければなりませんから、その申し出の期間をとっくに過ぎています。私学の共済に加入したとしても同様でしょう。(第4の関門)

 
 ということは、現実のものとして考えた場合には、今では、第4種になろうとする方は、ほとんど稀有なケースしか考えられません。理論的にはありうるのでしょうが、なかなかどんな場合か思い浮かびません。
 ということで、そんな稀有なケースでも、もしも相談があった場合には、社労士としては対応しなければならないでしょうが、そんなまれなケースの問題を社労士の試験問題に出題するのは、どうかはとはと考えますがいかがでしょうか。
 


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中小企業の社長さん、是非、お薦めしたい本です。(推薦)

2011-08-12 05:58:48 | 社会保険労務士
 今回は、お薦め本の紹介です。
  ・本のタイトル「ちょっと待った!!社長!その残業代払う必要はありません!!」
  ・著者;和田栄
  ・発行所;株式会社すばる舎
  ・定価;1500円

 著者は「中小企業を中心に就業規則のコンサルティング、労務トラブルの相談、並びに法律顧問のアドバイスを行っている。」とあります。

 宮崎の本屋さんでは、山積みされよく読まれているなあという感じは受けていたのですが、また、教科書の焼き直し的な、ハウツウー本だろうと思い、初めのうちは買いませんでした。しかし、買って読んでみると、衝撃を受けたというのが事実です。いわゆる、分厚い専門書ではありませんが、会社の社長さん向けに書かれ、会社の経営にすぐにでも応用できる内容のものが書かれてあります。
 

 私、社労士はある意味で、実務知識が命であり、その知識としての「他人の技術」を盗まなければならないと思っていますが、惜しげもなくその技術を公開しているなあと思っています。私、就業規則を専門の一分野として活動したいということで、勉強中の身ですが、一応、還暦社労士の看板を掲げている以上は、労基法の基礎知識はあるつもりです。が、例えば、休日と休暇を区別し、会社の独自に設けた休暇を「特別休暇」ということから始まり、それが割増賃金の時間単価そのものに影響してくるというような(本の説明の流れだけを言っていますので、詳しくお知りになりたい方は当本をお読みください。) 、就業規則の勉強にも、おおいに示唆に富んだ、奥の深い内容になっております。

 、和田栄社労士さんにお会いしたこともなければ、一面識もありませんので、なんら本人から頼まれたわけでもありませんが、いい本だから、中小企業の社長(大企業には専門の部署があり研究していますので、あえて中小企業と言わせていただきます。)には、是非読んでいただきたい本です。
 

 (今後、この本、まだ完全に消化しきれていませんので、消化できた段階で、またこのプログのどこかで、引用等をさせていただきたいと思っております。)


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就業規則の不利益変更は、労働者との合意が原則です!!

2011-08-10 06:15:45 | 社会保険労務士
 就業規則~<退職金の「その2」、給料への前払い>~について

 前回は、不利益変更の場合は、基本的には、労働者との合意を得なければ、その変更は認められないということをお話ししました。ところが、一人だけが、「今まで退職金を楽しみに働いてきたのに」といって、同意しなかったとしますと「労働者の合意」が得られないことになります。
 

 そこで、原則としては、個々の労働者の同意が必要であるとはいいながらも、多くの労働者を集合的に処理するという就業規則の性格から、その不利益変更が「合理的なもの」である限り「個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否しることは許されない」との有名な判例があり、個々の労働者の同意がなくても不利益変更は許されるともしております。(秋北バス事件・最高裁昭43.12.25)

* <社労士試験受験生の皆様へ>この判例は、私たちが労働基準法を勉強するときに、覚えときなさいとよくいわれた判例です。今の時期、私のプログを暇つぶしに見ている方は、頭の片隅においておくと、ひょっとしたら役に立つかもしれません。次段落のように、この論点は労働基準法ではなく労働契約法の守備範囲になったので、労働契約法が「労働一般」の科目の中に入っているので、あまり出る可能性は少なくなったかも知れませんが、今でも「労働基準法」の科目の中で就業規則を理解するうえでは重要な判例ですので、どちらで出るにせよ、ここで覚えておいて損はないと思います。

 労働契約法10条では、この判例等の考え方を取り入れ、1 労働者の受ける不利益の程度 2 労働条件変更の必要性 3 変更後の就業規則の内容の相当性 4 労働組合などとの交渉の状況 4 その他の就業規則の変更の事情 という基準を法上明確に示して、これが合理的な場合として求められる場合は、個々の労働者との同意が得られなくても、すなわち「労働者の合意」が得られなくても、新たな就業規則により労働条件の変更を認めています。(労働契約法10条)

 
 前回の最初の事例では、就業規則により、退職年齢と退職金の計算方法を確認し、そのうえで、従業員の年齢から将来にそれぞれの年度の退職金の支払いがいくらになるのかを見ます、そして今まで積み立ててきた退職金見合額またその年度まで積み立てられるであろうものを計算し、それが十分かどうかを見てみます。

 
 そしてどう考えても無理な場合は、会社はここで素直に状況を説明し、退職金の前払い制度の必要性を説明し、従業員に納得してもらうほかありません。どうしても、納得しない従業員がいる場合に、初めてこの労働契約法10条の出番となるわけですが、その場合でも、就業規則変更の基準に「労働組合との交渉の状況」が挙げられていますように、労働者との話し合いは十分に行うことが基本になることは言うまでもありません。納得できない従業員には、ちゃんと事情をとことん説明する必要があります。

 
 前回から「退職金の給料前払い」の例について、説明してきました。退職金は、その性格が給料の後払いと功労金として考えられています。退職金を退職後の生活設計にしている者にとって、ある日突然従来の退職金をなくす代わりに前払い制度にするといわれて、「はいそうですか」という人は必ずしもいないと思われます。もちろん、会社に入ってからすでに前払い制度になっていたという方は別でしょう。もともと、退職金規定もない企業もありますし、就業規則に退職金の規定を書かなければならないということでもありません。退職金制度を有する企業が就業規則に記載しなければならないというだけです。(相対的記載事項、労基法89条)。

 しかし、今まで退職金があった企業が前払いする場合は、単に支払い方法の変更ということだけではすまされないと思います。本当に今までの計算方法と前払い制度による支払額がそれ相当であって支払額が全く遜色ないというのであれば、それは支払変更で済ませるかとは思います。

 ところが、日本の高度成長時代の金利(少なくとも数%、実際は0.0何%)で退職金の積み立てを行ってその資金があるはずということで退職金制度を設けてきた企業が多く、実金利で計算したら退職金相当額がどこにもなかった。ということで、前払いにするということになったとしたら、労働者にとってはどこかで実質の退職金の減少になるのは、目に見えているのではないでしょうか。 

 
 そんな企業であれば、まず誠意をもって話し合い、どうにか解決していかざるを得ません。その方法として退職金の前払い制度も出て来るのでしょう。労働契約法では、そんな不利益変更の原則「労働者との合意」をうたい、どうしても合意できない場合の「就業規則の変更の基準」をうたっているのです。けっして、この労働契約法の規定は、社長さんにとって、面倒な規定があるなあではなく、原則的には、労使双方にまず納得できるまで話し合うという普通のことを規定しているにすぎません。トラブルを防ぐための当たり前の方法を提示しているのです。


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